フロンティアエックスは2026年1月、CESでペット追跡ロボット「ヴェックス」を発表した。ヴェックスは小型球体の自律ロボットで、視覚認識技術を使って家の中で猫や犬を追跡し、低いアングルから撮影する。
収集した映像はAIが自動編集し、シェア可能な動画にまとめる。同社はまた、人間向けコンパニオンロボット「オーラ」も披露した。オーラはヴェックスより大型で、円形スクリーンを搭載し、大規模言語モデルを活用して表情やボディランゲージから気分を読み取り、会話を行う。
両製品は現在開発中で、フロンティアエックスは6か月以内に予約注文を開始する予定だが、価格は未発表である。同社はウェブサイトを持たず、インスタグラムページのみ運営している。
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FrontierX’s Vex Robot Becomes Your Pet’s Personal Cameraman
【編集部解説】
フロンティアエックスが発表したヴェックスとオーラは、家庭用ロボティクスにおける重要な転換点を示しています。従来のペット見守りカメラが「観察」に留まっていたのに対し、ヴェックスは「追跡」「撮影」「編集」という一連のプロセスを自律的に実行します。これは、ロボットが単なるセンサーではなく、意味のあるコンテンツを生成する「クリエイター」へと進化したことを意味します。
特筆すべきは、AIによる映像編集機能です。ペットの1日の行動を記録するだけなら既存のカメラでも可能ですが、膨大な映像から「価値ある瞬間」を抽出し、物語として再構成する作業は、これまで人間の解釈と判断を必要としてきました。ヴェックスがこのプロセスを自動化することで、ペットとの時間的距離を感じる飼い主に、消化しやすい形で愛するペットの日常を届けることができます。
一方で、いくつかの実用的な課題も存在します。視覚認識技術が異なる毛色のペットや照明条件でどの程度機能するのか、バッテリー持続時間はどの程度なのか、そして何より、家の中を自律移動する小型ロボットが子供やペット自身にとって安全なのか。これらの詳細は、製品が実際に市場に出るまで不明です。
フロンティアエックスという企業自体も興味深い存在です。公式ウェブサイトすら持たず、インスタグラムページのみで存在を示すこのスタートアップが、6か月以内の予約開始を宣言している点は、CESの典型的な戦略と言えます。大きなビジョンを示し、詳細は後から詰めるというアプローチです。
ペットテック市場は急成長しており、複数の調査会社によると、2030年までに170億ドルから240億ドル規模に達すると予測されています。ペットを家族の一員と捉える「ペットヒューマナイゼーション」の潮流が、この市場を牽引しています。米国では68%の世帯がペットを飼育しており、飼い主の可処分所得の増加とともに、テクノロジーへの投資意欲も高まっています。
オーラについても触れておく必要があります。こちらは人間向けのコンパニオンロボットとして位置づけられ、表情やボディランゲージから感情を読み取り、大規模言語モデルを活用して会話を行います。ペット向けのヴェックスと人間向けのオーラという2つの製品ラインは、フロンティアエックスが「コンパニオンシップ」という普遍的なテーマに焦点を当てていることを示しています。
今回の発表で最も重要なのは、AIが「機能」ではなく「製品の核心」となった点です。自律移動するロボットを作ることは、もはや十分ではありません。真の価値は、収集したデータをどう解釈し、どのような形でユーザーに還元するかにあります。ヴェックスの場合、それは「編集された物語」という形で実現されています。
ただし、慎重に見守る必要もあります。フロンティアエックスは実機のデモ映像を公開しておらず、AI編集の品質は未知数です。また、価格も未発表であり、製品の成功はこの価格設定に大きく依存するでしょう。果たしてペット飼い主たちは、自律ロボットを家に迎え入れる準備ができているのか。その答えは、予約注文の数字が教えてくれるはずです。
【用語解説】
視覚認識技術
カメラで撮影した画像や映像から、物体の種類、位置、動きなどを識別する技術。ヴェックスの場合、ペットの姿を認識して追跡するために使用される。コンピュータビジョンとも呼ばれ、AI技術の進化により精度が大幅に向上している。
大規模言語モデル(LLM)
膨大なテキストデータで学習した自然言語処理のAIモデル。文章の生成、翻訳、質疑応答などが可能で、オーラはこれを活用して人間と会話を行う。ChatGPTなどが代表例だ。
ペットヒューマナイゼーション
ペットを家族の一員として扱い、人間と同等の扱いをする傾向のこと。この潮流により、ペットの健康管理やエンターテインメントへの投資が増加し、ペットテック市場の成長を牽引している。
自律ロボット
人間の操作なしに、センサーやAIを使って周囲の環境を認識し、自ら判断して行動するロボット。ヴェックスは視覚認識でペットを追跡し、自律的に移動する。
【参考リンク】
CES(Consumer Electronics Show)(外部)
世界最大級のテクノロジー見本市。2026年は1月6日から9日まで開催された。
Mordor Intelligence – Pet Tech Market Report(外部)
2025年に125億ドル、2030年には238億ドルに達すると予測。
Grand View Research – Pet Wearable Market(外部)
2023年に27億ドル、2030年には69億ドルに達すると予測する調査レポート。
【参考記事】
Global Pet Tech Market Poised to Surpass USD 23.8 Billion by 2030(外部)
2030年までに238億ドル規模へ成長。年平均成長率は13.87%と予測。
FrontierX Unveils Vex and Aura AI Robots for Pet Care at CES 2026(外部)
バッテリー寿命8時間、価格約200ドルと推測。安全機能の詳細を報告。
AI-Powered Vex Pet Robot Debuts at CES 2026(外部)
手のひらサイズの球体で複数カラーオプション。6か月以内に予約開始予定。
Pet Tech Market Global Forecast Report 2025-2030(外部)
2024年の76.3億ドルから2030年には172.5億ドルに成長と予測。
Pet Wearable Market Size, Share & Growth Report, 2030(外部)
北米が市場の38%を占め、米国では68%の世帯がペットを飼育。
Pet Tech Market Size, Industry Share, Trends, Global Report(外部)
米国の68%の世帯がペット飼育。IoTとAI統合の詳細を解説。
【編集部後記】
ペットの日常を自動で記録し、物語として編集してくれるロボット。興味深いアイデアだと思う一方で、私たち編集部も少し複雑な気持ちになりました。愛するペットとの時間を、テクノロジーに委ねることの意味とは何でしょうか。もしかすると、忙しい日々の中でペットと過ごせない時間を埋める手段として、ヴェックスのようなロボットは心の支えになるのかもしれません。あるいは、人間とペットの関係性そのものが変わっていく兆しなのかもしれません。
みなさんは、自宅に自律ロボットを迎え入れることに抵抗を感じますか。それとも、新しいコンパニオンとして受け入れられるでしょうか。ぜひ、みなさんの率直な感想を聞かせていただければと思います。
































