Last Updated on 2025-06-05 08:13 by admin
AdobeはAndroid 11以降、RAM6GB以上(推奨8GB)対応の同アプリをGoogle Play Storeで公開した。機能はレイヤー、マスキング、Firefly AI搭載のGenerative Fillなどを含み、ベータ期間中は全機能が無料利用可能である。
正式版では一部機能が有料化予定で、iOS版同様、月額7.99ドルで高度な編集機能も提供されることが見込まれる。
既存のPhotoshopデスクトップ契約者は追加費用なしでプレミアム機能を利用できる。主な機能は画像結合・ブレンド、Tap Selectによる部分削除、スポット修復ブラシ、Firefly AIによる生成的編集、Adobe Stockアセット利用、正確な選択ツールなどである。新規ユーザー向けにチュートリアルも提供される。
From: Photoshop for Android launches in beta with built-in Firefly AI
【編集部解説】
今回のPhotoshop for Androidリリースが持つ最大の意義は、モバイルファーストの創作環境への本格的な移行を示している点です。従来のPhotoshop Expressとは異なり、レイヤーやマスクといったプロフェッショナル機能を搭載することで、スマートフォンでも本格的な画像編集が可能になりました。
特に注目すべきは、Firefly AIの統合による生成的編集機能の実装です。Generative Fillにより、ユーザーは自然言語での指示だけで画像の要素を追加・変更できるようになります。これは従来の技術的スキルを必要とする編集作業を大幅に簡素化し、創作の敷居を下げる革新的な変化といえるでしょう。
ハードウェア要件として最低6GB、推奨8GB以上のRAMが必要な点は、AI処理の計算負荷の高さを物語っています。この数値は現在のミドルレンジスマートフォンでも十分対応可能な水準であり、幅広いユーザー層への普及が期待されます。

価格戦略においては、ベータ期間中の完全無料提供が戦略的に重要です。iOS版では月額7.99ドルで提供されているプレミアム機能に相当する機能を、今回のAndroid版ベータで無料で提供することで、Android市場での急速なユーザー獲得を狙っていると考えられます。これはAndroid市場の規模を考慮した、Adobeの市場拡大戦略の現れでしょう。
一方で、潜在的なリスクとして、モバイル環境での複雑な編集作業における操作性の課題があります。タッチインターフェースでの精密な選択やレイヤー操作は、デスクトップ環境と比較して制約が多く、プロフェッショナルワークフローへの完全な置き換えは現段階では困難と予想されます。
長期的な視点では、この動きはクリエイティブ産業の民主化を加速させる可能性があります。高価なソフトウェアやハードウェアへの依存を減らし、より多くの人々が創作活動に参加できる環境を整備することで、新たな才能の発掘や表現の多様化が期待できるでしょう。
【用語解説】
Firefly AI
Adobeが開発した生成AI技術。テキストプロンプトから画像を生成したり、既存の画像に要素を追加・削除する機能を持つ。商用利用可能で、著作権に配慮した学習データを使用している。
Generative Fill(ジェネレーティブフィル)
Photoshopに搭載されたFirefly AI機能の一つ。選択した領域にテキストプロンプトで指定した内容を自動生成したり、不要な要素を自然に除去する機能。
スポット修復ブラシツール
AIを活用してPhotoshopで画像の小さな汚れやゴミを自動的に修正するツール。修正箇所の周辺領域をサンプルとして自動的に読み取り、自然な修正を行う。
レイヤー
Photoshopの基本機能の一つ。画像を透明なフィルムのような層に分けて編集することで、個別の要素を独立して操作できる仕組み。
マスキング
画像の特定部分を隠したり保護したりする技術。編集対象を限定することで精密な画像処理を可能にする。
Tap Select
モバイル版Photoshopの直感的選択ツール。タップ操作で画像の特定部分を素早く選択し、削除や置換を行える機能。
【参考リンク】
Adobe公式サイト(外部)
Adobeの公式ウェブサイト。Photoshop、Illustrator、Creative Cloudなど同社の全製品・サービス情報を提供している。
Adobe Firefly(外部)
Adobe Fireflyの公式サイト。テキストから画像生成、動画生成などの生成AI機能を無料で体験できるWebアプリケーション。
Adobe Photoshop(外部)
Adobe Photoshopの公式製品ページ。デスクトップ版、Web版、モバイル版の機能比較や価格情報を掲載している。
Adobe Stock(外部)
Adobeが運営するロイヤリティフリー素材サイト。写真、イラスト、動画、テンプレートなど数百万点の商用利用可能な素材を提供。
【参考動画】
【参考記事】
Adobe launches beta version of its Photoshop app on Android – TechCrunch(外部)
TechCrunchによるPhotoshop Android版の発表記事。iPhoneアプリとの比較や、Adobeの戦略的狙いについて分析している。
Adobe finally releases Photoshop for Android, and it’s free (for now) – Ars Technica(外部)
Ars TechnicaによるPhotoshop Android版の詳細レビュー。過去のモバイル版との比較や技術的な特徴について解説している。
【編集部後記】
Adobe Photoshop for AndroidがFirefly AI搭載でベータ版リリースされました。スマートフォンでプロレベルの画像編集が可能になる時代をどう思われますか?
AI技術がクリエイティブワークに与える影響や、モバイル創作の可能性について、皆さんのご意見をお聞かせください。