YouTubeは、Googleの最新大規模言語モデルGemini 3を使用して構築されたWebアプリを、選ばれたクリエイターグループに提供し、プラットフォームの「Playables」エコシステム内で小規模ゲームを制作できるようにすると発表した。YouTube Gamingの投稿によると、「Playables Builder」のクローズドベータテストでは、短いテキスト、動画、画像のプロンプトを用いてゲームを開発できる。クリエイターは文章による説明や参考画像・動画をアップロードすることで新しいゲームを制作可能だ。
Builder内で開発されたゲームは、米国、英国、カナダ、オーストラリアのユーザーがPlayablesハブで即座にプレイできる。YouTubeのミニゲームは2024年5月に75以上のタイトルとともに全ユーザーに公開され、昨冬にはマルチプレイヤー機能が導入された。
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YouTube Tests User Game-Building With Google’s LLM
【編集部解説】
YouTubeが発表したPlayables Builderは、クリエイターエコノミーとAI技術の融合を象徴する取り組みです。このツールは、プログラミング知識を持たないクリエイターでも、テキストや画像の指示だけでゲームを生成できる点が画期的といえます。
注目すべきは、GoogleがGeminiという生成AIを投入している点です。これまでのノーコードツールが既存のテンプレートを組み合わせる方式だったのに対し、生成AIを活用することで、より柔軟で創造的なゲーム制作が可能になります。クリエイターのアイデアを即座に形にできる環境は、コンテンツ制作の民主化をさらに推し進めるでしょう。
一方で、生成されるゲームの品質や独創性には課題が残ります。AIが生成するゲームは、学習データに基づいた既存パターンの組み合わせになる可能性が高く、真に革新的な体験を生み出せるかは未知数です。また、著作権や知的財産権の問題も懸念されます。参考画像からゲームを生成する際、既存作品との類似性をどう判断するのか、明確な基準が求められるでしょう。
Googleにとっては、このプロジェクトが二重の意味を持ちます。YouTubeのエンゲージメント向上だけでなく、Geminiの実用的なトレーニングデータを収集できる機会となります。クリエイターが生成したゲームとユーザーの反応は、AIモデルの改善に直結する貴重な情報源となります。
現在は米国、英国、カナダ、オーストラリアの4カ国限定ですが、今後の展開次第では、ゲーム業界全体に影響を与える可能性があります。大規模なゲーム開発には及ばないものの、カジュアルゲーム市場やプロトタイピングの領域では実用的な選択肢となるかもしれません。
【用語解説】
大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)
膨大なテキストデータを学習し、人間のような自然な文章生成や理解を行うAIモデル。GPTやGeminiなどが代表例で、近年は文章生成だけでなく、画像認識やコード生成など多様なタスクに応用されている。
Gemini
Googleが開発した大規模言語モデル。マルチモーダル機能を持ち、テキスト、画像、動画などの複数の入力形式を処理できる。本記事のPlayables Builderでは、クリエイターの指示からゲームを生成するエンジンとして使用されている。現在の最新バージョンはGemini 3。
Playables
YouTubeが提供するミニゲームプラットフォーム。2024年5月に正式公開され、ブラウザ上で手軽にプレイできるカジュアルゲームを75以上提供している。動画コンテンツとゲームを統合し、ユーザーのエンゲージメント向上を目指している。
ノーコード/ローコード開発
プログラミング知識がなくても、視覚的なインターフェースや自然言語の指示によってアプリケーションやゲームを開発できる手法。開発の民主化を促進し、技術的ハードルを下げることで、より多くの人々がクリエイターになれる環境を提供する。
【参考リンク】
Google Gemini(外部)
Googleの生成AIモデル。テキスト、画像、動画など多様な形式のデータを処理できるマルチモーダル機能を持つ。
GameSnacks by Google(外部)
Googleの軽量HTMLゲームプラットフォーム。低スペック端末でも快適にプレイできるミニゲームを配信。
【参考記事】
YouTube invites creators to use Gemini tool to make video games(外部)
Tubefilterの報道。Playables Builderのクローズドβテスト開始と参加クリエイターについて詳述。
YouTube is letting creators make playable games with a Gemini 3 tool(外部)
Engadgetの分析記事。AIゲーム生成の課題と専門的なゲーム開発との違いを考察。
You can now play AI-generated games in YouTube(外部)
Creative Bloqの記事。実際に生成されたゲームの品質評価と参加クリエイターの事例を紹介。
YouTube Gaming Opens Playables Builder Beta With Gemini 3(外部)
Dataconomyの技術分析。Google LabsのDiscoやGenTabsとの関連性を詳細に解説。
【編集部後記】
AIがゲーム制作の敷居を下げることで、これまで技術的なハードルに阻まれていたアイデアが形になる時代が近づいています。プログラミングを学ぶ時間がなくても、頭の中にあるゲームの構想を実現できるかもしれません。
一方で、誰もが簡単にゲームを作れるようになったとき、本当に面白い体験を生み出すものは何でしょうか。技術の民主化は創造性をどう変えていくのか、皆さんはどのようにお考えでしょうか。innovaTopia編集部も、この問いに向き合い続けたいと思います。































