2026年2月12日、中国のAI企業MiniMaxは、フラグシップ・プログラミング大規模言語モデル「MiniMax M2.5」を正式にリリースした。
同モデルは「Agentシナリオ向けにネイティブ設計された世界初のプロダクションレベルモデル」と位置づけられている。ベンチマーク上ではClaude Opus 4.6に迫る性能を示しており、PC・アプリ・クロスプラットフォームのフルスタック開発に対応する。アクティベーションパラメータは10Bで、スループットはLightning版で100 TPS(公称)である。
リリース当日、MiniMaxの株価は日中最大で20%以上上昇し、日中高値を基準とすると時価総額は1800億香港ドルを超えたとみられる(翌2月13日の終値は680香港ドルで、前日比+15.7%**と報じられている)。智譜(Zhipu)などとの「AIトップ銘柄」争いにおける同社の地位が強まった。
【編集部解説】
MiniMax M2.5の登場は、近年、効率性を重視するモデル設計が増えている流れを象徴する出来事といえるでしょう。
まず、元記事にある「Claude Opus 4.6と直接競合」という表現については、やや補足が必要です。MiniMax公式ブログおよび複数の第三者評価によると、SWE-Bench Verifiedスコアは80.2%で、Claude Opus 4.6の80.8%に対して0.6ポイント差に迫っています。一方、独立した評価機関OpenHandsのテストでは、M2.5の実力は「Claude Sonnetに基本的に匹敵するレベル」と評価されており、Opusと完全に同等というよりは、フロンティアモデルの一角に食い込んだという位置づけが正確でしょう。
技術面で注目すべきは、230Bの総パラメータのうち実際に推論時に使用されるのは10Bのみという、Mixture of Experts(MoE)アーキテクチャの採用です。元記事では10Bのアクティベーションパラメータのみが紹介されていますが、230Bの総パラメータ数を併せて理解することで、この設計の本質が見えてきます。必要な「専門家」だけを都度選択的に起動することで、高い性能を維持しながら推論コストを劇的に下げるという戦略です。
また、M2.5はM2.5(標準版、50 TPS)とM2.5-Lightning(高速版、100 TPS)の2バージョンで提供されています。元記事の「100 TPS」はLightning版の公称スペックであり、Artificial Analysisによる実測値では80.8 TPSとやや下回るデータもあります。性能は両バージョンで同一ですが、速度と価格が異なります。Lightning版の価格は公式ブログでは入力100万トークンあたり0.3ドル(ただしOpen PlatformのPay-as-you-go価格表では0.6ドル)、出力100万トークンあたり2.4ドルで、公式は、100 TPSで1時間連続稼働した場合に約1ドルと説明しています。これはClaude Opus 4.6と比較して10分の1から20分の1の水準です。
元記事が触れていない重要な点として、M2.5はHugging Face上でオープンウェイト(修正MITライセンス)として公開されている点が挙げられます。商用利用時にUIへの「MiniMax M2.5」表示義務が付帯する条件付きですが、プライベートクラスタへのデプロイやファインチューニングが可能です。これにより、企業が自社環境でカスタマイズして運用するという選択肢が生まれます。
株価の動向についても整理します。ソースによってやや数値が異なります。South China Morning Postは発表翌日(2月13日)の終値を680香港ドル、上昇率15.7%と報じています。一方、CNBCはMiniMax株の上昇率を13.7%と報じました。Investing.comのデータでは、2月12日の日中レンジは527.50〜636.50香港ドルで、前日終値513香港ドルからの日中最大上昇率は約24%に達しています。元記事の「20%以上の上昇」は、この日中ピークに基づく数値と考えられます。「時価総額1800億香港ドル突破」についても、終値ベースでは到達時期が異なる可能性があります。
この発表が持つ広い意味について考えます。VentureBeatの報道では、MiniMax社内ですでにタスクの30%、新規コミットコードの80%をM2.5が生成していると紹介されています。これはAIが「チャットボット」から「ワーカー」へと進化するという、業界全体のトレンドを先取りした動きといえます。
長期的な視点では、中国のAI企業が米国のGPU輸出規制下にありながら、少ないパラメータで高効率なモデルを生み出し続けている現実が、国際的なAI競争の構図そのものを変えつつあります。2026年1月9日に香港証券取引所へ上場したばかりのMiniMaxが、わずか1カ月余りでフロンティアモデル級の製品を投入できたことは、同社の開発速度の速さを示すと同時に、オープンモデルのエコシステムがクローズドモデルの支配に挑戦する時代の到来を予感させるものです。
一方、潜在的なリスクとして、MiniMaxが主張するベンチマークスコアの多くは自社内部基盤でのテスト結果であり、第三者による独立検証との間に乖離が生じる可能性は常に意識しておく必要があります。Hacker Newsでのユーザーレビューでは、実際のコーディング品質にばらつきがあるとの指摘も見られます。ベンチマークの数値だけでなく、実運用環境でのパフォーマンスを慎重に見極めていく必要がありそうです。
【用語解説】
SOTA(State of the Art)
特定の技術分野やベンチマークにおいて、現時点で最も高い性能を達成していることを示す用語である。
Mixture of Experts(MoE)
大規模言語モデルのアーキテクチャの一種。モデル全体のパラメータのうち、推論時には一部の「専門家」モジュールのみを選択的に起動する設計である。M2.5では総パラメータ230Bのうち10Bのみがアクティベートされる。
アクティベーションパラメータ
推論(入力に対する出力生成)時に実際に計算に使用されるパラメータの数。MoEアーキテクチャでは、総パラメータ数よりも大幅に少ないのが特徴である。
SWE-Bench Verified
実際のGitHubプルリクエストに基づいて、AIモデルのソフトウェアエンジニアリング能力(バグ修正、機能実装など)を評価するベンチマークである。実運用に近い条件でのコーディング性能を測定する指標として広く利用されている。
TPS(Tokens Per Second)
AIモデルが1秒あたりに生成できるトークン(テキストの最小処理単位)の数。推論速度の指標であり、数値が大きいほど高速に応答を生成できる。
オープンウェイト
モデルの学習済みパラメータ(重み)が公開されている状態を指す。ソースコード公開とは異なり、モデルの重みのみが公開されるケースが多い。M2.5はHugging Face上で修正MITライセンスで公開されている。
【参考リンク】
MiniMax 公式サイト(外部)
上海拠点のAI企業。テキスト・音声・動画・音楽の基盤モデルを開発。2026年1月に香港上場。
MiniMax M2.5 モデルページ(外部)
標準版・Lightning版のAPI仕様、価格、オフィス業務活用例、オープンソース公開情報をまとめている。
MiniMaxAI/MiniMax-M2.5 — Hugging Face(外部)
M2.5のオープンウェイト公開リポジトリ。修正MITライセンス。vLLM・SGLangデプロイガイド付き。
MiniMax Agent(外部)
M2.5搭載の汎用AIエージェント。コーディング支援やリサーチ、オフィス業務自動化を開発不要で体験可能。
Anthropic(外部)
Claudeシリーズ開発元の米国AI企業。Claude Opus 4.6はM2.5が比較対象とするフロンティアモデル。
OpenHands(外部)
オープンソースの自律型ソフトウェア開発基盤。M2.5の独立評価でClaude Sonnet匹敵と報告。
Artificial Analysis — MiniMax M2.5評価ページ(外部)
AIモデルの性能・速度・価格を独立評価。M2.5のIntelligence Index 42、実測80.8 TPSと報告。
【参考記事】
MiniMax M2.5: 更快更强更智能,为真实世界生产力而生(外部)
MiniMax公式。SWE-Bench 80.2%、社内コード80%がM2.5生成、API価格など技術詳細を掲載。
MiniMax’s new open M2.5 and M2.5 Lightning near state-of-the-art(VentureBeat)(外部)
1タスクあたり約0.15ドル vs Opus 4.6の約3.00ドル。年間1万ドルで4Agent連続稼働の試算を紹介。
China’s MiniMax releases cheap AI model ‘designed for real-world productivity’(SCMP)(外部)
2月13日終値680香港ドル、上昇率15.7%。100 TPSで1時間1ドルの公式発表を報道。
MiniMax M2.5: Open Weights Models Catch Up to Claude Sonnet(OpenHands)(外部)
独立評価でOpusファミリーに次ぐ4位。オープンモデル初のClaude Sonnet超えと報告。
Zhipu leads rally in Chinese AI stocks, surging 30%(CNBC)(外部)
GLM-5とM2.5の同週発表で中国AI株全面高。MiniMax株13.7%上昇とLSEGデータを引用。
MiniMax doubles in Hong Kong debut(CNBC)(外部)
2026年1月IPO報道。初日109%上昇、調達48億香港ドル。9カ月収益5340万ドル、純損失5.12億ドル。
MiniMax Group Inc Stock Price Today | HK: 0100(Investing.com)(外部)
2月12日の取引データ。前日終値513香港ドル、日中レンジ527.50〜636.50香港ドルを記録。
【編集部後記】
AIモデルの性能競争が「大きさ」から「効率」へと軸を移しつつある今、開発者でなくとも、この変化の波は私たちの働き方や日常に届き始めています。皆さんは、AIが「1時間1ドルで働く同僚」になる未来をどう受け止めますか。こうした変化の意味を皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。ご意見や感想をお寄せいただけるとうれしいです。





































