トランプ大統領は2025年1月23日、「デジタル金融技術における米国のリーダーシップ強化」に関する大統領令に署名しました。この政策転換により、暗号資産業界に大きな変化が訪れています。
主な政策変更点
・バイデン政権のEO 14067を完全撤廃
・SAB 121会計規則の撤廃により、銀行の暗号資産カストディ業務を容易に
・連邦準備制度のデジタルドル(CBDC)開発を禁止
・政府没収の暗号資産を活用した国家備蓄の検討
市場への影響
ビットコイン価格は1月20日に109,000ドルの最高値を記録し、トランプ当選後から50%以上の上昇を見せています。大手金融機関のゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカは、暗号資産サービスの拡大を示唆しています。
from:Crypto industry gets quick return on Trump investment after pouring millions into campaign
【編集部解説】
政策転換の背景と影響
トランプ大統領の暗号資産政策は、単なる規制緩和にとどまらない大きな転換点となっています。この政策転換の背景には、2024年の選挙期間中に暗号資産業界から1億3,000万ドル以上の支援を受けたという事実があります。
バイデン政権下では、SECによる厳格な規制執行や、銀行の暗号資産カストディ業務を制限するSAB 121など、業界の成長を抑制する政策が取られてきました。これに対し、トランプ政権はイノベーションと経済発展を重視する姿勢を明確に打ち出しています。
デジタル資産政策の具体的な影響
新政策の中で特に注目すべきは、国家デジタル資産備蓄の検討です。これは単なるビットコイン保有にとどまらず、政府が押収した暗号資産を戦略的に活用する新しい試みとなります。この構想が実現すれば、米国の金融システムにおける暗号資産の位置づけが大きく変わる可能性があります。
また、SECの新しい暗号資産タスクフォースの設立は、これまでの「取り締まりによる規制」から「明確なルールに基づく育成」への転換を示しています。これにより、金融機関の暗号資産ビジネスへの参入障壁が大きく下がることが予想されます。
懸念される課題
一方で、トランプ家による$TRUMPや$MELANIAといったミームコインの発行は、業界内外から強い懸念の声が上がっています。大統領とその家族による暗号資産市場への直接的な関与は、利益相反の問題を引き起こす可能性があります。
また、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の禁止は、デジタル決済の未来における米国の選択肢を制限する可能性があります。この決定は、中国などのCBDC開発を進める国々との競争において、米国にとって不利に働く可能性も考えられます。
今後の展望
180日以内に提出される作業部会の報告書は、米国の暗号資産政策の具体的な方向性を示すことになります。特に、国家デジタル資産備蓄の基準や、新しい規制の枠組みについての提言は、グローバルな暗号資産市場に大きな影響を与えることが予想されます。
このような政策転換は、暗号資産業界に新たな成長機会をもたらす一方で、適切な消費者保護や市場の安定性の確保という課題も投げかけています。