YouTubeは2026年2月4日、自動吹き替えツールの新機能を発表した。これはプロダクトマネージャーのチャンドラレカ・モタティが公式ブログで明らかにしたものである。
自動吹き替えは27言語に拡張され、すべてのユーザーが利用可能になった。2025年12月には1日平均600万人以上が自動吹き替えコンテンツを少なくとも10分間視聴した。クリエイターの感情とエネルギーを捉えるExpressive Speechを8言語(英語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、インドネシア語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語)で全YouTubeチャンネルに導入した。視聴者向けにPreferred Language settingを追加し、言語選択の好みを指定できるようになった。
また、話者の唇の動きを翻訳音声に合わせるLip Sync機能もパイロットテスト中である。クリエイター向けにはAutomatic Smart Filteringを導入し、音楽や無音のブログなど吹き替えが不適切な動画を自動認識する。
From:
Unlocking a global audience with auto dubbing
【編集部解説】
YouTubeの自動吹き替え機能が大きく進化しました。この機能の歴史を振り返ると、2023年初頭にMrBeastやMark Roberなど限定的なクリエイター向けにマルチオーディオ機能のパイロットが開始され、2024年9月のMade on YouTubeイベントで正式に自動吹き替え機能として発表されました。その後、2024年12月に知識系コンテンツを中心に数十万チャンネルへ展開、2025年4月にはYouTube Partner Programのクリエイターへ拡大し、同年9月には数百万のクリエイターが利用可能となりました。今回の発表は、その延長線上にある大きな進化といえます。
単なる翻訳を超え、クリエイターの感情やエネルギーまで伝える「Expressive Speech」、そして唇の動きまで同期させる「Lip Sync」技術のテスト。これらは、言語の壁を越えた真のグローバルコミュニケーションを実現しようとする試みです。注目すべきは、YouTubeが公表した「12月だけで600万人以上が1日平均10分以上の吹き替えコンテンツを視聴した」という数字です。これは単なる機能追加ではなく、すでに多くの視聴者が日常的に使う実用段階に達していることを示しています。
競合との比較も興味深い点です。Metaはこの自動吹き替え機能について、2023年にSeamlessM4Tなどの研究成果を発表していましたが、実際にInstagramとFacebookのReelsでサービスを開始したのは2025年8月でした。当初は対応言語が英語とスペイン語のみでしたが、その後ヒンディー語やポルトガル語に加え、ベンガル語、タミル語、テルグ語など9言語程度になっています。一方、YouTubeは研究段階を飛び越えて実用展開を優先し、わずか1年余りで27言語対応を実現しています。このスピード感は、プラットフォームの規模と技術投資の賜物といえるでしょう。
27言語への拡張は、英語圏や主要言語だけでなく、より多様な地域の声を世界に届ける可能性を開きます。クリエイターにとっては、言語の制約なく世界中の視聴者にリーチできる時代が到来したといえるでしょう。実際、パイロット段階では、マルチオーディオトラックをアップロードしたクリエイターの視聴時間の25%以上が非主要言語からのものだったと報告されています。
自動フィルタリング機能により、音楽や無音の動画など吹き替えが不適切なコンテンツは自動的に除外され、コンテンツの真正性も保たれます。また、元動画の検索アルゴリズムに悪影響を与えないという設計は、クリエイターの懸念に配慮したものです。
この技術は、情報のグローバル化を加速させる一方で、各言語圏の独自性や文化的ニュアンスをどこまで保持できるかという新たな課題も提示しています。YouTubeは現状の技術が「完璧ではない」と認めつつ、Google DeepMindやGoogle Translateチームと連携してさらなる改善を進めています。
【用語解説】
Expressive Speech
単なる言葉の翻訳だけでなく、話者の感情、抑揚、話し方のトーンまで再現しようとする技術。英語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、インドネシア語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語の8言語で全チャンネルに展開された。
Lip Sync技術
吹き替え音声に合わせて映像内の話者の唇の動きを微調整する技術。いわゆる「口パク」の違和感を軽減し、あたかもその言語で話しているかのような自然な視聴体験を目指す。現在パイロットテスト中。
Automatic Smart Filtering
動画レベルで吹き替えの適切性を自動判断する機能。音楽や無音のブログなど、吹き替えが不適切なコンテンツを自動的に除外し、コンテンツの真正性を保つ。
【参考リンク】
YouTube Auto Dubbing – Supported Languages(外部)
YouTubeの自動吹き替え機能がサポートする27言語の詳細と利用方法を説明する公式サポートページ
Preferred Language Setting – YouTube Help(外部)
視聴者が言語設定を管理できるPreferred Language機能の使い方を解説する公式ヘルプページ
【参考動画】
【参考記事】
How two high school rivals became co-creators of YouTube’s AI-powered dubbing tool(外部)
YouTubeの自動吹き替え技術を共同開発した2人の高校時代のライバルの物語を紹介する記事
YouTube’s new auto-dubbing feature is now available for knowledge-focused content(外部)
2024年12月の自動吹き替え機能展開開始時の詳細を報じるTechCrunchの記事
YouTube’s multi-language audio feature for dubbing videos rolls out to all creators(外部)
2025年9月の全クリエイター向け展開について報じる記事。視聴時間の25%以上が非主要言語からという実績データを紹介
How Instagram and YouTube Actually Do AI Dubbing: A Technical Deep Dive(外部)
YouTubeとMetaの自動吹き替え技術の比較分析と、それぞれの展開戦略の違いを詳しく解説
【編集部後記】
言語の壁がなくなった世界で、あなたはどんなコンテンツを見てみたいでしょうか。日本語圏に閉じていた情報空間が、27言語へと一気に広がります。感情まで伝わるExpressive Speechや、唇の動きまで同期するLip Sync技術は、まるで母語で語られているかのような体験を生み出そうとしています。
クリエイターにとっても視聴者にとっても、この変化は新たな出会いの扉を開くはずです。あなたが次に出会うお気に入りのチャンネルは、もしかしたら地球の裏側から届けられるのかもしれません。






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