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ビットコイン自己管理の新たな脅威:Casa CEOが警鐘を鳴らす山火事や戦争によるリスク増大

ビットコイン自己管理の新たな脅威:Casa CEOが警鐘を鳴らす山火事や戦争によるリスク増大 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-07 12:20 by admin

2025年4月6日、CNBCはビットコインなどの暗号資産を自己管理(セルフカストディ)する投資家が直面する増大するグローバルリスクについて報じた。

一部の暗号資産投資家は、取引所などの第三者に資産を預けるのではなく、ハードウェアウォレットに保存された秘密鍵を使って「コールドストレージ」で自己管理することを好む傾向がある。

2025年1月にカリフォルニア州で発生した大規模山火事では、シードフレーズを保護するための金属プレートが焼け焦げて判読不能になったり、火災の影響を受けた銀行の貸金庫に保管されていた暗号鍵が回復できなくなったりするケースが報告された。

自己管理の最大のリスクは秘密鍵の紛失であり、Casa社の共同創設者兼CEOであるニック・ニューマン氏は「ほとんどの人は一つの秘密鍵でビットコインを保護しており、その鍵が単一のデバイスにあるか、シードフレーズとして紙に書かれている場合、それは単一障害点となる」と指摘している。

自然災害以外にも、2022年11月に起きた暗号資産取引所FTXの崩壊のような事例も、自己管理の重要性を示している。

リスク軽減策として、Casaなどの企業はマルチシグネチャセットアップを提供しており、複数の鍵を異なる場所に分散させることで、一箇所での損失リスクを軽減できる。

Coinbase VaultやBlockのBitkeyなどの製品は、使いやすさを維持しながら、より安全なバージョンの暗号資産ウォレットを提供している。

暗号資産の相続も重要な課題であり、Bitkeyは2025年2月に相続ソリューションを展開した。

from:For bitcoin bulls who self-custody crypto, the global risks are growing

【編集部解説】

ビットコインをはじめとする暗号資産の自己管理(セルフカストディ)に関するリスクが、近年の自然災害や地政学的紛争によって新たな局面を迎えています。今回のCNBCの記事は、2025年1月にカリフォルニア州で発生した大規模山火事を例に挙げ、暗号資産の自己管理が直面する物理的リスクについて警鐘を鳴らしています。

自己管理の本質的なジレンマ
暗号資産の自己管理は「あなたの鍵、あなたのコイン」という暗号通貨の基本理念に沿ったものですが、同時に大きな責任を伴います。Casaの共同創設者兼CEOであるニック・ニューマン氏が指摘するように、多くの人々は単一の秘密鍵やシードフレーズに依存しており、これが単一障害点となっています。

山火事や洪水といった自然災害は、紙に書かれたシードフレーズはもちろん、「不滅」とうたわれる金属プレートでさえも危険にさらす可能性があります。実際、2025年1月のカリフォルニア南部の山火事では、ロサンゼルス都市圏とサンディエゴ郡で14件の火災が発生し、5万7,000エーカー以上の土地が焼失しました。この災害により、多くの暗号資産保有者が自宅や銀行の貸金庫に保管していた秘密鍵やハードウェアウォレットを失ったと報告されています。

地政学的リスクの増大
自然災害だけでなく、中東紛争やロシア・ウクライナ戦争などの地政学的紛争も、暗号資産の自己管理に新たな課題をもたらしています。戦争地域では、銀行の閉鎖や強制避難により、安全に保管されていたはずの秘密鍵へのアクセスが突然不可能になる事態が発生しています。

これらの事例は、暗号資産の保管場所を選ぶ際に、地理的な分散の重要性を示唆しています。一箇所に集中して保管することのリスクが、これまで以上に明確になってきたと言えるでしょう。

マルチシグネチャによるリスク分散
こうしたリスクに対応するため、Casaなどの企業はマルチシグネチャ(マルチシグ)と呼ばれる技術を提供しています。例えば、5つの鍵のうち3つがあれば取引を承認できるシステムでは、複数の鍵を異なる地域や国に分散させることで、一箇所での災害によるリスクを大幅に軽減できます。

マルチシグアプローチは、セキュリティと利便性のバランスを取る上で重要な選択肢となっています。所有者が大多数の鍵を保持し、信頼できるパートナーが少数の鍵を保持することで、単一障害点のリスクを排除しながらも、完全な管理権を維持することができます。

相続問題という見過ごされたリスク
暗号資産の自己管理における最も見過ごされがちなリスクの一つが、所有者の予期せぬ死亡です。相続人が秘密鍵へのアクセス方法を知らない場合、暗号資産は永遠に失われる可能性があります。

この問題に対応するため、Bitkeyは2025年2月に相続ソリューションを導入しました。これは「待ち受ける数十億ドル規模の問題」と表現されるほど重要な課題です。暗号資産の保有者は、自分自身のセキュリティだけでなく、万が一の際の相続計画も考慮する必要があります。

FTX破綻からの教訓
2022年11月に起きたFTXの崩壊は、第三者管理のリスクを如実に示した事例です。当時、顧客は約80億ドルの資産を失いましたが、最新の情報によると、破産処理を通じて顧客は元本に加えて利息も含めた全額を回収できる見込みとなっています。これは米国の破産処理では極めて稀なケースですが、それでも顧客が長期間資産にアクセスできなかった事実は変わりません。

技術の進化と今後の展望
暗号資産業界は、セキュリティと使いやすさのジレンマを解決するための新しいツールを開発し続けています。CoinbaseのVaultやBlockのBitkeyなどの製品は、コールドストレージの安全性と使いやすさを兼ね備えた解決策を提供しようとしています。

これらの進化は、暗号資産の自己管理がより安全で直感的になる可能性を示していますが、完全なリスク排除は不可能です。重要なのは、リスクを認識し、それに応じた対策を講じることです。

まとめ
暗号資産の自己管理は単なる技術的な問題ではなく、個人の金融主権と責任のバランスに関わる哲学的な問題でもあります。「あなたの鍵、あなたのコイン」という理念は魅力的ですが、それには相応の責任が伴います。

暗号資産を保有する読者の皆さんには、自己管理と第三者管理のメリット・デメリットを十分に理解した上で、自分のリスク許容度や技術的な熟練度に合わせた選択をすることをお勧めします。また、定期的なバックアップの確認や、災害時のアクセス計画の策定など、予防的な対策を講じることも重要です。

【用語解説】

セルフカストディ(自己管理):暗号資産の秘密鍵を自分自身で管理する方法。

コールドウォレット/コールドストレージ:インターネットに接続されていない状態で暗号資産の秘密鍵を保管する方法。オフライン環境で秘密鍵を保管するため、ハッキングのリスクが低い。

ホットウォレット:インターネットに常時接続されている暗号資産ウォレット。利便性は高いが、ハッキングのリスクもある。

シードフレーズ:暗号資産ウォレットへのアクセスを回復するために使用される12〜24語の単語列。

マルチシグネチャ(マルチシグ):複数の秘密鍵による承認が必要な仕組み。例えば「2-of-3」の場合、3つの鍵のうち2つが必要。

【参考リンク】

Casa(外部)
暗号資産の自己管理に特化したセキュリティサービスを提供する企業。マルチシグネチャ技術を活用した保管ソリューションを展開している。

Block(旧Square)(外部)ジャック・ドーシー率いる決済テクノロジー企業。Bitkeyというビットコイン自己管理ウォレットを開発・提供している。

Bitkey(外部)
Blockが開発したセルフカストディ型ビットコインウォレット。モバイルアプリとハードウェアデバイスを組み合わせた2-of-3マルチシグ方式を採用している。

Coinbase(外部)
米国最大級の暗号資産取引所。機関投資家向けのカストディサービス「Coinbase Custody」や一般ユーザー向けの「Coinbase Vault」などを提供している。

Ledger(外部)
ハードウェアウォレットの大手メーカー。Ledger NanoシリーズなどのUSBスティック型のコールドウォレットを提供している。

【参考動画】

【編集部後記】

皆さんは、ビットコインなどの暗号資産をどのように保管していますか?取引所に預けたまま、それともハードウェアウォレットで自己管理されていますか?今回の記事で紹介したように、自己管理には様々なリスクが潜んでいます。大切な資産を守るために、バックアップ方法や分散保管について一度見直してみてはいかがでしょうか。マルチシグネチャなど新しい技術も登場していますので、ぜひ自分に合った保管方法を探してみてください。

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TaTsu
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