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Adobe Firefly、動画編集に革命。Prompt to EditとAlephモデルで「部分修正」が可能に

[更新]2025年12月17日

Adobe Firefly、動画編集に革命。Prompt to EditとAlephモデルで「部分修正」が可能に - innovaTopia - (イノベトピア)

Adobeは2025年12月16日、AI動画生成サービス「Firefly」の機能強化を発表した。新たに「Prompt to Edit」コントロール機能を導入し、RunwayのAlephモデルを使用したテキスト指示による動画の精密編集が可能になった。

また、Firefly Video Modelでは参照動画をアップロードすることでカメラモーションを再現できる機能を追加した。動画アップスケーリングではTopaz Astraを採用し、1080pまたは4Kへの変換に対応する。画像モデルではBlack Forest LabsのFLUX.2が利用可能になり、最大4つの参照画像をサポートする。

ブラウザベースの「Firefly video editor」はパブリックベータ版として広く提供開始された。現在から2026年1月15日まで、Firefly Pro、Firefly Premium、7,000クレジット、50,000クレジットプランの利用者に対し、画像および動画の無制限生成を提供する期間限定プロモーションを実施している。

From: 文献リンクAdobe Firefly improves AI video creation with new tools, new models and unlimited generations | Adobe Blog

 - innovaTopia - (イノベトピア)
Adobe公式Blogより引用

【編集部解説】

Adobeが発表したFireflyの今回のアップデートは、生成AIの「生成」から「編集」へという大きな転換点を示しています。これまでAI動画生成ツールの多くは「生成し直す」という試行錯誤のプロセスに依存していましたが、今回の「Prompt to Edit」機能により、既存のクリップに対して外科的な修正が可能になりました。

この機能を支えているのがRunwayのAlephモデルです。Alephは2025年7月に発表された「インコンテキスト動画モデル」で、既存の動画映像を理解し、テキスト指示だけでオブジェクトの追加・削除・変換、カメラアングルの生成、スタイル転送、照明変更などを行える革新的な技術です。Adobeはこの技術を統合することで、クリエイターが「ほぼ完璧」な生成結果を捨てることなく、必要な部分だけを修正できる環境を実現しました。

カメラモーション参照機能も見逃せません。開始フレームと参照動画をアップロードするだけで、希望するカメラの動きを再現できるこの機能は、AI生成動画における「演出のコントロール」という課題に対する明確な回答です。従来のテキストプロンプトだけでは表現が難しかった映画的なカメラワークが、より直感的に実現できるようになります。

動画アップスケーリングにTopaz Astraを採用した点も重要です。Topaz Labsは画像・動画の高品質化技術で定評があり、1080pや4KへのアップスケーリングをFirefly Boards内でバックグラウンド処理できることは、アーカイブ映像の復元や低解像度素材の活用において大きな価値を持ちます。

FLUX.2の統合は、Black Forest Labs(元Stability AIの創業メンバーが設立)の最新画像生成モデルを利用できることを意味します。フォトリアリスティックな詳細表現と最大4つの参照画像のサポートは、より精密なビジュアル制作を可能にします。

そして、Firefly video editorのパブリックベータ開始は、Adobeの戦略的な意図を明確にしています。ブラウザベースで動作し、タイムライン編集とテキストベース編集の両方に対応するこのエディターは、Premiere Proとは異なる位置付けです。軽量で迅速な編集環境として、AI生成素材と従来の映像を組み合わせた「クリエイティブアセンブリ」の場を提供します。

2026年1月15日までの無制限生成プロモーションは、Adobeがユーザーに新機能を体験させ、フィードバックを収集する戦略的な施策です。Firefly Pro、Firefly Premium、7,000クレジット、50,000クレジットプランの契約者が対象で、すべての画像モデルとFirefly Video Modelが無制限で利用できます。

この一連の発表が意味するのは、AI動画生成が「ランダムな生成を繰り返す」段階から「意図を持って編集し、洗練させる」段階へ進化したということです。OpenAIのSora、GoogleのVeo 2といった競合が存在する中で、Adobeは既存のクリエイティブエコシステムとの統合という強みを活かし、プロフェッショナルワークフローに組み込める実用的なツールを提供しています。

【用語解説】

Prompt to Edit
テキスト指示により既存の動画クリップに対して部分的な編集を加える機能。全体を再生成することなく、特定の要素だけを追加・削除・変更できる。

インコンテキスト動画モデル
既存の動画の文脈(コンテキスト)を理解し、その内容に基づいて編集や変換を行うAIモデル。従来のゼロからの生成とは異なり、既存映像を解析して一貫性のある変更を加える。

カメラモーション参照
参照動画のカメラの動き(パン、ズーム、チルトなど)を解析し、それを新しい動画生成に適用する機能。テキストだけでは表現しにくいカメラワークを直感的に再現できる。

動画アップスケーリング
低解像度の動画をAI技術により高解像度(1080pや4K)に変換する処理。単純な拡大とは異なり、AIが失われたディテールを補完することで画質を向上させる。

Firefly Boards
Adobe Fireflyのワークスペース機能。複数のAI生成素材を整理し、管理するためのボード形式のインターフェース。

ジェネレーティブクレジット
Adobeの生成AI機能を使用する際に消費される単位。プランに応じて月間の利用可能クレジット数が設定されている。

マルチトラックタイムライン
複数の映像、音声、エフェクトのレイヤーを同時に編集できるタイムライン形式の編集インターフェース。

【参考リンク】

Adobe Firefly(外部)
Adobeが提供する生成AIプラットフォーム。テキストから画像・動画・音声を生成し、商用利用可能な素材を作成できる。

Runway(外部)
AI動画生成・編集ツールを開発する企業。Alephモデルを提供し、AdobeのPrompt to Edit機能を支えている。

Black Forest Labs(外部)
元Stability AIの創業メンバーが設立したAI企業。FLUX.2などの高品質な画像生成モデルを開発している。

Topaz Labs(外部)
画像・動画の高品質化技術に特化したソフトウェア企業。Astra modelによる動画アップスケーリング技術を提供。

Adobe Premiere Pro(外部)
Adobeのプロフェッショナル向け動画編集ソフトウェア。より高度で複雑な編集作業に対応した統合的な編集環境。

【参考記事】

Adobe Firefly Expands AI Video Tools With Precision Editing, Camera Control, and Firefly Video Editor(外部)
Fireflyの新機能について詳細に解説。Prompt to EditがRunwayのAlephモデルを使用していることなどを報じている。

Adobe Firefly now supports prompt-based video editing, adds more third-party models | TechCrunch(外部)
2025年10月にプライベートベータとして発表されたFirefly video editorが全ユーザーに公開されたことを報じる。

Adobe Firefly adds AI video features most generators lack — here’s what’s rolling out today | Tom’s Guide(外部)
Prompt to Edit機能が他のAI動画ツールとは異なり全体を再生成せずに部分編集が可能である点を強調。

Runway’s New Aleph Video Model Offers Insane New Ways for AI to Edit Your Videos | No Film School(外部)
2025年7月に発表されたRunway Alephモデルの詳細な機能解説。Adobeが統合した技術の背景を理解できる。

Adobe expands Firefly with AI video editing tools and partner model integrations – NewscastStudio(外部)
放送業界の視点からFireflyのアップデートを分析。複数のAIシステムを並行利用するユーザーのニーズに応える点を解説。

【編集部後記】 

AI動画生成が「思い通りの一発」を目指す試行錯誤から、「ほぼ完璧を微調整する」編集へと進化しています。皆さんがこれまでAI生成ツールを使って感じた「あと少しなのに…」という歯がゆさは、きっと今回のアップデートで大きく変わるはずです。

特に気になるのは、RunwayのAlephモデルとの統合による「外科的編集」の精度です。実際に使ってみた方がいらっしゃれば、どの程度まで意図通りの修正ができたか、ぜひ教えてください。また、無制限生成プロモーションを活用して新しいワークフローを試される方も多いのではないでしょうか。皆さんのクリエイティブな実験から、また新しい可能性が見えてくるかもしれません。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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