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NVIDIAのG-Assist、Spotify・Twitchなど外部サービス連携のプラグイン対応を発表─エイプリルフールから現実へ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-24 18:00 by admin

NVIDIAは2025年4月23日、Windows向けAIアシスタント「G-Assist」にプラグイン対応機能を追加したと発表した。これにより、G-AssistはSpotify、Twitch、株式情報、天気予報などの外部サービスと連携できるようになった。

G-Assistは2025年3月に初めて正式に導入された実験的機能で、当初はPCゲーム体験を向上させるためのチャットボットとして機能していた。実は2017年のエイプリルフールのジョークから始まり、CES 2024でのテックデモを経て実現した機能である。今回のアップデートでは、ChatGPTベースの「G-Assistプラグインビルダー」も発表され、開発者や愛好家はNVIDIAのAIアシスタント向けにカスタム機能を設計できるようになった。

これらのプラグインはすべてローカルで動作し、NVIDIA RTX GPU上の小型言語モデル(SLM)を使用する。G-Assistは約10GBのストレージ(システムアシスタント用に6.5GB、音声コマンド用に3GB)を必要とし、RTX 30、40、50シリーズのデスクトップGPUと互換性があるが、最低12GBのVRAMを持つグラフィックカードが必要である。将来的にはGeForce RTXラップトップ向けのサポートも予定されている。

NVIDIAはGitHubリポジトリを通じて、サンプルプラグインやプラグイン作成の手順を公開している。現在利用可能なサンプルプラグインには、Spotifyの音楽再生や音量を制御するものや、Google Geminiと連携してより複雑な会話やWeb検索を行うものなどがある。

開発者は、JSONとPythonを使用してプラグインを作成でき、作成したプラグインをNVIDIAに提出して審査を受けることも可能だ。承認されたプラグインはNVIDIAのGitHubリポジトリに追加され、他のユーザーも利用できるようになる。

G-Assistは、NVIDIA ACE技術をベースに構築されており、クラウドベースのAIとは異なり、GeForce RTX GPU上でローカルに実行される。これにより、インターネット接続なしでも高い応答性を持ち、無料で利用できる。

from Nvidia’s AI assistant on Windows now has plugins for Spotify, Twitch, and more

【編集部解説】

NVIDIAのG-Assistは、単なるゲーミング支援ツールから汎用AIアシスタントへと進化を遂げています。今回のプラグイン対応は、NVIDIAがAIアシスタント市場において重要な一歩を踏み出したことを示しています。

興味深いことに、G-Assistは2017年のエイプリルフールのジョークとして始まり、その後CES 2024でテックデモとして紹介され、2025年3月に実験的機能として正式リリースされました。ユーザーからのフィードバックを取り入れながら進化を続けている点が、NVIDIAの製品開発アプローチを表しています。

特に注目すべきは、プラグイン対応によるエコシステム構築の戦略です。ChatGPTベースのプラグインビルダーを提供し、開発者コミュニティを巻き込むことで、G-Assistの機能を急速に拡張しようとしています。これはOpenAIやMicrosoftが採用している戦略と類似しており、AIプラットフォーム間の競争が激化していることを表しています。

NVIDIAは「vibe code」という概念を導入し、プログラミング経験のないユーザーでもChatGPTの力を借りてプラグインを作成できるようにしました。これにより、技術的な障壁を下げ、より多くのユーザーがAIエコシステムに参加できるようになります。

G-AssistがローカルAIモデルを採用している点も重要です。クラウドベースのAIサービスと比較して、プライバシー保護やレイテンシの低減というメリットがあります。特に、インターネット接続なしでも動作する点は、常時接続が必要な他のAIアシスタントと一線を画しています。

技術的には、Llama-basedのInstructモデルを採用し、8Bパラメータという比較的コンパクトなモデルサイズながら、高い言語理解能力を実現しています。これにより、RTX GPUのローカル処理能力を最大限に活用できるようになっています。

一方で、G-Assistの要件はかなり厳しく設定されています。最低12GBのVRAMを持つRTX 30、40、50シリーズのデスクトップGPUが必要で、約10GB(システムアシスタント用に6.5GB、音声コマンド用に3GB)のストレージも必要です。これは、最新のRTX 5060 Tiの8GBモデルでは動作しないことを意味し、ハードウェア要件がユーザー拡大の障壁となる可能性があります。ただし、NVIDIAは将来的にGeForce RTXラップトップ向けのサポートも予定しており、対応デバイスの拡大が期待されます。

G-Assistの活用シーンとしては、ゲーム中にAlt+Gを押すだけでオーバーレイとして起動し、ゲームを中断することなく様々な操作が可能になる点が魅力です。例えば、Spotifyの音楽再生制御、Twitchでのストリーマー状態確認、Google Geminiとの連携による複雑な質問への回答など、ゲームプレイを中断せずに多様なタスクをこなせます。

また、ハードウェア制御の面でも優れており、Logitech G、Corsair、MSI、Nanoleafなどの周辺機器と連携して、ファン速度の調整やLED照明効果の変更などを音声コマンドで実行できます。これは、ゲーム中に設定を調整したい場合に特に便利な機能です。

G-Assistの登場は、PC向けAIアシスタント市場の活性化を示しています。Microsoft CopilotやRazer Avaなど、競合するAIアシスタントも登場しており、各社が独自の特徴を打ち出しています。特にRazer Avaはゲーム内の意思決定支援機能を持っており、G-Assistもこの方向に進化する可能性があります。

今後の展望としては、コミュニティ主導の成長が期待されます。NVIDIAはGitHubリポジトリを通じて開発者向けのサンプルやガイダンスを提供しており、優れたプラグインはNVIDIAの公式リポジトリに取り込まれる可能性もあります。これにより、G-Assistのエコシステムが急速に拡大することが予想されます。

ただし、G-Assistを使用する際には注意点もあります。ゲームやリソースを多く使用するアプリケーションを実行中にG-Assistを起動すると、一時的にパフォーマンスが低下する可能性があります。これは、GPUの処理能力の一部がAI推論に割り当てられるためです。タスク完了後はすぐに通常のパフォーマンスに戻りますが、競争的なゲームプレイ中には影響が出る可能性があることを覚えておくとよいでしょう。

G-Assistの登場は、NVIDIAがハードウェアメーカーからAIプラットフォーム提供者へと進化する戦略の一環と見ることができます。GPUハードウェアの販売だけでなく、そのハードウェア上で動作する独自のAIエコシステムを構築することで、NVIDIAは長期的な競争力を確保しようとしているのです。

【用語解説】

小型言語モデル(SLM: Small Language Model):大規模言語モデル(LLM)よりもパラメータ数が少なく、ローカルデバイスで動作可能な軽量なAIモデル。G-Assistでは8Bパラメータのモデルを使用している。クラウドに接続せずともPCのGPUだけで動作するため、プライバシーが保たれ、インターネット接続なしでも使用可能である。

VRAM(Video RAM):グラフィックカードに搭載されているメモリで、画像処理やAI処理に使用される。G-Assistは最低12GBのVRAMを必要とする。一般的なPCのメインメモリ(RAM)とは異なり、グラフィック処理専用のメモリである。

プラグイン:ソフトウェアの機能を拡張するための追加コンポーネント。G-Assistのプラグインは、SpotifyやTwitchなどの外部サービスとの連携を可能にする。スマートフォンのアプリに追加機能をインストールするようなイメージである。

RTXシリーズ:NVIDIAのハイエンドグラフィックカードシリーズ。リアルタイムレイトレーシング(光の反射や屈折をリアルに表現する技術)やAI処理に特化したハードウェアを搭載している。30、40、50シリーズと数字が大きいほど新しい世代を表す。

DLSS(Deep Learning Super Sampling):NVIDIAのAI技術で、低解像度で描画した画像をAIで高解像度に拡大することでパフォーマンスを向上させる。テレビの「超解像技術」のゲーム版と考えるとわかりやすい。

NVIDIA ACE技術:Avatar Cloud Engine の略で、AIを活用してリアルタイムでキャラクターアニメーションや音声生成を行う技術。G-Assistはこの技術をベースに構築されている。

vibe code:NVIDIAが導入した概念で、プログラミング経験のないユーザーでもChatGPTの力を借りてプラグインを作成できるようにするためのシンプルなコード記述方法。

【参考リンク】

NVIDIA公式サイト(外部)半導体企業NVIDIAの日本語公式サイト。GPUやAI関連製品・技術の情報を提供している。

G-Assist公式ページ(外部)NVIDIAのG-Assistの公式紹介ページ。機能や要件、使い方などが詳しく解説されている。

G-Assist GitHub リポジトリ(外部)G-Assistのプラグイン開発に関する情報やサンプルコードが公開されているリポジトリ。

Spotify(外部)音楽ストリーミングサービス。G-Assistのプラグインで操作可能になった外部サービスの一つ。

Twitch(外部)ゲームのライブストリーミングプラットフォーム。G-Assistのプラグインでストリーマーの状態確認などが可能。

【参考動画】

NVIDIAが公開したG-Assistの公式紹介動画。実際の使用例や機能が紹介されている。

G-Assistのゲーム内での活用方法を紹介する動画。ゲーム体験をどのように向上させるかを解説している。

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乗杉 海
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