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Google AI Professional Certificate提供開始、AI人材不足の解消へ — Walmart、Deloitteなど大手企業が採用

Googleは2026年2月19日、Google AI Professional Certificateの提供開始を発表した。IpsosとGoogleの調査によると、マネージャーの70%がAIのトレーニングを受けた労働力を成功に不可欠と考える一方、AIトレーニングを提供された労働者は14%にとどまる。

WalmartおよびSam’s Club、Deloitte、Verizon、Colgate-Palmoliveが従業員のAIトレーニングにこの資格を活用する。中小企業向けには、同資格と3か月間のGoogle Workspace Business Standardへの無償アクセスを提供する。

U.S. Chamber of CommerceやAmerica’s Small Business Development Centers(SBDC)と連携し、ADP、PayPal、Verizonもそれぞれのネットワークを通じて展開する。プログラムはBurning Glass InstituteおよびSkills-First Workforce Initiativeと協力して設計され、受講者にはGoogle AI Proの3か月間無償アクセスが付与される。

Google Career Certificatesプログラムはこれまでに世界で100万人以上の修了者を輩出している。

From: 文献リンクPractical AI skills for everyone

【編集部解説】

今回のGoogle AI Professional Certificateの発表は、単なる新しいオンライン学習プログラムの登場ではありません。この動きの背景には、AIスキルをめぐる深刻な構造的ギャップが存在しています。

同時に公開されたGoogleとIpsosの共同調査「AI Works for America」の詳細を見ると、元記事で示された数字以上に厳しい現実が浮かび上がります。米国の労働者のうち、業務でAIを使っている人は40%にとどまり、自分の仕事のやり方をAIで再設計・再構築するレベルの「AI Fluent(AI活用に堪能な人材)」はわずか5%に過ぎません。一方で、このAI Fluentな層は、そうでない層と比べて賃金上昇を報告する割合が4.5倍、AIスキルに起因する昇進を報告する割合が4倍に上ります。つまり、AI習熟度がすでにキャリアの格差に直結し始めているのです。

Googleのチーフエコノミストであるファビアン・クルト・ミレ氏はFortune誌の取材に対し、トレーニングへの投資を怠ることは競合他社に後れを取るリスクを意味すると警告しています。この発言は、AIスキルの習得が個人のキャリア戦略であると同時に、企業の競争戦略でもあることを示唆しています。

注目すべきは、このプログラムの設計思想です。Burning Glass Instituteは、労働市場のデータ駆動型研究を行う非営利組織で、過去10年で平均的な職務に求められるスキルの30%が入れ替わったとする分析を発表しています。今回の資格プログラムでは、同組織とSkills-First Workforce Initiativeとの連携により、AIが仕事を変革している6つの中核領域を特定しました。なかでも「バイブコーディング」の公式採用は象徴的です。コードを一行も書かずに自然言語でアプリを構築するこの概念は、プログラミング経験のないビジネスパーソンにとって、AIの実用性を最も体感できるスキルの一つと言えます。

Courseraの公式ブログによると、このプログラムは約10時間で修了可能とされています。さらに、受講者にはGoogle AI Proの3か月無料アクセスが付与され、Gemini、Flow、NotebookLMなどGoogleの最先端AIツールを実際に使いながら学べる点が、従来のeラーニングとは一線を画しています。加えて、Udemy(Nasdaq: UDMY)も同日、Googleと提携した「Learn AI with Google」プランの提供を発表しており、8,400万人以上のUdemy学習者にもこの資格プログラムが展開されます。

もう一つの重要な側面は、中小企業支援の規模感です。米国では中小企業が雇用の約半数を担っていますが、AIトレーニングのリソースは大企業に偏りがちでした。今回、U.S. Chamber of Commerce、America’s SBDC、さらにADP、PayPal、Verizonといった大手企業ネットワークを通じて全米の中小企業に無償提供を行うというのは、AI民主化の文脈において大きな意味を持ちます。

競合の動向も押さえておく必要があります。MicrosoftはAB-900やAB-731などの新しいAI資格シリーズを2025年末から展開し、Copilotを軸としたビジネス向けAI認定を強化しています。AWSも資格体系を再編し、Generative AI Developer – Professionalなどの新資格を追加しました。しかし、これらの資格は主に技術者やクラウドエンジニア向けの色彩が強く、Googleのプログラムが「コーディング不要・全職種対象」を明確に打ち出している点は差別化要因となっています。

一方で、潜在的な課題も指摘しておく必要があります。Burning Glass Instituteの別の調査では、多くの労働者がスキル証明書を取得しても、それが賃金上昇やキャリアアップにつながらないケースがあることが報告されています。資格の「数」よりも、雇用主がそれを実際の採用・昇進基準としてどこまで重視するかが鍵を握ります。WalmartやDeloitte、Verizonといった大手企業がすでに採用を表明している点は心強い材料ですが、この流れがどこまで広がるかは今後の展開次第です。

長期的には、AIリテラシーが読み書きやPC操作と同様の「基礎スキル」として定着していく方向が見えてきます。Courseraによれば、AIスキルを求める求人の半数以上がIT・コンピュータサイエンス以外の分野から出ています。この傾向は、AIがもはや技術部門だけの課題ではなく、あらゆる職種の労働者に関わるテーマであることを裏付けています。

【用語解説】

AI Fluent(AI活用に堪能な人材)
GoogleとIpsosの調査で定義された概念。業務でAIを日常的に使うだけでなく、仕事のやり方そのものをAIで再設計・再構築しているレベルの労働者を指す。米国の労働者のうち該当するのはわずか5%とされる。

バイブコーディング(Vibe Coding)
プログラミング言語を書かずに、自然言語でAIに指示を出してアプリケーションを構築する手法。コーディング経験がなくても、業務用のカスタムアプリを作成できる点が特徴である。

Google AI Pro
Googleが提供するAIサービスの上位プラン。Gemini、Flow、NotebookLMなどGoogleの最先端AIモデル・ツールをフル機能で利用でき、GmailやGoogle Docsへの AI支援機能や2TBのクラウドストレージが含まれる。

Google AI Essentials
Grow with Googleが提供するAI基礎コース。Courseraの歴史上最も人気のあるコースとなった。約10時間以内で完了でき、プロンプトの書き方やAIの責任ある利用方法などを学べる入門プログラムである。

Google Career Certificates
Googleが提供する職業訓練資格プログラム。データ分析、プロジェクト管理、サイバーセキュリティ、UXデザインなどの分野をカバーし、現在はすべての資格にAIトレーニングが組み込まれている。世界で100万人以上の修了者を輩出している。

Skills-First Workforce Initiative
Burning Glass Instituteが推進する取り組み。学歴よりもスキルを重視した採用・育成の枠組みを構築することを目的とし、30の主要職種について共通のスキル分類体系を策定している。

U.S. Chamber of Commerce(全米商工会議所)
米国最大のビジネス団体。300万以上の企業・団体が加盟し、中小企業支援や政策提言を行っている。

SBDC(America’s Small Business Development Centers)
米国中小企業庁(SBA)と連携し、全米約1,000か所で中小企業向けの経営相談やトレーニングを提供するネットワーク組織である。

【参考リンク】

Grow with Google AI Professional Certificate(公式ページ)(外部)
Google AI Professional Certificateの概要、7コース構成、受講費用、AI Pro無料特典の詳細を掲載。

Coursera – Google AI Professional Certificate(外部)
Courseraでの受講ページ。カリキュラム詳細や受講者レビューを確認でき、無料で登録を開始できる。

Udemy – Learn AI with Google(外部)
Udemyが2026年2月19日に発表したGoogleとの提携プラン。8,400万人以上の学習者に展開される。

Burning Glass Institute(外部)
労働市場のデータ駆動型研究を行う非営利組織。スキルベースの採用推進やAI時代の職務変化を分析。

Ipsos – Google/Ipsos AI Works for America Poll(外部)
GoogleとIpsosによる米国労働力のAI活用調査。AI Fluentが5%などの詳細データを公開している。

Google Workspace Business Standard(外部)
Googleのビジネス向け統合ワークスペース。今回の中小企業向け無償提供の対象サービスである。

【参考記事】

Exclusive: Just 5% of workers have this skill, according to Google, and they’re 4.5 times as likely to have a higher salary(外部)
Fortune誌の独占報道。GoogleとIpsosの調査で、AI Fluentはわずか5%、賃金上昇4.5倍、昇進4倍などの数値データを報じている。

Google launches AI Professional Certificate on Coursera and offers free access to U.S. small businesses(外部)
Coursera公式ブログ。約10時間で修了可能、AIスキル求人の半数以上がIT以外の分野から出ていることを報告。

Google Launches AI Professional Certificate to Close Workforce Skills Gap(外部)
AI求人が過去2年で108%増、AIスキル労働者の賃金プレミアム56%などの業界データを引用した分析記事。

Udemy Partners with Google to Launch First-of-its-Kind “Learn AI with Google” Plan(外部)
Udemyの公式プレスリリース。世界中の従業員アップスキリングの約70%がAIスキルに集中との言及あり。

Google Launches AI Certificate With Free AI Pro Access(外部)
MicrosoftやAmazonとの競合の文脈でGoogleの動きを分析。AI Pro実環境アクセスが差別化要因と指摘。

Google AI Professional Certificate(Grow with Google公式ページ)(外部)
Google AI Proに含まれるGemini、Flow、NotebookLMの明記や、7コース構成の詳細が掲載されている。

【編集部後記】

AIスキルが賃金や昇進に直結し始めているというデータは、私たちにとっても他人事ではありません。「AI Fluent」がわずか5%という現実は、裏を返せば今から動き出す人にこそ大きなチャンスがあるということでもあります。みなさんは普段の仕事でAIをどのように活用されていますか? ぜひSNSなどで教えていただけると嬉しいです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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