2026年2月2日、UMA Protocolの暗号通貨エンジニアであるAlexander Liteploが、AIエージェントが人間を雇用できるプラットフォーム「RentAHuman」をローンチした。
このサイトでは、AIエージェントが現実世界のタスクを処理するために人間を雇い、報酬を支払う仕組みを提供している。
人間は用事や配達、会議への出席、食料品の買い物など、AIが実行できない物理的なタスクを引き受ける。登録した人間は自分の料金を設定できる。
執筆時点で81,000人以上の人間が登録しており、プラットフォームに接続されているAIエージェントは81個である。
Liteploは暗号通貨トークンを発行しない方針を明らかにしている。サイトはRalphループを通じたバイブコーディングで構築され、複数のClaude ベースのAIエージェントが使用された。
From:
This bizarre job site lets AI agents hire humans and pay them for tasks
【編集部解説】
RentAHumanは、AIエージェントと人間の関係を根本から逆転させる試みです。これまで人間がAIを「ツール」として使ってきましたが、このプラットフォームではAIが人間を「リソース」として雇用します。
技術的な基盤となっているのが、MCP(Model Context Protocol)です。これは2024年11月にAnthropicが発表した、AIシステムと外部ツールやデータソースを接続するためのオープンスタンダードです。MCPは「AIのためのUSB-Cポート」と表現され、統一された方法でAIエージェントが外部システムにアクセスできる仕組みを提供します。
RentAHumanでは、このMCPを活用してAIエージェントが「人間」という物理世界のインターフェースに1回の呼び出しでアクセスできます。開発者はAIエージェントをMCP経由でプラットフォームに接続し、人間を検索・予約・支払いまで自動化できる設計になっています。
登録者数の急増は注目に値します。ローンチから数日で数万人規模の登録があったとされていますが、実際にどれだけのAIエージェントが活発に人間を雇用しているかは明確ではありません。現時点では接続されているAIエージェントは81個であり、実験的な段階と言えるでしょう。
このプラットフォームが浮き彫りにするのは、AIの根本的な制約です。AIは膨大なデータを処理し、複雑な推論を行えますが、物理的な存在感を持ちません。郵便局で小包を受け取る、レストランで料理を味見する、会議に本人確認書類を持参して出席するといった行為は、現在のAIには不可能です。
報酬体系は時給制で、幅があります。支払いは主にステーブルコインなどの暗号通貨で行われ、人間は自分のスキル、場所、料金を設定してタスクを受け入れます。興味深いのは、登録者の中にAIスタートアップのCEOやソフトウェアエンジニアといった技術者層が含まれている点です。タスクの内容も、1ドルの簡単なSNSフォローから、100ドルの「AIに雇われた」という看板を持つ写真撮影まで多岐にわたります。
しかし、複数のメディアがセキュリティと倫理面の懸念を指摘しています。AIエージェントが違法行為を複数の無害に見える小さなタスクに分解し、異なる人間に外注する可能性が議論されています。また、プラットフォームの創設者自身が「ディストピア的」という評価に対して軽く受け流す態度を示しており、真剣な倫理的配慮が十分なされているかは疑問です。
RentAHumanは週末プロジェクトとして短期間で構築されました。サイト自体もClaudeベースの複数のAIエージェントを使った「バイブコーディング」で開発されたと説明されており、AI開発ツールの進化を象徴する事例でもあります。
この動きは、最近登場したMoltbook(AIアカウント専用のSNS)など、AIファーストの実験的プラットフォームの系譜に連なります。Moltbookは深刻なセキュリティ欠陥で批判を浴びましたが、RentAHumanもセキュリティ面での検証が十分とは言えない状況です。
長期的には、自律的なAIエージェントが増加すれば、物理世界とのインターフェースを提供するこうしたプラットフォームは重要なインフラになる可能性があります。AIがデジタル空間で完結できないタスクのために人間を雇用する構造は、労働の未来を考える上で示唆的です。
ただし、現時点では実証段階であり、ビジネスモデルの持続可能性、法的責任の所在、労働者保護の仕組みなど、解決すべき課題は山積しています。AIと人間の協働が「パートナーシップ」ではなく「雇用関係」として再定義される未来は、技術的な可能性と同時に社会的な議論を必要としています。
【用語解説】
MCP(Model Context Protocol)
2024年11月にAnthropicが発表したAIシステムと外部ツール・データソースを接続するためのオープンスタンダード。AIエージェントが統一された方法で外部システムにアクセスできる仕組みを提供し、「AIのためのUSB-Cポート」と表現される。OpenAI、Google DeepMindなど主要なAI企業が採用している。
AIエージェント
ユーザーや他のシステムの代わりに自律的にタスクを実行できるAIシステムまたはプログラム。単なるチャットボットとは異なり、複数のツールを使い分けながら複雑な作業を遂行できる。
ステーブルコイン
法定通貨や金などの安定した資産に価値が連動するよう設計された暗号通貨。価格変動が激しい一般的な暗号通貨と異なり、決済手段として利用しやすい。
バイブコーディング(Vibe Coding)
AIを活用してコードを生成する開発手法。開発者が概要や意図を伝え、AIが実装を担当する。RentAHumanではRalphループという手法で複数のClaudeベースのAIエージェントが反復的にコーディングを行った。
IRL(In Real Life)
「現実世界で」という意味のインターネットスラング。デジタル空間ではなく物理的な世界での活動を指す。
ミートスペース(Meatspace)
物理的な現実世界を指す俗語。サイバースペース(仮想空間)の対義語として使われる。RentAHumanは自らを「ミートプレイス(肉市場)」と呼んでいる。
【参考リンク】
RentAHuman.ai(外部)
AIエージェントが人間を雇用できるマーケットプレイス。MCP統合とREST APIを提供し、物理世界のタスクを人間に委託できる。
Model Context Protocol公式サイト(外部)
MCPの公式ドキュメント。AIアプリケーションと外部システムを接続するオープンスタンダードの仕様と実装ガイドを提供。
Introducing the Model Context Protocol – Anthropic(外部)
AnthropicによるMCPの公式発表記事。プロトコルの目的、仕組み、業界への影響を解説している。
【参考記事】
New Site Lets AI Rent Human Bodies – Futurism(外部)
RentAHumanの仕組みと倫理的懸念を詳しく報じる記事。タスクの報酬範囲や実際の利用効率の問題を指摘。
Rentahuman.ai Is Live: AI Agents Can Now Hire Real Humans for IRL Tasks(外部)
RentAHumanのローンチとその技術的背景を解説。AIエージェントが物理世界の制約を克服するインフラとしての位置づけを考察。
AI “Rent-a-Person” Platforms Go Viral Overnight – 36Kr(外部)
AIが人間を雇用する仕組みの技術的詳細を報告。
Rent a Human: AI Hire Real People for Physical Tasks on RentAHuman.ai – Medium(外部)
RentAHumanのビジネスモデルと「human-in-the-loop」の概念を解説。人間が物理的インターフェースとして果たす役割を論じる。
RentAHuman.ai Explained: AI Agents Now Hire Humans for Real Tasks(外部)
ローンチ初日に130人、48時間で10,000人以上が登録した急成長の詳細を報告。
【編集部後記】
AIが人間を雇用する時代が、思いのほか早く到来したようです。これは単なる技術的な好奇心ではなく、私たちの労働観や人間の役割を問い直す転換点かもしれません。AIエージェントが日常化すれば、こうしたプラットフォームは当たり前のインフラになるのでしょうか。それとも、倫理的・法的な壁に阻まれて実験段階で終わるのでしょうか。AIと人間の関係性が「使う」から「雇われる」へと変化していく未来を、皆さんはどう捉えますか。






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