会議室が予約されているのに誰もいない「ゴーストミーティング」、複数の会議ツールに戸惑う日常——そんなオフィスの小さなストレスが、AIの「先回り」で解消される時代が来ました。Zoomが2026年2月3日に発表したZoom Spacesの新機能は、物理空間そのものを「意思を持つ存在」に変える野心的な試みです。
Zoomは2026年2月3日、AIファーストな柔軟なワークプレイスプラットフォームであるZoom Spacesに新しいエージェンティックAI機能を追加すると発表した。新機能には、Workspace Reservationでのプロアクティブな会議室推奨機能と、Zoom Roomsの強化された音声コマンドが含まれる。
音声コマンドでは、AI CompanionにZoom Whiteboardの作成やアクションアイテムの取得を依頼できる。これらの機能は2026年2月後半に提供予定である。また、Zoom for Cisco Roomsにより、Ciscoハードウェア上でZoom Meetings体験を実行可能になる。
Vizrtは、ZoomのISV Exchangeプログラムに参加し、AVoIPおよびブロードキャストテクノロジーを活用したプロフェッショナルグレードの制作ツールを提供する。さらに、Zoom Enhanced Mediaは60fpsの高フレームレートビデオと複数の同時HD参加者ストリームをサポートする。
モバイル版Workspace Reservationも2026年2月後半に提供予定である。
From:
Zoom Spaces ushers in the era of the intelligent office with agentic AI


【編集部解説】
今回のZoomの発表は、単なる機能追加ではなく、オフィスという物理空間そのものをAIで「意思を持つ存在」に変えようとする野心的な試みです。
キーワードは「エージェンティックAI(agentic AI)」。これは従来の「問いかけに答えるAI」から、「自ら状況を判断し、先回りして行動するAI」への進化を意味します。2026年は、この技術が実験段階からエンタープライズグレードの実用段階に移行する転換点と位置づけられています。
ハイブリッドワークの現場では、「ゴーストミーティング」と呼ばれる問題が深刻化していました。これは会議室が予約されているのに誰も使わない状態を指し、オフィススペースのROI(投資対効果)を著しく低下させます。Zoom Spacesの新機能は、AI Companionが予約状況や参加者の位置情報を分析し、自律的に最適な会議室を推奨することで、この無駄を削減します。
音声コマンドの強化も注目すべきポイントです。会議中に「AI Companion、ホワイトボードを作成して」と話しかけるだけで、議論の内容がリアルタイムで可視化される体験は、物理空間とデジタルツールの境界を曖昧にします。これにより、テクノロジーに不慣れな参加者でも、会議の生産性向上に貢献できる環境が整います。
Cisco Roomsとの統合は、企業のハードウェア投資を保護しながら、Zoomの豊富な機能を利用できる柔軟性を提供します。従来のSIP/H.323接続よりも完全な機能セットが利用可能になり、既存のインフラを無駄にせずDXを推進できる点は、IT部門にとって大きなメリットです。
一方で、エージェンティックAIの導入には注意点もあります。自律的に判断を下すシステムだからこそ、ガバナンスと人間による監視体制の構築が不可欠です。特にプライバシーやデータセキュリティの観点から、AIがどのような情報にアクセスし、どのような基準で判断を下しているのか、透明性を確保する必要があります。
Enhanced Mediaの60fps対応は、ゲームや放送業界といった高精細な映像が求められる分野での活用を見据えています。1080p 60fpsの参加者ストリームにより、従来のビジネス会議の枠を超えた用途が広がります。
この発表が2026年2月という時期に行われた背景には、企業の年度予算策定のタイミングを狙った戦略的な意図も読み取れます。ハイブリッドワーク環境への投資判断を迫られている企業にとって、物理空間の最適化とデジタルツールの統合は喫緊の課題であり、Zoomはその解決策を提示することで市場でのポジションを強化しようとしています。
【用語解説】
エージェンティックAI(Agentic AI)
ユーザーの指示を待つのではなく、状況を自律的に判断して行動するAIの形態。従来の対話型AIが「質問に答える」役割だったのに対し、エージェンティックAIは「問題を見つけて解決策を提案・実行する」能力を持つ。2026年はこの技術が実用段階に入る転換点とされている。
ゴーストミーティング
会議室が予約されているにもかかわらず、実際には誰も使用していない状態を指すハイブリッドワーク環境特有の問題。オフィススペースの利用効率を低下させ、他の従業員が必要な時に会議室を使えない事態を引き起こす。
AVoIP(Audio Video over Internet Protocol)
音声と映像をIPネットワーク経由で伝送する技術。従来のアナログ接続やSDI(Serial Digital Interface)と比較して、柔軟な配信と高品質な伝送が可能になる。放送業界やプロフェッショナルな映像制作現場で採用が進んでいる。
ISV Exchange
Independent Software Vendor(独立系ソフトウェアベンダー)向けのパートナープログラム。Zoomのプラットフォーム上で、サードパーティ企業が専門的なソリューションを提供できる仕組み。顧客はZoomを通じて直接サービスを購入できるため、調達プロセスが簡素化される。
60fps(frames per second)
1秒間に60フレームの映像を表示する高フレームレート。従来のビデオ会議で一般的な30fpsと比較して、動きの滑らかさが大幅に向上する。ゲーム実況や製品デモンストレーション、スポーツ映像など、動きの多いコンテンツで効果を発揮する。
【参考リンク】
Zoom AI Companion(外部)
Zoomの全製品に組み込まれたAIアシスタント。会議の要約作成、チャットメッセージの下書き支援、スケジュール調整など、業務効率化をサポートする。
Vizrt(外部)
ノルウェー本社のビジュアルストーリーテリング技術企業。放送局やメディア企業向けに、リアルタイムグラフィックス、バーチャルスタジオ、ライブプロダクション技術を提供。
Cisco Webex Rooms Devices(外部)
Ciscoが提供する会議室向けコラボレーション端末シリーズ。高品質なカメラ、マイク、スピーカーを統合したオールインワンデバイス。
【参考記事】
Zoom Spaces now includes agentic, space management features(外部)
エンタープライズコミュニケーション専門メディアNo Jitterによる分析記事。Zoom Spacesのエージェンティック機能が、ハイブリッドワーク環境における会議室管理の課題をどのように解決するかを解説。
Zoom Spaces Enjoys Agentic AI Upgrade(外部)
UC Todayによる詳細レポート。ゴーストミーティング問題への対応や、音声コマンド機能の実用性について、業界の視点から評価している。
Agentic AI In 2026: Four Predictions For Business Leaders(外部)
Forbes誌による2026年のエージェンティックAIトレンド予測。ビジネスリーダー向けに、自律的なAIシステムが組織にもたらす変革と、導入時の注意点を4つの予測として提示。
Agentic AI trends 2026: Future of agentic AI innovations(外部)
2026年のエージェンティックAIの技術トレンドを包括的に分析。実験段階から実用段階への移行期にある現状と、エンタープライズ環境での採用が加速する背景を解説。
What Is Agentic AI in Enterprise Operations 2026 Outlook(外部)
エンタープライズ運用におけるエージェンティックAIの2026年展望。自律的判断を下すシステムにおけるガバナンスとセキュリティの重要性を強調している。
【編集部後記】
皆さんのオフィスでは、会議室が空いているのに予約だけが入っていて困った経験はありませんか?あるいは、複数の会議ツールやデバイスの違いに戸惑ったことは?AIが「待つ」のではなく「先回りする」エージェンティックAIは、こうした小さなストレスを解消する可能性を秘めています。
ただ、自律的に判断するシステムだからこそ、どこまで任せるべきか、プライバシーはどう守られるのか、といった問いも浮かびます。
便利さと引き換えに何を手放すのか。皆さんの職場では、この技術をどう活かせそうでしょうか?ぜひ一緒に考えてみたいです。






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