Googleは2025年11月17日、AI Mode内の既存ツール「Canvas」に旅行計画機能を追加したと発表した。米国デスクトップのLabs実験参加者が利用可能。
Canvasはこれまで学習計画や情報整理に使われていたが、今回のアップデートで旅程作成にも対応。旅行タイプと希望を伝えるだけで、フライトやホテルのリアルタイムデータ、Googleマップの写真・レビュー、ウェブ情報を統合した旅程が自動生成される。
同時に、AI搭載航空券検索「Flight Deals」を200以上の国・地域へグローバル展開し、日本を含む60以上の言語に対応。さらにエージェント型AIによるレストラン予約機能を米国で正式展開し、OpenTable、Resy、Tockなどのパートナー経由で予約が可能になった。
今後はAI Mode内でフライトやホテル予約も完結できるよう、Booking.comやExpediaなど業界大手と開発を進めている。
From:
New ways to plan travel with AI in Search
【編集部解説】
今回のGoogleの発表は、既存のAI Mode内で提供されているCanvasツールに旅行計画機能が追加されたことが大きなポイントです。Canvasはこれまで学習計画やプロジェクト管理に使われてきましたが、今回のアップデートで旅行という複雑な時系列プロセスにも対応できるようになりました。
特に注目すべきは「エージェント型AI」という概念です。これは単に質問に答えるだけでなく、ユーザーの代わりに複数のプラットフォームを横断して検索し、条件に合う選択肢を絞り込む機能を指します。OpenTable、Resy、Ticketmasterなど10以上のパートナーサービスとリアルタイムで連携し、空き状況を確認して予約リンクまで提示する仕組みは、AIが「調べる道具」から「実行する代理人」へと変わりつつあることを意味しています。
この動きは旅行業界に大きな影響を与えるでしょう。ExpediaやBooking.comといった既存のオンライン旅行代理店は、すでにChatGPTを活用したAIアシスタントを導入していますが、Googleは検索という圧倒的な入り口を持つ点で優位性があります。1日に数十億件の検索クエリを処理するGoogleが、ユーザーを外部サイトへ送り出すのではなく、自社プラットフォーム内で旅行計画から予約まで完結させる流れは、旅行メディアやOTAのトラフィック獲得戦略に根本的な変化を迫るものです。
一方で、Googleは主要な旅行企業との協業も強調しています。Booking.com、Expedia、Marriott Internationalなどとのパートナーシップは、業界全体のエコシステムを破壊するのではなく、再構築する意図を示唆しています。とはいえ、AIが仲介者として機能することで、ブランドの直接的な顧客接点が減少するリスクは否定できません。
技術的な観点では、Canvasという視覚的なプランニングインターフェースが興味深いポイントです。これはチャット形式の会話だけでなく、旅程を整理・編集できるサイドパネルを提供し、旅行という時間軸のあるプロジェクトに適した設計となっています。履歴から再アクセスできる点も、断続的に進む旅行計画のプロセスに配慮した機能と言えるでしょう。
Flight Dealsの200カ国以上への展開と60言語対応は、グローバル市場への本格参入を意味します。日本を含むアジア太平洋地域でも利用可能になることで、旅行計画におけるAIの活用が加速する可能性があります。
ただし現時点では、Canvasは米国のデスクトップユーザーでLabs実験に参加している人のみが対象であり、エージェント型予約も段階的な展開にとどまっています。フライトやホテルの予約完結機能も「将来的に」という表現にとどまっており、完全な実装にはまだ時間を要するでしょう。AIが生成する情報の正確性や、予約プロセスにおける責任の所在といった課題も、今後明確にしていく必要があります。
【用語解説】
AI Mode(Google AIモード)
Googleが提供する高度なAI検索体験。複雑な質問や旅行計画、予約などを対話型で実現できる。
Canvas
AI Mode内のプランニングツール。リアルタイム情報を統合し時系列・視覚的に旅程管理が可能。
Flight Deals
Googleが提供するAI搭載の航空券検索・割引提案サービス。
エージェント型AI
ユーザーの意図を理解し、複数サービスを横断して実行・仲介するAI技術。
OTA
オンライン旅行代理店。ExpediaやBooking.comなどインターネットで総合旅行サービスを提供する企業。
【参考リンク】
Google AI Mode公式(外部)
GoogleのAI検索機能。旅行計画や各種タスクを対話型でサポートする最新技術の公式サイト。
Google Flights Deals公式(外部)
AI搭載の航空券検索・割引提案サービス。旅程と予算に合う航空券をAIが提示。
OpenTable(外部)
世界最大級のレストラン予約プラットフォーム。多様なレストランで即時予約に対応。
Resy(外部)
最新インターフェースのレストラン予約サービス。流行店や高級店に強み。
Tock(外部)
体験型ダイニング・予約に特化したサービス。事前決済やイベント予約対応。
Booking.com(外部)
世界最大級の宿泊予約サイト。AI Modeとの協業で検索予約体験が進化。
Expedia(外部)
大手オンライン旅行代理店。航空券・ホテル予約など総合旅行サービスを提供。
【参考記事】
Search Engine Journal(外部)
AI Modeの米国展開やレストラン予約の実態、旅行業界への影響を利用者目線でレポート。
【編集部後記】
GoogleのAIモードやCanvasでの旅行計画は、情報収集や比較・予約の手間を大きく軽減してくれそうです。今までは「どこから調べて、どうやって選ぶ?」と悩んだり、途中で計画が止まることも多かったですが、自分の条件をAIに伝えるだけで詳細な案が瞬時に並ぶ未来が近づいています。
新しい旅のスタイルとして、AIと一緒に計画や発見を楽しんでみませんか?あなたなら、どんな旅をAIと一緒にデザインしたいですか。
























