OpenAIはChatGPT無料ユーザー向けにメモリー機能の軽量版を世界的に展開開始した。この機能により、無料ユーザーも過去の会話内容を参照してより個人化された応答を受けられるようになった。
ChatGPTのメモリー機能には、カスタム指示、保存されたメモリー、チャット履歴参照の3種類が存在し、有料のChatGPT Plus(月額20ドル)ユーザーはすべての機能を利用できるが、無料ユーザーは今回初めてチャット履歴参照機能の軽量版のみ利用可能になった。同機能はEUおよび他のヨーロッパ諸国を除き、デフォルトで有効化される。
同社は将来のスーパーアシスタント実現に向け、Jony IveのIOスタートアップを65億ドルで買収し、2026年にChatGPTデバイスの発表を予定している。無料版では直近の会話のみを参照する短期的な文脈保持が中心となり、有料版のような長期記憶機能は含まれない。
From: Everything to know about ChatGPT’s new memory upgrade for Free users
【編集部解説】
OpenAIが無料ユーザー向けに展開したメモリー機能は、AI業界における重要な転換点を示しています。これまで月額20ドルのChatGPT Plusユーザーのみが享受できた個人化機能の一部を無料ユーザーにもを無料ユーザーにも提供開始しました。これにより、ユーザーは過去の会話内容を参照し、よりパーソナライズされた応答を受け取ることが可能になります。
技術的な観点から見ると、この「軽量版メモリー」は短期的な会話継続性を提供するものです。有料版が長期にわたって文脈を保持するのに対し、無料版では直近の会話のみを参照する仕組みとなっています。これは2025年4月に有料版で実装された「過去のすべての会話を自動参照する機能」の制限版と位置づけられます。
この機能拡張により、AIが単なる質問応答ツールから「学習するパートナー」へと進化する可能性が見えてきます。ユーザーの文体や興味関心を短期間でも記憶することで、より自然で効率的なコミュニケーションが実現されるでしょう。
一方で、プライバシーに関する懸念も浮上しています。EUおよびヨーロッパ諸国では、この機能がデフォルトでオフになっている点が示すように、個人データの取り扱いに対する慎重なアプローチが求められています。OpenAIは一時的チャット機能や記憶の無効化オプションを提供していますが、ユーザーの意識的な選択が重要になります。
長期的な視点では、この動きはAI業界全体の競争激化を促進する要因となるでしょう。GoogleのBardやMicrosoftのCopilotなど、競合他社も同様の機能拡充を迫られる可能性が高く、結果的にユーザーにとってより良いサービスが提供されることが期待されます。
また、OpenAIが発表した65億ドルでのJony Ive買収とハードウェア開発計画は、ソフトウェアとハードウェアの統合によるより深い個人化体験の実現を目指していることを示唆しています。これは、AppleのSiriやAmazonのAlexaのような既存のAIアシスタント市場に大きな変革をもたらす可能性があります。
【用語解説】
軽量版メモリー機能
無料ユーザー向けに提供される制限付きのメモリー機能。直近の会話のみを参照し、有料版のような長期記憶や全会話履歴の参照は含まれない。
チャット履歴参照機能
過去の会話内容を自動的に参照して、より文脈に沿った応答を生成する機能。2025年4月に有料版で強化され、6月に無料版の軽量版が展開された。
【参考リンク】
OpenAI公式サイト(外部)
OpenAIの企業概要、研究内容、製品情報を提供する公式サイト。AGIの将来ビジョンや最新ニュースを掲載している。
ChatGPT公式サイト(外部)
ChatGPTの公式ウェブアプリケーション。無料版と有料版の両方でアクセス可能で、メモリー機能の設定もここから行える。
OpenAI Help Center(外部)
ChatGPTの使い方やトラブルシューティング、プライバシー設定に関する公式ヘルプページ。メモリー機能の詳細設定方法も掲載。
【参考記事】
ChatGPTの履歴を参照する強化されたメモリ機能 – 天秤 AI(外部)
2025年4月の有料版メモリー機能強化について詳述。従来機能との違いと技術的背景を解説している。
ChatGPT「Memory」機能が大幅進化!使い方とアップデート内容 – ChatGPT School(外部)
2025年6月4日更新。無料版への展開を含むメモリー機能の最新情報と具体的な使用方法を紹介している。
【編集部後記】
ChatGPTの無料版にメモリー機能が追加されたことで、AIとの対話がより自然になりそうですね。皆さんはAIに何を覚えてもらいたいですか?仕事の進捗や趣味の話、それとも日常の些細な会話でしょうか。軽量版とはいえ、短期的な記憶でも十分便利になりそうです。一方で、AIが私たちの情報を記憶することへの不安もあるかもしれません。便利さとプライバシーのバランスをどう取るか、実際に使ってみた感想をぜひお聞かせください。