SpoLive Interactive株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:岩田裕平)は2025年12月30日、スポーツ団体向けクラウドサービス「SpoLive」において、AIスポーツ記者機能の提供を開始したと発表した。本機能は大規模言語モデル(LLM)を活用し、SpoLive内に記録された試合データをもとに試合レポート記事の下書きを数十秒で生成する。
従来は数時間から数日を要していた作成時間を大幅に短縮できる。無料プランから利用可能で、月額980円のプレミアムプランでは文体の指定や選手のストーリーなどのカスタマイズが可能となる。三重ホンダヒート、レッドハリケーンズ大阪、慶應義塾體育會蹴球部、名古屋中学校・高等学校ラグビー部、三重高等学校サッカー部、日本フライングディスク協会、Asia Pacific Lacrosse Unionなどが既に導入している。同社は2020年10月設立のスタートアップ企業である。
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AIスポーツ記者が試合レポート記事を1クリックで作成 | SpoLive Interactive株式会社のプレスリリース

【編集部解説】
このニュースは、生成AIがスポーツジャーナリズムの現場に本格的に浸透し始めたことを示す重要な事例です。特に注目すべきは、プロフェッショナルなメディアではなく、リソースが限られたアマチュアスポーツや学生スポーツの現場にこそ、この技術が大きな価値をもたらすという点でしょう。
従来、プロスポーツの試合には専門の記者が張り付いて詳細なレポートを作成していましたが、学生スポーツやアマチュアスポーツでは、そもそも試合を記録する人的リソースが不足していました。結果として、多くの選手の活躍が記録されないまま埋もれてしまうという課題が存在していたのです。
SpoLiveのアプローチが興味深いのは、単にテキスト生成AIを導入したのではなく、既に蓄積されている構造化されたスポーツデータを基盤としている点です。スコア、選手名、プレーの記録といったデータがあれば、LLMはそこから自然な文章を紡ぎ出すことができます。これは、AIが「想像」で記事を書くのではなく、事実に基づいた記述を行えることを意味します。
多様な発信形式への対応も実用性を高めています。SNSの短い投稿からニュースリリースまで、同じ試合データから用途に応じた文章を生成できるため、スタッフは媒体ごとに一から書き直す必要がありません。
ただし、潜在的な課題も存在します。AIが生成した文章には、人間のライターが持つ「試合の空気感」や「選手の表情から読み取れる感情」といった、データ化されていない要素が欠落する可能性があります。名古屋中学校・高等学校のコメントにもあるように、現状では「下書き」として機能しており、最終的な編集は人間が行う必要があるでしょう。
より長期的な視点では、この技術がスポーツジャーナリズムの民主化を促進する可能性があります。これまで大手メディアしか扱えなかった質の高い情報発信が、小規模なチームでも実現できるようになれば、スポーツファンが接触できる情報の量と質は飛躍的に向上します。
一方で、プロのスポーツライターにとっては、単なる事実の羅列では差別化できない時代が到来したことを意味します。人間のライターに求められるのは、データには表れない洞察や、歴史的文脈の理解、そして選手の内面に迫る取材力といった、より高度な価値創造になるでしょう。
【用語解説】
大規模言語モデル(LLM)
大量のテキストデータを学習した人工知能モデルで、自然言語の理解と生成が可能。ChatGPTなどに代表される技術であり、文脈を理解して人間のような文章を生成できる。SpoLiveのAIスポーツ記者機能も、このLLM技術を活用して試合データから自然な文章のレポートを自動生成している。
構造化データ
あらかじめ定義された形式で整理されたデータのこと。スポーツの試合では、得点、選手名、プレー時刻、得点方法などが該当する。これらのデータは数値や分類として記録されるため、AIが処理しやすく、文章生成の基盤となる。非構造化データ(写真や映像など)と対比される概念である。
【参考リンク】
SpoLive公式サイト(外部)
スポーツ団体向けクラウドサービス。スコア管理、試合速報、ファン向け情報発信などを一体的に効率化できるプラットフォームを提供している。
SpoLive Interactive株式会社(外部)
2020年10月設立のスタートアップ企業。ファンとアスリートやチームをデジタルの力で繋げ、世界中のスポーツチームをエンパワーメントする。
三重ホンダヒート公式サイト(外部)
本田技研工業のラグビーチームでJAPAN RUGBY LEAGUE ONE DIVISION 1に所属。三重県鈴鹿市を拠点に活動している。
レッドハリケーンズ大阪公式サイト(外部)
大阪を拠点とするラグビーチームでJAPAN RUGBY LEAGUE ONE DIVISION 2に所属。「大阪UP」をスローガンに地域密着型の活動を展開。
【参考記事】
How a local paper in Argentina uses AI to publish hundreds of sports pieces a month(外部)
アルゼンチンの地方紙がUnited Robotsの技術でサッカー試合レポートを自動生成している事例を紹介している。
Breaking down ESPN’s decision to use AI to write some game stories(外部)
2024年8月、ESPNが女子サッカーとラクロスの試合レポートにAI生成を導入した決定について分析している。
Automated sports news in any team sport | United Robots(外部)
スウェーデンのUnited RobotsによるAIスポーツ記事生成サービスの詳細。多様な競技に対応し自動記事を生成する。
AI and sports journalism | Sports Media Guy(外部)
APは2012年からAIによる自動記事生成を使用。人間のジャーナリストにしか書けない深い洞察の重要性を強調している。
Large Scale Generative AI Text Applied to Sports and Music(外部)
IBMとESPNが共同開発したAIコメンタリーシステムが2023年の主要大会で展開され9000万人のファンに届けられた。
The Use of Artificial Intelligence (AI) in Sports Journalism(外部)
スポーツジャーナリズムにおけるAI使用の倫理的課題を論じた記事。雇用喪失の懸念や人間の直感の再現可能性を指摘。
LLM-Commentator: Novel fine-tuning strategies of large language models(外部)
オープンソースLLMをドメイン固有データでファインチューニングしサッカー試合データからリアルタイム解説を生成する研究。
【編集部後記】
皆さんの地元のスポーツチームは、試合のたびに詳細なレポートを発信できているでしょうか。AIが記事の下書きを担うことで、これまで光が当たりにくかった試合にも記録が残るようになります。
一方で、データには表れない選手の想いや試合の空気感は、やはり人間にしか伝えられません。このニュースをきっかけに、皆さんが応援するチームの情報発信がどう変わっていくのか、そしてAIと人間がどう役割を分担すべきなのか、ぜひ一緒に考えてみませんか。































