advertisements

Perplexity Computer──19モデルのAIが働き続けるマルチモデル自律エージェント

[更新]2026年2月26日

Perplexity AIのCEO、Aravind Srinivasは2026年2月25日、新プロダクト「Perplexity Computer」をLinkedInおよびX(旧Twitter)で発表した。Perplexity Computerは、ファイル、ツール、メモリ、モデルを一つのシステムに統合したAIプラットフォームである。バックエンドには19のモデルが搭載されており、オーケストレーション層がタスクに応じて最適なモデルへ自動でルーティングする。

タスクはすべて隔離されたコンピューティング環境内で実行され、実際のファイルシステム、ブラウザ、ツール統合へのアクセスを持つ。複数のワークフローを並行して非同期に実行でき、数時間から数ヶ月にわたって稼働し続けることが可能だ。同システムはユーザーの過去の作業を記憶し、デフォルトでセキュアな設計となっている。現在はウェブ版のMaxサブスクライバー向けに提供されており、ProおよびEnterpriseユーザーへの展開は近日予定とされている。

From: 文献リンクWhat has Perplexity been up to last two months? | Aravind Srinivas on LinkedIn

【編集部解説】

Perplexity Computerは、一言で表すなら「クラウド上で動く、あなた専用のデジタルワーカー」です。検索AIとして知られてきたPerplexityが、なぜ突然このような製品を出してきたのか。その背景を読み解くと、AI業界全体の大きなうねりが見えてきます。

開発期間はわずか「約1ヶ月の社内実験」から始まりました。Perplexityのチーフビジネスオフィサー、Dmitry Shevelenkoによれば、チームが従来なら数週間かかっていた作業を一晩でこなせるようになったことが、製品化への確信につながったといいます。

最大の技術的特徴は「19モデルの並列オーケストレーション」です。Claude Opus 4.6がDeep ResearchおよびCometブラウザエージェントのコア推論エンジンとして稼働しており、それ以外の画像生成・動画生成・シンプルタスク処理・長文コンテキスト処理にはそれぞれ専門特化した複数モデルが充てられています。単一モデルでは賄えない作業を、最適なモデルへ自動でルーティングすることで、全体のアウトプット品質を引き上げる設計です。

競合との最大の違いは「クラウド完結型」の設計にあります。OpenClawやManus AIと比較すると、Perplexity Computerはクラウド上の隔離された環境内でのみ動作します。ここで補足しておくと、OpenClawはOpenAIの製品ではなく、オーストリア人開発者Peter Steinbergerが個人で開発したオープンソースのAIエージェントフレームワークです。GitHubで爆発的に普及し、ユーザーのOSに直接アクセスして自律的にタスクをこなす設計が特徴で、Steinberger自身はその後OpenAIに参画しています。Perplexity Computerはこうした「ローカル自律型」とは異なり、外部への無制限なアクセスを遮断するアーキテクチャを採用しています。

ポジティブな側面として特筆すべきは「非同期・並列実行」の概念です。ユーザーがその場にいなくても、数時間から数ヶ月にわたってタスクを継続実行できる点は、これまでのAIツールにはなかった発想です。複数のプロジェクトを同時進行させながら、自分は別の作業に集中できる——これは個人の生産性を根本から変える可能性を秘めています。

一方、リスクも直視する必要があります。AIが長時間・自律的に動作するということは、誤った指示や途中の判断ミスが気づかれないまま進行するリスクを意味します。Perplexity Computerが「Walled Garden(閉じた庭)」型を採用しているのは、そのリスクを意識した判断でもあるでしょう。外部システムへの過剰なアクセス権を与えず、Perplexityのインフラ内に留めることで、エージェントの暴走リスクを抑制しています。

規制の観点でも注目すべき製品です。AIエージェントが自律的にデータ処理や複合タスクを実行する時代が近づく中、EU AI Actをはじめとする各国の規制当局は「高リスクAIシステム」の定義と監視を強化しています。Perplexity Computerのようなエンドツーエンド型エージェントは、その規制対象となりうる技術類型のど真ん中にあります。

また、Perplexityは直近2ヶ月で、Deep Research強化(Opus 4.6への移行)、Model Council(複数モデルの並列比較)、Memory Engine改善(重要情報の記憶精度が77%から95%へ向上)、Comet Browser AgentのOpus 4.6対応など、矢継ぎ早に機能を実装してきました。Computerはその集大成であり、Perplexityが「検索エンジン」から「汎用AIワーカープラットフォーム」へと軸足を移す宣言でもあります。

長期的に見れば、Perplexity Computerが示す「マルチモデル・オーケストレーション」の設計思想は、業界標準になる可能性があります。特定モデルへの依存から脱し、タスクに応じて最適なモデルを使い分けるアーキテクチャは、AIが実用フェーズに入った現在、最も合理的なアプローチの一つといえるでしょう。

【用語解説】

マルチモデル・オーケストレーション
複数のAIモデルを一つの指揮系統のもとで連携させ、タスクの種類に応じて最適なモデルに自動で振り分ける仕組み。単一モデルでは苦手な作業も、専門特化したモデルの組み合わせでカバーできる。

AIエージェント(Agentic AI)
ユーザーの指示に答えるだけでなく、目標に向かって自律的に計画を立て、ツールを使い、行動を実行するAIシステムの総称。従来のチャットAIとの最大の違いは「実行力」にある。

隔離されたコンピューティング環境(Isolated Compute Environment)
各タスクを独立したサンドボックス内で実行する仕組み。他のタスクやシステムへの影響を遮断し、セキュリティリスクを最小化する。

非同期実行(Asynchronous Execution)
ユーザーが待機していなくてもバックグラウンドで処理が進む仕組み。複数タスクを並行して走らせながら、ユーザーは別の作業に集中できる。

Walled Garden(ウォールドガーデン)
特定のプラットフォームやインフラ内に機能を閉じ込めた設計思想。外部への無制限なアクセスを遮断することで、セキュリティやプライバシーを確保する。

【参考リンク】

Perplexity AI 公式サイト(外部)
AIを活用した検索・回答エンジン。エージェント型プラットフォームへと進化し、Perplexity Computerなど複数サービスを提供している。

Perplexity 公式チェンジログ(2026年2月6日版)(外部)
Deep Research強化、Model Council導入、Memory Engine改善など、Computerリリース直前の主要アップデートを確認できる公式ページ。

Perplexity 公式チェンジログ(2026年2月13日版)(外部)
Deep ResearchのOpus 4.6移行、Model CouncilへのMemory統合、Kimi K2.5追加など、Computer直前の最終アップデートをまとめた公式ページ。

【参考動画】

【参考記事】

Aravind Srinivas unveils ‘Perplexity Computer’ — Business Today(外部)
CEOによる発表内容を詳報。19モデルの並列運用、非同期・自律実行、Max先行提供など製品の核心情報を網羅した主要参照記事。

Perplexity’s new tool deploys teams of AI agents — PCWorld(外部)
社内実験から製品化の経緯、OpenClawとの設計思想の違い、Walled Garden型アーキテクチャの意義を詳述した技術的裏付け記事。

Perplexity AI Launches Next-Gen AI Platform ‘Perplexity Computer’ — Intellectia AI(外部)
クレジット制の料金体系(月10,000クレジット、初回ボーナス20,000クレジット)と各モデルの役割分担を詳細に記述。数値確認に活用した記事。

Perplexity Release Notes — February 2026 — releasebot.io(外部)
Computerリリースまでの2ヶ月のアップデート履歴を時系列で整理。直近の開発の流れを把握するために参照した記事。

What We Shipped — February 6th, 2026 — Perplexity公式(外部)
Memory Engine改善(精度77%→95%)など具体的な数値を確認できる公式一次資料。Deep Research強化やModel Council導入も記載。

What We Shipped — February 13, 2026 — Perplexity公式(外部)
Kimi K2.5追加、Model CouncilへのMemory統合など、Computer直前の最終週アップデートを確認できる公式一次資料。

OpenClaw: How a Weekend Project Became an Open-Source AI Agent — Trending Topics EU(外部)
OpenClawの誕生経緯と名称変遷を詳報。OpenAIの製品ではなく個人開発のOSSであることを裏付けた訂正根拠記事。

【編集部後記】

「19のAIモデルが、あなたの代わりに働き続ける」——これをSFの話と笑えない時代になりました。

思い返せば、スマートフォンが登場したとき、多くのビジネスパーソンは「電話とメールができれば十分」と感じていたはずです。しかしいまや、スマホなしの仕事は想像すらできない。Perplexity Computerが問いかけているのは、それと同じ種類の変化です。「AIに仕事を任せる」という行為が、やがて「当たり前のこと」になる日は、思っているより早く来るかもしれません。

リサーチ、資料作成、コーディング、プロジェクト管理——これまで人間が時間を切り売りしてきた作業の多くが、自律型AIへと移行していく流れは止まらないでしょう。重要なのは、その流れに乗り遅れないことではなく、「自分の仕事のどこをAIに委ね、どこに自分の判断と創造性を残すか」を、いま真剣に考えることではないでしょうか。

Perplexity Computerは現時点ではMaxプラン限定ですが、過去のAIツールの普及速度を見れば、一般ユーザーへの開放はそう遠くないはずです。「触れる環境が整ったとき、すでに使いこなす準備ができているか」——そこがアーリーアダプターとそれ以外を分ける境界線になるでしょう。

あなたのビジネスで、まず任せられるタスクはどこにありますか?また、AIには任せたくない領域はどこですか?ぜひコメント欄で聞かせてください。みなさんの視点が、次の記事のヒントになります。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

読み込み中…

innovaTopia の記事は、紹介・引用・情報収集の一環として自由に活用していただくことを想定しています。

継続的にキャッチアップしたい場合は、以下のいずれかの方法でフォロー・購読をお願いします。