Last Updated on 2024-10-02 09:30 by admin
アマゾンが社内向けAIチャットボット「Cedric」を導入
アマゾンは2024年9月末頃、社内向けAIチャットボット「Cedric(セドリック)」を導入した。これは従業員の生産性向上を目的としており、質問への回答や文書の要約、アイデアの創出などに使用できる。
アマゾンは従業員に対し、ChatGPTなどの外部AIツールの使用を禁止し、代わりにCedricの使用を推奨している。内部文書によると、Cedricは「ChatGPTよりも安全」とされている。
Cedricは、アマゾンの社内文書である6ページのメモを「数秒で」作成したり、会議メモをメール用に変換したりすることができる。また、Word文書、PDFファイル、Excelスプレッドシートをアップロードし、その内容について上級管理職の視点からのフィードバックを得ることも可能だ。
Cedricは、アマゾンの社内AIモデルTitanではなく、BedrockAI開発プラットフォームとAnthropicのClaude大規模言語モデルを使用して開発された。アマゾンはAnthropicに多額の投資を行っている。
セキュリティ面では、Cedricの出力はアマゾン外での使用が禁止されており、ソフトウェア開発者とAmazon Web Servicesの従業員は「極秘データ」でも使用が承認されている。チャット履歴は暗号化されたデータベースに保存される。
アマゾンは2024年第2四半期時点で150万人以上の従業員を抱えており、Cedricはこれらの従業員全員が利用可能となっている。
from:Amazon Asks Employees to Use Its New, Internal Chatbot That’s ‘Safer Than ChatGPT’ – Entrepreneur
【編集部解説】
アマゾンが社内向けAIチャットボット「Cedric」を導入したことは、大手テクノロジー企業がAIの活用と情報セキュリティのバランスを模索している現状を如実に表しています。
Cedricの導入は、単なる生産性向上ツールの導入以上の意味を持っています。アマゾンは、従業員に外部AIツールの使用を禁止する一方で、社内専用のAIアシスタントを提供することで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えつつ、AIの恩恵を享受しようとしています。
この動きは、AIの急速な発展に伴う企業の対応の一例と言えるでしょう。ChatGPTなどの汎用AIツールの登場により、多くの企業が機密情報の取り扱いに頭を悩ませています。アマゾンの対応は、この課題に対する一つの解決策を示しています。
Cedricの機能は、文書の要約や会議メモの変換など、日常的な業務効率化に焦点を当てています。これにより、従業員は創造的な業務により多くの時間を割くことができるようになるでしょう。
しかし、社内AIツールの導入には潜在的なリスクも存在します。例えば、AIに過度に依存することで、従業員の批判的思考能力が低下する可能性があります。また、AIの判断に偏りがある場合、それが企業の意思決定に影響を与える恐れもあります。
長期的には、CedricのようなAIツールが企業文化や業務プロセスに与える影響を注視する必要があります。従業員のスキルセットの変化や、新たな職種の創出など、労働市場全体に波及する可能性もあるでしょう。
また、アマゾンがAnthropicのClaude大規模言語モデルを採用したことは、AI業界の競争と協調の複雑な関係を示しています。自社開発のAIモデルではなく、外部のモデルを採用したことで、アマゾンはAI開発のエコシステムにおける自社の立ち位置を明確にしたと言えます。
今後、他の大手企業もアマゾンの例に倣い、独自のAIアシスタントを開発する動きが加速する可能性があります。これにより、AIの企業内での活用がさらに進み、業務効率化や意思決定支援の新たな段階に入ることが予想されます。