シンガポールと深圳に本社を置くペットテクノロジー企業petguguが、2026年1月6日から9日に開催されるCES 2026において、AIペット健康エコシステムを発表する。会場はラスベガスのベネチアン・エキスポ・ホールA〜D、ブース53162。同社は2022年に設立され、130,000平方メートルの研究開発・生産拠点を運営している。
主力製品は世界初となる自動水洗式スマート猫トイレで、特許取得済みの水洗・排水メカニズムにより排泄物を直接排水ラインに流す。80リットルの密閉キャビンを備え、体重認識、動き検知、赤外線生体検知などのマルチセンサー保護機能を搭載している。その他、ウォーターフォール給水器、スマートペットフードフィーダー、ペットグルーミングドライヤー&バキューム、コンパニオン&クリーニングロボットも展示される。これらの製品は現在Amazonなどで入手可能で、新世代スマート猫用トイレ、空気清浄機、ペットグルーミングデバイスが2026年3月に発売予定である。

【編集部解説】
2022年設立のpetguguが、2026年1月のCES開催を目前に控え、注目の製品群を発表しました。市場データを見ると、この発表が持つ意義の大きさが理解できます。
スマート猫トイレ市場は現在、急速な成長局面にあります。2025年の市場規模は約10.9億ドル(約1,630億円)と推定されていますが、2030年には25.6億ドル(約3,840億円)まで拡大する見込みです。年平均成長率は18.6%という驚異的な数字が予測されています。
この成長の背景には、ペットの家族化(pet humanization)というグローバルなトレンドがあります。モルガン・スタンレーは米国のペット産業全体が2025年に1,570億ドル(約23兆5,500億円)規模に達すると予測しており、ペット用品への支出は人間の医療と同水準の関心を集めつつあります。
petguguの製品群で特に注目すべきは、世界初を謳う自動水洗式スマート猫トイレです。従来の自動清掃タイプは排泄物を内部に蓄積する方式でしたが、このシステムは排泄物を直接排水ラインに流すという根本的な発想の転換を実現しています。これにより、臭いの蓄積問題や定期的な手動廃棄作業から解放されます。
さらに重要なのは、この製品が単なる衛生管理ツールではなく、健康モニタリング端末として機能する点です。排泄時間、頻度、滞在時間、体重を自動記録し、尿路機能、消化の規則性、水分補給状態、食欲傾向といった定量的指標として可視化します。猫は体調不良を隠す習性があるため、こうした日常的なデータ収集は早期発見に極めて有効です。
ペットテック市場全体では、AIを活用した予防医療へのシフトが加速しています。2025年にはPurina Petivityシステムが「Product of the Year」を受賞しましたが、これは尿路感染症、糖尿病、腎臓病の早期検知機能が評価されたものです。petguguのアプローチもこの流れに完全に合致しています。
エコシステム戦略も見逃せません。給水器、給餌器、グルーミング機器、清掃ロボットが統合アプリで連携し、各デバイスが「行動および健康データのノード」として機能します。バラバラだった日常ケアを一つのフレームワークに統合することで、獣医師との情報共有も容易になり、より科学的なペットケアが可能になります。
CES 2026への出展タイミングも戦略的です。同展示会ではペットテックがInnovation Awardsの対象カテゴリーとなっており、Asahi Kasei Microdevicesなども健康モニタリング技術を出展予定です。グローバル市場での認知度向上と、小売・流通パートナーシップ構築の絶好の機会となるでしょう。
一方で、価格帯は検討課題です。市場調査によれば、スマート猫トイレの価格は通常300〜600ドル(約4.5万〜9万円)で、飼い主がコストを導入障壁と回答しています。petguguの製品がAmazonで入手可能との情報はありますが、エコシステム全体を導入する際の総コストは相当な金額になると予想されます。
また、水洗式というコンセプトは配管設備が必要となるため、設置場所が限定される可能性があります。賃貸住宅や配管工事が困難な環境では導入のハードルが高くなるでしょう。
日本市場においては、ペットテック導入率がアジア太平洋地域で急速に伸びております。都市部の単身世帯やDINKS世帯を中心に、データ駆動型のペットケアへの関心が高まっており、市場の土壌は整いつつあると言えます。
petguguは2026年3月に新世代スマート猫用トイレ、空気清浄機、ペットグルーミングデバイスの発売も予定しています。CES 2026での反応次第では、ペットテック業界の新たな基準を作る存在になる可能性を秘めています。
【用語解説】
AI(エーアイ)
Artificial Intelligence(人工知能)の略。人間の知的行動を機械が模倣する技術の総称。ペットテック分野では、行動パターンの分析、健康状態の予測、異常検知などに活用されている。
IoT(アイオーティー)
Internet of Thingsの略で「モノのインターネット」と訳される。様々なデバイスがインターネットに接続し、相互にデータをやり取りする仕組み。ペット用デバイスでは、給餌器、給水器、トイレなどが連携して総合的な健康管理を実現する。
ペットテック
Pet TechnologyまたはPet Techの略。IoT、AI、ロボティクスなどの技術をペットケアに応用した製品やサービスの総称。健康モニタリング、自動給餌、GPS追跡、遠隔監視などが含まれる。
ペットの家族化(pet humanization)
ペットを単なる動物ではなく家族の一員として扱う社会的トレンド。この傾向により、ペットの健康、安全、快適性への投資が人間並みに高まっている。グローバル市場でペット関連支出が急増している主要因の一つ。
年平均成長率(CAGR)
Compound Annual Growth Rateの略。複数年にわたる成長率を年単位の平均値で表したもの。投資や市場規模の成長性を評価する際に用いられる指標。
Innovation Awards
CESが主催する革新的な製品やサービスを表彰するプログラム。36のカテゴリーで審査が行われ、受賞製品はCES会場の専用ショーケースで展示される。ペットテック関連製品も対象カテゴリーに含まれる。
【参考リンク】
petgugu(ペットグーグー)(外部)
2022年設立のペットテクノロジー企業。シンガポールと深圳に本社を置き、AIとロボティクスを活用したスマートペット製品を開発している。
CES 2026(シーイーエス2026)(外部)
世界最大級の家電・技術見本市。2026年は1月6日から9日まで、米国ラスベガスのベネチアン・エキスポで開催される。
Petivity(ペティビティ)(外部)
Purinaが提供するスマート猫用トイレモニタリングシステム。尿路感染症、糖尿病、腎臓病の早期検知機能を備えている。
モルガン・スタンレー(外部)
米国の大手投資銀行・証券会社。市場調査部門が定期的にペット産業を含む様々な業界の成長予測を発表している。
【参考記事】
Smart Cat Litter Box Market Size, Share, 2025-2030 Outlook – Mordor Intelligence(外部)
スマート猫トイレ市場が2025年の10.9億ドルから2030年に25.6億ドルへ成長すると予測。年平均成長率は18.6%。
Pet Tech Market Size, Industry Share, Trends, Global Report 2025-2030 – Arizton(外部)
ペットテック市場は2024年の76.3億ドルから2030年に172.5億ドルへ成長見込み。年平均成長率14.56%。
Pet tech in 2025: Insights from Pet Connect Summit and CES – Pawprint Digital(外部)
米国ペット産業の支出が2025年に1,570億ドルに達すると予測。AIを活用した診断ツールが予防医療を変革している。
Smart Cat Litter Box Market Report 2025 – Research and Markets(外部)
2024年の10.6億ドルから2025年に11.9億ドルへ成長。米国では2023年に86.9百万世帯がペットを飼育している。
Automatic Self-cleaning Cat Litter Box Market Growth Analysis – Grand View Research(外部)
自動清掃猫トイレ市場は2024年の5.593億ドルから2030年に8.696億ドルへ成長予測。年平均成長率7.8%。
Purina Petivity Smart Litter Box Monitor System Voted Product of the Year 2025 – Purina News Center(外部)
PetivityがProduct of the Year 2025を受賞。40,000人の米国消費者による投票で選出された。
【編集部後記】
ペットの健康状態を日々のデータから把握できる時代が、すぐそこまで来ています。みなさんは、愛猫や愛犬の体調変化にどれくらい気づけているでしょうか。猫は不調を隠す習性があるため、気づいた時には手遅れということも少なくありません。
今回ご紹介したような統合型のペットテックは、そんな「見えない不調」を可視化する可能性を秘めています。一方で、プライバシーやデータセキュリティ、そして何より導入コストという現実的な課題も存在します。テクノロジーがペットとの暮らしをどう変えていくのか、みなさんはどう感じられますか。CES 2026での実際の展示が今から楽しみです。































