OpenAIの公開GitHubリポジトリ「Codex」において、GPT-5.4への言及が2度にわたりプルリクエスト内で確認された。2月27日のPR #13050ではフルレゾリューション・ビジョンサポートの追加時に最小モデルバージョンが(5, 4)と設定されており、5時間で7回のフォースプッシュを経て(5, 3)に変更された。
3月2日のPR #13212ではファストモードのトグル機能に「GPT-5.4のファストモードを切り替える」との記述があり、約3時間後に削除された。さらにOpenAI従業員ティボがCodexアプリのモデルセレクターにGPT-5.4が表示されたスクリーンショットをXに投稿し、その後削除している。
Manifoldの予測市場ではGPT-5.4の2026年4月までのリリース確率が55%、6月までが74%とされている。GPT-5.3-Codexのリリースは2026年2月5日であり、GPT-5.4がリリースされれば7か月間で5つのGPT-5.xモデルを出荷したことになる。OpenAIはコメントを出していない。
From:
GPT-5.4 Leaked Twice in Codex Repo PRs – Here Is What We Know
【編集部解説】
今回のリークは、AIモデルの開発サイクルがかつてないほど加速していることを象徴する出来事です。
まず技術的な背景を補足します。「フォースプッシュ」とは、Gitというソースコード管理システムにおいて、過去のコミット履歴を強制的に書き換える操作のことです。通常の開発では頻繁に行うものではなく、元記事によればUTC 19:30から22:44の間に7回という異例の回数のフォースプッシュが行われており、意図せず公開された情報を急いで消そうとしたことを強く示唆しています。
今回リークから判明した2つの機能はそれぞれ意味が異なります。フルレゾリューション・ビジョンサポートは、画像をリサイズや圧縮せずにそのままモデルへ渡す機能で、これが実現すると高精細な設計図やUI画面のスクリーンショット、回路図のような細部が重要な画像をAIが正確に読み取れるようになります。エンジニアリングや建築、医療画像といった専門分野での活用が大きく広がる可能性を持っています。
もう一つのファストモード(service_tier=priority)については、実はOpenAIのAPIではすでに「Priority processing」として提供されている仕組みです。標準より高い料金を支払うことで低レイテンシの推論処理を受けられるもので、今回のリークはこれをCodex CLIのユーザーインターフェースから簡単に切り替えられるようにする機能の追加でした。つまり、完全に新しい技術というよりは、既存のインフラをエンドユーザー向けに使いやすくする改良と言えます。
注目すべきは、GPT-5ファミリーのリリースペースです。2025年8月のGPT-5から数えて約7か月の間に5つのバージョンが投入されており、GPT-4時代には考えられなかった速度で進化が続いています。しかも、GPT-5.3の汎用版(非Codex版)はまだリリースされていない段階で次のバージョンへの言及が出てきたことは、OpenAI社内で複数のモデルバリアントが並行して開発されている実態を示しています。
この開発速度の背景には、熾烈な競争環境があります。AnthropicのClaude Codeがコーディングエージェント市場で存在感を高め、中国のDeepSeekはNVIDIA製チップに依存しない独自路線でモデル開発を進めています。OpenAIが公開リポジトリで内部モデル名を数日の間に2度も漏洩させてしまったという事実は、スピード重視の開発体制において内部統制が追いつかなくなっている兆候とも受け取れます。
一方で、200万トークンのコンテキストウィンドウや永続メモリといった機能は、今回のリーク情報からは確認されていません。元記事もこの点は明確に区別しており、この種の未確認情報には慎重な姿勢が求められます。
長期的な視点で見ると、AIモデルのアップデートサイクルが数週間単位にまで短縮されつつある現状は、開発者やユーザーに恩恵をもたらす一方で、新たな課題も生んでいます。モデルの切り替えに伴う互換性の検証、セキュリティレビュー、そしてリリース管理の品質をどう維持するか。今回のリークは、まさにその課題が表面化した事例と言えるでしょう。
【用語解説】
プルリクエスト(PR)
ソフトウェア開発において、コードの変更を本体に統合するよう提案する仕組みである。GitHub上では他の開発者がレビューしてから統合するのが一般的だ。
フォースプッシュ(force push)
Gitにおいて、リモートリポジトリのコミット履歴を強制的に上書きする操作である。通常の開発では推奨されず、過去の記録を書き換えるため慎重に使われる。
フィーチャーフラグ(feature flag)
ソフトウェア内で特定の機能のオン・オフを切り替えるための設定値である。開発中の機能を本番コードに含めつつ、一般ユーザーには非公開にしておく際に使われる。
service_tier(サービスティア)
OpenAI APIにおけるリクエスト処理の優先度を指定するパラメータである。priorityを指定するとより高速な推論処理を受けられるが、標準より高い料金が課される。
Responses API
OpenAIが提供するAPIエンドポイントの一つで、モデルへの入力と応答を管理する。画像入力時にdetailパラメータで解像度の扱いを指定できる。
予測市場(Prediction Markets)
特定の事象が起こる確率を、参加者が仮想通貨や実際の金銭を用いて売買する仕組みである。集合知により将来の出来事の確率を推定する手法として活用されている。
【参考リンク】
OpenAI公式サイト(外部)
GPT-5シリーズやCodexを開発・提供するAI企業。ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル関連サービスを展開している。
OpenAI Codex公式ページ(外部)
OpenAIのエージェント型コーディングツール。CLI、IDE拡張、Webアプリの各形態で提供され、GPT-5シリーズで動作する。
OpenAI Codex GitHubリポジトリ(外部)
Codex CLIのオープンソースリポジトリ。今回のGPT-5.4リークが確認されたPR #13050およびPR #13212の投稿先。
GPT-5.3-Codex紹介ページ(OpenAI公式)(外部)
2026年2月5日リリースのGPT-5.3-Codex公式発表。前世代比25%高速化やベンチマーク最高性能を紹介している。
OpenAI Priority Processing(優先処理)(外部)
APIリクエストにservice_tier=priorityを指定し高速推論を受けられる仕組みの公式解説ページ。
Manifold Markets ― GPT-5.4リリース日予測(外部)
GPT-5.4のリリース時期を予測する市場。参加者が確率を売買する形でリリース見通しを提示している。
Anthropic公式サイト(外部)
Claude Opus 4.6やClaude Codeを開発・提供するAI企業。コーディングエージェント市場でOpenAIと競合関係にある。
【参考記事】
Did OpenAI just leak GPT-5.4? Here’s what we know(外部)
PiunikaWebによる報道。PR #13050のリークを2月28日付で報じた後、3月2日に2件目のPR #13212を追記更新している。
Introducing GPT-5.3-Codex(OpenAI公式)(外部)
GPT-5.3-Codexの公式発表。前世代比25%高速化、SWE-Bench Proでの最高性能達成などを記載している。
Priority Processing for API Customers(OpenAI公式)(外部)
service_tier=priorityパラメータの仕様やトークン課金体系を記載。リークのファストモード機能の技術基盤を確認した。
March 2026 AI model releases(Manifold Markets)(外部)
2026年3月のAIモデルリリース予測市場。GPT-5.3汎用版未リリースを理由に3月中のGPT-5.4には懐疑的な見方が多い。
Codex changelog(OpenAI公式)(外部)
Codexの公式変更履歴。GPT-5-CodexからGPT-5.3-Codexまでの各モデルのリリース日と主要変更点を時系列で記録。
【編集部後記】
AIモデルの進化が数週間単位で起こる時代に、私たちは立ち会っています。公開リポジトリから次世代モデルの痕跡が見つかるという今回の出来事は、オープンソース開発と企業秘密の間にある緊張関係を改めて浮き彫りにしました。
みなさんは、AIの開発スピードがさらに加速していく中で、どのような変化に期待し、あるいはどんな点に不安を感じていますか?ぜひSNSなどで考えを聞かせていただけるとうれしいです。








































