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Giselle正式リリース、ドラッグ&ドロップでAIアプリを構築できるオープンソースプラットフォームが登場

[更新]2025年12月29日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

株式会社ROUTE06は2025年12月29日、ビジュアルAIアプリビルダー「Giselle(ジゼル)」を全世界に向けてオープンソースで正式リリースした。

Giselleはプログラミング不要で、ドラッグ&ドロップの操作だけでAIアプリを構築・実行できるプラットフォームである。Apache License 2.0で公開され、世界中の個人・企業が自由に利用・改変・再配布できる。

主要機能として、ビジュアルノードエディター、長時間タスクの実行管理、OpenAI(GPT-5.2)、Anthropic(Claude Opus 4.5)、Google(Gemini 3 Flash)などのマルチモデルAIコラボレーション、GitHub連携による自動化、カスタムナレッジの活用を備える。

料金プランは無料プラン(月30分のAI使用)、Proプラン(月額$20)、Team・Enterpriseプラン(要問合せ)を提供し、オープンソース版はセルフホスティングで無料利用可能である。同日17時からProduct Huntでローンチを開始する。

From: 文献リンク誰でも直感的にAIアプリを作れる時代へ。ビジュアルAIアプリビルダー『Giselle(ジゼル)』を全世界に向けてオープンソースで正式リリース

【編集部解説】

ROUTE06が満を持してリリースした「Giselle」は、AIアプリ開発の民主化を大きく前進させる可能性を秘めたプラットフォームです。2025年に入り、AIツールの進化は目覚ましく、ChatGPTやClaudeといった対話型AIは多くの人々の日常に溶け込んでいます。しかし、これらを組み合わせて複雑なワークフローを構築することは、依然として技術的なハードルが高い領域でした。

Giselleが注目すべき点は、単なる「ノーコードツール」ではなく、「AIオーケストレーション」を誰でも扱える形に再構築したことにあります。従来、エンジニアがAPIを組み合わせて実装していた複雑なAIワークフローを、ビジュアルなノードエディターで表現できるようになりました。これは、フローチャートを描く感覚でAIアプリを設計できることを意味します。

特筆すべきは、構築環境と実行環境を明確に分離した設計思想です。多くのノーコードツールでは、作成と実行が一体化していますが、Giselleは数時間に及ぶ長時間のAIタスクを「業務として完走させる」ことに重点を置いています。進捗をリアルタイムで追跡しながら、複数のアウトプットを管理できる実行専用環境は、実際のビジネス現場での利用を想定した実用的な設計といえるでしょう。

マルチモデルAIコラボレーション機能も見逃せません。OpenAIのGPT-5.2、AnthropicのClaude Opus 4.5、GoogleのGemini 3 Flashといった最先端のAIモデルを単一ワークフロー内で組み合わせられることは、各モデルの強みを活かした最適なAIアプリ構築を可能にします。例えば、クリエイティブな文章生成にはGPT、論理的な分析にはClaude、大量データの処理にはGeminiといった使い分けが、ノンプログラマーでも実現できるのです。

GitHub連携機能は開発チームにとって革新的です。IssueやPull RequestをトリガーにしたAI処理の自動実行により、コードレビューの自動化、ドキュメント生成、Issue分類といった開発ワークフローへの深い統合が可能になります。これは単なる自動化ではなく、文脈を理解したインテリジェントな処理を実現するものです。

カスタムナレッジ機能は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)やVector Storeといった高度な技術を、専門知識なしで活用できる点で画期的です。自社のPDFドキュメントやGitHubリポジトリを組み込むことで、一般的なAIでは答えられない組織固有の質問に対応できるようになります。

Apache License 2.0でのオープンソース公開も重要な決断です。これにより、企業は自社環境でセルフホスティングして利用できるため、データセキュリティやコンプライアンスの要件が厳しい組織でも導入しやすくなります。また、オープンソースコミュニティによる機能拡張や改善が期待でき、プラットフォームの持続的な進化が見込めます。

料金体系も戦略的です。無料プランで月30分のAI使用時間を提供することで、個人開発者や小規模チームが気軽に試せる環境を整えています。一方、Proプランは月額$20でAIクレジットを付与する従量課金的なモデルを採用しており、利用量に応じた柔軟な料金設定となっています。

GiselleがProduct Huntでローンチすることも、グローバル市場への本格参入を意図した戦略的な動きです。Product Huntは世界中のアーリーアダプターが集まるプラットフォームであり、ここでの評価が今後の普及に大きく影響するでしょう。

AIツール市場では、BubbleやGlideといったノーコード開発プラットフォーム、FlutterFlowのようなモバイルアプリビルダー、Microsoft Power Appsのようなエンタープライズ向けツールが競合します。しかし、Giselleは「AIエージェントのオーケストレーション」という特定領域に焦点を絞り、GitHub連携やマルチモデルAIといった差別化要素を持っています。

今後の展開として、MCP(Model Context Protocol)対応、API提供、外部サービス連携の拡充などが予定されており、エコシステムの拡大が期待されます。特にSlackやGoogle Workspaceとの連携は、日常的なビジネスコミュニケーションの中でAIアプリを活用する道を開くでしょう。

Giselleは、AIアプリ開発のハードルを大きく下げることで、エンジニアだけでなく、デザイナー、マーケター、プロダクトマネージャーといった多様な職種の人々が、自分たちの業務に最適化されたAIツールを自ら構築できる時代の到来を告げています。これは、AI活用の第二フェーズ、つまり「AIを使う」から「AIを組み立てる」へのシフトを象徴する動きといえるでしょう。

【用語解説】

ノーコード開発
プログラミング言語を記述せずに、ビジュアルインターフェースやドラッグ&ドロップ操作によってアプリケーションを開発する手法である。技術的な専門知識がなくても、業務担当者やデザイナーなどがシステムを構築できることから、開発の民主化を促進する。

AIオーケストレーション
複数のAIモデルやサービスを連携させ、一連のワークフローとして統合・管理する技術である。各AIモデルの特性を活かしながら、複雑なタスクを自動化・最適化することが可能となる。

RAG(Retrieval-Augmented Generation)
検索拡張生成と訳される。大規模言語モデル(LLM)が回答を生成する前に、外部の知識ベースから関連情報を検索し、その情報を参照して回答する技術である。LLMの訓練データにない最新情報や組織固有の情報を活用できるため、より正確で信頼性の高い回答を生成できる。

Vector Store(ベクターストア)
テキストや画像などのデータを数値ベクトルに変換して保存するデータベースである。意味的に類似したデータを高速に検索できることから、RAGやセマンティック検索に活用される。

Apache License 2.0
Apache Software Foundationが作成したオープンソースソフトウェアライセンスである。ソフトウェアの自由な利用、修正、再配布を認める寛容なライセンスで、商用利用も可能である。修正部分のソースコード公開義務はなく、特許権の明示的な付与も含まれる。KubernetesやTensorFlowなど多くの主要プロジェクトで採用されている。

Product Hunt
2013年に設立された、新しいテクノロジー製品やサービスを発見・共有するためのプラットフォームである。世界中のアーリーアダプターやテック愛好家が集まり、日次・週次・月次でランキングが発表される。スタートアップの製品ローンチの場として広く認知されている。

【参考リンク】

Giselle(ジゼル)公式サイト(外部)
ビジュアルAIアプリビルダーGiselleの公式サイト。製品デモや料金プラン、ドキュメントが閲覧できる。

Giselle GitHubリポジトリ(外部)
Apache License 2.0で公開されているGiselleのオープンソースコード。セルフホスティングやコントリビューションが可能。

株式会社ROUTE06 コーポレートサイト(外部)
GiselleやAcsim、Liamなど、AI駆動開発プラットフォームを提供する企業の公式サイト。

Giselle on Product Hunt(外部)
Giselleのローンチページ。ユーザーからのフィードバックやコメント、投票状況が確認できる。

Apache License 2.0(外部)
Apache Software Foundationが管理するApache License 2.0の正式な文書。ライセンス条項の詳細を確認できる。

【参考記事】

Giselle: AI App Builder. Open Source.(外部)
Giselleの公式GitHubリポジトリ。Apache License 2.0でオープンソース公開されており、ローカル環境での実行方法、主要機能、コントリビューション方法が記載されている。

Giselle: AI App Builder(外部)
Giselleの公式サイト。ビジュアルエージェントビルダー、マルチモデル構成、GitHub AI操作など主要機能の説明と、クラウドサービスとしての無料プランの案内がある。

Products | AI-Powered Solutions | ROUTE06(外部)
ROUTE06が提供するAI製品群の概要。Giselle、Acsim、LiamなどのAI駆動開発プラットフォームの特徴と用途が説明されている。

What is RAG? – Retrieval-Augmented Generation AI Explained – AWS(外部)
RAG(検索拡張生成)の仕組みと利点を解説。外部知識ベースを参照して大規模言語モデルの出力を最適化する技術の概要が理解できる。

Apache License, Version 2.0 | Apache Software Foundations(外部)
Apache License 2.0の正式な条文。利用、修正、配布に関する権利と義務が詳細に記載されており、オープンソースプロジェクトでの採用条件を確認できる。

【編集部後記】

AIツールを「使う」時代から「組み立てる」時代へ。Giselleのようなビジュアルなノーコードプラットフォームの登場は、私たち一人ひとりが自分の業務に最適化されたAIアプリを作れる未来を示しています。エンジニアでなくても、マーケターでも、営業担当者でも、自分の課題を最もよく知るあなたこそが、最適なソリューションを生み出せるはずです。オープンソースで公開されたGiselleを試してみることで、AIとの新しい協働の形を体験してみませんか。あなたならどんなAIアプリを作りますか。

投稿者アバター
Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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