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Geminiアプリに音楽生成AI「Lyria 3」搭載 ― 全ユーザーへ展開開始

[更新]2026年2月21日

Google DeepMindは2026年2月18日、音楽生成モデル「Lyria 3」をGeminiアプリに搭載し、全ユーザー向けに展開を開始した。Lyria 3は、プロンプトに基づき歌詞を自動生成する機能を備え、スタイル、ボーカル、テンポなどの制御が可能である。

既存アーティストの模倣ではなくオリジナル表現を目的として設計されており、著作権およびパートナー契約に配慮したトレーニングが行われた。プロンプトでアーティストを指定した場合は、創作上のインスピレーションとして処理される。

既存コンテンツとの照合フィルターも導入された。生成されるトラックは30秒で、Nano Bananaによるカバーアート生成にも対応する。すべてのトラックにはSynthIDの電子透かしが埋め込まれる。

対応言語は英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ヒンディー語、日本語、韓国語、ポルトガル語の8言語で、18歳以上が対象である。

Google AI Plus、Pro、Ultraのサブスクライバーにはより高い利用上限が適用される。

From: 文献リンクGemini app rolling out music generation for all with Lyria 3

実際の画面

Geminiに「Lyriaってつかえるの?」っていう質問をlyriaで返答してもらいました。

【編集部解説】

Geminiアプリが音楽生成に対応したことは、Googleの生成AIプラットフォームがテキスト、画像、動画、そして音楽という主要なクリエイティブ領域をすべてカバーしたことを意味します。ひとつのチャットインターフェースから、あらゆるメディアを生成できる時代が本格的に到来したと言えるでしょう。

注目すべきは、9to5Googleの元記事では触れられていませんが、今回のLyria 3はGeminiアプリへの搭載と同時に、YouTubeのクリエイター向け機能「Dream Track」にも統合されています。TechCrunchなど複数のメディアが報じているとおり、Dream Trackはこれまで米国のクリエイターに限定されていましたが、今回のリリースでグローバルに拡大されました。YouTubeクリエイターがショート動画用のBGMをAIで自由に生成できるようになることは、音楽ライセンスのコストや著作権ストライクに悩んできた制作者にとって、大きな転換点となり得ます。

Googleが著作権への配慮を繰り返し強調している背景には、AI音楽生成をめぐる深刻な法的環境があります。2024年6月、Universal Music Group、Sony Music、Warner Music Groupの大手3レーベルは、RIAA(全米レコード協会)を通じてAI音楽生成サービスのSunoとUdioを著作権侵害で提訴しました。その後、Universal Music GroupはUdioと和解しライセンス契約を締結、Warner Music GroupもSunoとの訴訟を和解しています。こうした動きは、AI企業と音楽業界の関係が「対立」から「ライセンス交渉」へと移行しつつあることを示しています。

Googleはこの流れを先読みする形で、Lyria 3のトレーニングにおいて著作権およびパートナー契約に配慮したと明言しています。Music Allyの報道によれば、Lyriaのトレーニングには、YouTubeおよびGoogleが利用規約やパートナー契約、適用法の下で使用権を持つ音楽が用いられているとされています。ただし、この表現は法的に曖昧な余地を残しており、今後の精査が必要な部分でもあります。

安全性の面では、すべてのトラックにSynthIDの電子透かしが埋め込まれます。これはGoogle DeepMindが開発した不可視のウォーターマーク技術で、AI生成コンテンツであることを後から識別可能にするものです。AI生成音楽が急速に普及する中で、「この音楽は人間が作ったのか、AIが作ったのか」を検証できる仕組みの標準化は、業界全体にとって不可欠な課題となっています。

一方で、現時点での制約も明確です。生成されるトラックは30秒に限定されており、Google自身もこの機能を「楽しくユニークな自己表現の手段」と位置づけ、プロの音楽制作の代替とは見なしていません。競合のSunoが3〜4分のフルトラック生成やステムのエクスポートに対応しているのに対し、Lyria 3はあくまでカジュアルな用途に焦点を当てています。

潜在的なリスクとしては、AI生成音楽の品質が向上するにつれて、プロのミュージシャンやコンポーザーの仕事への影響が避けられない点が挙げられます。2024年には、ビリー・アイリッシュやスティーヴィー・ワンダーを含む200人以上の著名アーティストが、AI音楽生成に対する懸念を表明する公開書簡に署名しています。また、米国著作権局は2025年1月、100%AI生成のコンテンツは著作権保護の対象外であるとの見解を示しました。AI生成音楽をめぐる法的枠組みは依然として整備の途上にあります。

月間7億5000万人以上のアクティブユーザーを抱えるGeminiアプリに音楽生成機能が搭載されたことで、AI音楽は一気に「誰もが触れるもの」になりました。技術の民主化がもたらすのは、創造の裾野の拡大と、それに伴う新たな倫理的・法的課題の両面です。この領域は今後、Google I/O 2026(5月19〜20日に開催予定)でのさらなるアップデートも含め、急速に進化していくことが予想されます。

【用語解説】

SynthID
Google DeepMindが開発した電子透かし(ウォーターマーク)技術。AI生成コンテンツの音声、画像、動画に不可視のマーカーを埋め込み、後からAI生成物かどうかを識別できるようにする仕組みである。

Dream Track
YouTubeのショート動画クリエイター向けに提供されているAI音楽生成機能。2023年に米国限定で開始され、今回のLyria 3統合に伴いグローバルに拡大された。クリエイターが動画に合わせたオリジナルBGMをAIで生成できる。

Nano Banana
Googleの画像生成AIモデル。Lyria 3で生成された音楽トラックに合わせて、カスタムカバーアート(アルバムジャケット風画像)を自動生成する用途で使用される。

RIAA(全米レコード協会)
Recording Industry Association of Americaの略称。米国の音楽産業を代表する業界団体で、著作権保護やレコード認定(ゴールド、プラチナなど)を管理する。2024年にはSunoおよびUdioに対する著作権侵害訴訟を主導した。

【参考リンク】

Gemini 音楽生成機能(Google公式)(外部)
Lyria 3を活用したGeminiアプリの音楽生成機能の公式紹介ページ。使い方やプロンプト例を掲載。

Google公式ブログ — Lyria 3発表記事(外部)
2026年2月18日付の公式発表。Lyria 3の機能詳細やDream Trackのグローバル展開について記載。

Google DeepMind — Lyriaモデルページ(外部)
Google DeepMindによるLyriaモデルファミリーの技術紹介ページ。設計思想や安全性対策を解説。

Suno公式サイト(外部)
テキストプロンプトから最長4分の楽曲を生成できるAI音楽プラットフォーム。Lyria 3の主要な競合。

【参考記事】

Google adds music-generation capabilities to the Gemini app — TechCrunch(外部)
Dream Trackの米国限定からグローバル拡大を報道。業界のライセンス契約と著作権訴訟の二面性に言及。

Google adds Lyria 3 AI-music model to its Gemini app — Music Ally(外部)
Geminiアプリの月間アクティブユーザー7億5000万人超を報道。トレーニングデータの権利関係に独自取材。

Google just launched Lyria 3 in the Gemini app — Music Business Worldwide(外部)
Lyria 2からの進化やDream Trackが2023年にAIボイスクローンで開始された歴史的経緯を詳述。

AI Copyright Lawsuit Developments in 2025 — Copyright Alliance(外部)
Anthropicの15億ドル和解やSuno・Udoのライセンス契約など、AI著作権訴訟の2025年動向を網羅。

AI Music Copyright: Legal Risks Content Creators Must Know — Silverman Sound(外部)
30億ドル超の訴訟や200人以上のアーティスト公開書簡など、AI音楽の著作権リスクを包括的に解説。

Gemini can now generate a 30-second approximation of what real music sounds like — Engadget(外部)
Lyria 3の実使用レポート。インストゥルメンタルの品質は高いが歌詞品質に改善余地ありと報告。

【編集部後記】

AIが文章を書き、画像を描き、動画を作り、そして今度は音楽を奏でる時代になりました。Geminiアプリを開けば、誰でも30秒のオリジナルトラックを生み出せます。日本語にも対応しているので、気軽に試せる環境がすでに整っています。

一方で、「AIが作った音楽」と「人が作った音楽」の境界線はどこにあるのか、その問いはまだ誰も答えを持っていません。みなさんは、AIに音楽を作ってもらいたいと思いますか? ぜひ一度触れてみて、ご自身の感覚で確かめてみてください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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