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Signal、Windows 11のRecall機能をブロック — プライバシー保護とAI機能の新たな攻防

Signal、Windows 11のRecall機能をブロック — プライバシー保護とAI機能の新たな攻防 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-22 09:57 by admin

セキュアメッセージングアプリSignalは、Windows 11のRecall機能からユーザーのプライバシーを保護するための対策を講じた。2025年5月22日に報じられたこの対応では、SignalのWindows向けアプリに「スクリーンセキュリティ」機能がデフォルトで有効化された。

この機能は、MicrosoftのAI搭載機能「Recall」がSignalのチャット内容をスクリーンショットとして記録することを防止するものである。Recallは2025年4月25日に正式リリースされたWindows 11の新機能で、ユーザーのPC上での活動を自動的にスクリーンショットとして記録し、後から検索できるようにするものだ。

SignalのJoshua Lund開発者によると、この対策はNetflixなどの動画配信サービスがスクリーンショットを防止するために使用しているのと同じDRM技術を採用している。ただし、この機能はスクリーンリーダーなどのアクセシビリティ機能に問題を引き起こす可能性がある。

Signalは「Signal設定 > プライバシー > スクリーンセキュリティ」から簡単に無効にできる設定を提供しているが、Lundは本来はMicrosoftのようなOS開発企業が、アプリ開発者に対してAIシステムからの保護ツールを提供すべきだと主張している。

パスワード管理アプリの1Passwordも同様の懸念を示しており、Recall機能からユーザーデータを保護するための対策を検討していることが報じられている。

References:
文献リンクSignal says no to Windows 11’s Recall screenshots

【編集部解説】

今回のSignalの対応は、プライバシーとAI技術の進化がぶつかり合う象徴的な出来事と言えるでしょう。MicrosoftのRecall機能は、AIによる生産性向上という名目で導入されましたが、その仕組み自体がプライバシーの根本的な考え方に挑戦するものとなっています。

Recall機能は、単なるスクリーンショット機能ではありません。AIを活用して画面上のあらゆる情報を継続的に記録し、後から検索可能にするという、いわば「デジタル記憶」を実現する技術です。これにより、「あのとき見た文書はどこだったっけ?」といった日常的な問題を解決できる可能性を秘めています。

Microsoftによれば、Recall機能は2025年4月25日にCopilot+ PC向けに正式リリースされました。当初は2024年5月に発表されたものの、プライバシーへの懸念から2回の延期を経て、ようやく一般提供が開始されたという経緯があります。

特に問題なのは、Microsoftがアプリ開発者向けにRecallをブロックするためのAPIを提供していない点です。これにより、SignalやWhatsAppなどの暗号化メッセージアプリは、本来の目的とは異なるDRM(デジタル著作権管理)技術を「奇妙な裏技」として流用せざるを得なくなりました。

この対応は、エンドツーエンド暗号化の意義を根本から揺るがす問題でもあります。メッセージが送受信時に暗号化されていても、画面に表示された瞬間にRecallによって記録されてしまえば、その保護は無意味になってしまうからです。

また見過ごせないのは、Recallが有効になっているデバイスとチャットしている相手のプライバシーも侵害される点です。自分はRecallを使っていなくても、チャット相手がRecallを有効にしていれば、自分の送ったメッセージや画像も知らないうちに記録・保存されてしまう可能性があります。

Signalが今回導入した「Screen Security」機能は、Netflixなどの動画ストリーミングサービスがスクリーンショットを防止するために使用している技術と同じものです。これにより、Windows 11のRecall機能がSignalのチャット内容を記録することを防止できますが、スクリーンリーダーなどのアクセシビリティ機能との互換性に問題が生じる可能性があります。

この対立は、AIの進化とプライバシー保護のバランスをどう取るかという大きな課題を浮き彫りにしています。便利さを追求するあまり、プライバシーが犠牲になってはいないでしょうか。

今後、他のセキュリティ重視のアプリケーションも同様の対策を講じる可能性が高く、パスワード管理アプリの1Passwordもすでに対応を検討していると報じられています。

テクノロジー企業には、イノベーションを推進する一方で、ユーザーのプライバシーと選択権を尊重する責任があります。Microsoftは今後、アプリ開発者がRecallからコンテンツを除外できるAPIを提供するなど、より柔軟な対応を求められるでしょう。

私たちユーザーも、便利さとプライバシーのトレードオフを意識し、自分のデジタル環境をどう構築するか主体的に選択していく必要があります。Recallのような機能を使用する際は、そのメリットとリスクを十分に理解した上で判断することが重要です。

【用語解説】

Signal(シグナル)
アメリカの非営利団体が開発する、エンドツーエンド暗号化を採用したメッセージングアプリ。テキスト、音声通話、ビデオ通話などの機能を提供している。プライバシー保護に特化しており、オープンソースで開発されている。

Windows 11 Recall(リコール)機能
Windows 11に搭載された新機能で、ユーザーのPC画面を数秒ごとに自動的にスクリーンショットとして記録し、AI技術を使って後から検索できるようにするもの。「デジタル記憶」とも呼ばれる。2025年4月25日にCopilot+ PC向けに正式リリースされた。

DRM(Digital Rights Management)
デジタルコンテンツの著作権を保護するための技術。Netflixなどの動画配信サービスでは、この技術によりスクリーンショットが黒い画面として表示される。

エンドツーエンド暗号化
通信の送信者と受信者の間でのみデータが復号可能な暗号化方式。サービス提供者を含む第三者がメッセージ内容を読むことができない。

スクリーンセキュリティ機能
アプリの画面がスクリーンショットや画面録画で記録されることを防ぐ機能。プライバシー保護のために使用される。

Copilot+ PC
Microsoftが2024年に発表した、AI機能に特化したPC規格。Recallなどの高度なAI機能を利用できる。

【参考リンク】

Signal公式サイト(外部)
プライバシーを重視した暗号化メッセージングアプリを提供する非営利団体のウェブサイト

Microsoft Windows 11公式サイト(外部)
Windows 11の機能や購入方法などを紹介する公式サイト

1Password公式サイト(外部)
パスワード管理ツールを提供する企業のウェブサイト

【参考動画】

【編集部後記】

皆さんは普段使っているアプリが、どこまで自分のプライバシーを守ってくれているか考えたことはありますか?便利さとプライバシー、どちらを優先しますか?Signalのような対応は今後増えていくかもしれません。もし自分のデバイスにRecallが搭載されたら、有効にしますか?それとも無効にしますか?また、チャット相手がRecallを使っていると知ったら、どんな内容を送信するか考え直すかもしれませんね。皆さんのご意見をSNSでぜひ教えてください。

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TaTsu
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