YouTubeは2025年最後の機能アップデートをリリースした。音声返信オプションを数百万のクリエイターに拡大し、動画のコメントに音声クリップで返信できるようにする。自動吹き替えの新設定では、ユーザーが言語の好みを選択可能になった。
動画作成アプリ「Create」をiOSに提供開始し、既にAndroidでは利用可能となっている。Superchat Goalsを縦型ライブ配信に拡大した。チャンネルガイドラインを中級および上級機能にアクセスできる全クリエイターに提供する。生成AIモデル「Nano Banana」をYouTube投稿に展開し、18歳以上の米国、カナダ、ニュージーランド、インドのユーザーが利用できる。
AI搭載の推奨ショート形式クリップ機能をポッドキャストプレイリストの動画に導入し、米国とカナダのクリエイターが利用可能である。一部のクリップにコメント要約機能を追加した。Shortsクリップの「Dislike」ボタンの変更をテスト中である。
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YouTube Expands Voice Replies, Superchat Goals and AI Creation Tools
【編集部解説】
YouTubeが2025年最後のアップデートで発表したこれらの機能群は、一見すると小さな改善の集合体に見えるかもしれません。しかし、その背後にはクリエイターエコノミーの構造変化を見据えた戦略が透けて見えます。
特に注目すべきは、音声返信機能の段階的な拡大です。2024年12月の限定テストから始まり、2025年を通じて着実に対象を広げ、今回「数百万のクリエイター」へと到達しました。音声という媒体は、テキストでは伝わりにくい感情や人間性を届けることができ、視聴者との距離を縮める効果が期待されます。コミュニティの結束力が高まる可能性があります。
YouTube Createのi OS版リリースは、2023年のAndroid版ベータ開始から2年越しの展開となりました。これは単なる機能追加ではなく、モバイルファーストの制作環境を整備する動きです。高価な編集ソフトを持たないクリエイターでも、スマートフォン一台でプロフェッショナルな映像を制作できる環境が整いつつあります。参入障壁の低下は、クリエイター層の多様化を促進するでしょう。
「Nano Banana」という生成AIモデルの導入は、特に興味深い展開です。画像の編集や生成をプロンプトだけで行える技術は、ビジュアルデザインのスキルを持たないクリエイターにも表現の幅を与えます。ただし、18歳以上という年齢制限と、米国・カナダ・ニュージーランド・インドという限定的な展開は、AI生成コンテンツに対する慎重な姿勢を示しています。
Superchat Goalsの縦型ライブ配信への拡大は、2025年9月に発表された縦型ライブストリーミング機能と連動しています。Shortsフィードに表示される縦型配信は、モバイル視聴に最適化されており、若年層へのリーチを強化します。収益化の選択肢が増えることで、ライブ配信を主軸とするクリエイターの活動持続性が向上するでしょう。
コメント要約機能は、2024年7月からテストが続いています。大量のコメントから議論の焦点を素早く把握できる利点がある一方、AI要約が人間の微妙なニュアンスを捉えきれない可能性も残ります。クリエイターが視聴者の声を直接読む機会が減ることで、コミュニケーションの質が変化するリスクも考慮すべきです。
Dislikeボタンの実験は、ユーザー体験の改善を目指すものです。「Dislike(低評価)」と「Not Interested(興味なし)」の区別が曖昧だという声を受けての対応ですが、これは2024年10月から継続しているテストの延長線上にあります。フィードバックの精度向上により、アルゴリズムがより個人の嗜好を反映したコンテンツを推薦できるようになるでしょう。
これらの機能群に共通するのは、AI技術を活用しながらも人間のクリエイティビティを補助する設計思想です。プラットフォームが進化する中で、技術がクリエイターと視聴者の関係性をどう変えていくのか、2026年以降の展開が注目されます。
【用語解説】
YouTube Shorts
YouTubeが提供する60秒以内の縦型ショート動画機能。TikTokやInstagram Reelsに対抗して2020年に開始され、モバイルファーストの視聴体験を提供する。
SuperChat Goals
ライブ配信中に視聴者からの投げ銭(SuperChat)に目標額を設定し、達成時に報酬を提供できる機能。配信者と視聴者のインタラクションを促進し、収益化を支援する。
クリエイターエコノミー
個人クリエイターがコンテンツ制作を通じて収益を得る経済圏。YouTubeやTikTokなどのプラットフォームを基盤とし、広告収入、投げ銭、スポンサーシップなど多様な収益モデルが存在する。
生成AI
テキスト、画像、音声などのコンテンツを自動生成する人工知能技術。プロンプト(指示文)を入力することで、既存データを学習したモデルが新しいコンテンツを創出する。
アルゴリズム
プラットフォームがユーザーの行動データを分析し、個々の嗜好に合わせてコンテンツを推薦する仕組み。視聴履歴、いいね、視聴時間などの指標を基に最適化される。
【参考リンク】
YouTube Create公式サイト(外部)
無料のモバイル動画編集アプリ。プロフェッショナルな編集機能を搭載し、iOS版も2025年12月にリリース。
YouTube公式ブログ – Creator Insider(外部)
YouTubeの最新機能やアップデート情報を発信。クリエイター向け新機能解説やポリシー変更を掲載。
YouTube Studio(外部)
チャンネル管理用の公式ダッシュボード。動画アップロード、アナリティクス、収益化設定を一元管理。
【参考動画】
YouTube Creators公式チャンネルが音声返信機能やその他の新機能について解説。実際の使用方法や活用シーンを視覚的に理解できる。
【参考記事】
YouTube Create finally arrives on iPhone after year-long Android exclusivity(外部)
YouTube CreateがAndroid独占から1年を経てiOSに展開。2023年ベータ版開始からの経緯を詳述。
YouTube Live adding horizontal/vertical streams, side-by-side ads(外部)
2025年9月の縦型ライブストリーミング機能導入を報道。SuperChat Goals拡大の技術基盤を解説。
YouTube is testing AI-generated comment section summaries(外部)
2024年7月のAIコメント要約機能テスト開始を報道。利点と精度に関する懸念点を両論併記。
【編集部後記】
YouTubeの新機能群を見ていると、クリエイターと視聴者の関係性が確実に変わりつつあることを感じます。音声返信やAI生成ツールは、表現のハードルを下げる一方で、コミュニケーションの質をどう保つかという新たな問いも投げかけています。
みなさんがもしクリエイターだったら、音声で返信することに抵抗はありますか?視聴者として、AIが要約したコメント欄と生のコメント欄、どちらを読みたいでしょうか。技術が進化する中で、私たちが本当に求める「つながり」とは何なのか。一緒に考えていけたら嬉しいです。






























