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Bybit、日本市場から撤退へ──金融庁の規制強化で2026年からアクセス制限

[更新]2025年12月24日

Bybit、日本市場から撤退へ──金融庁の規制強化で2026年からアクセス制限 - innovaTopia - (イノベトピア)

取引高で世界第2位の暗号資産取引所Bybitは2025年12月22日、2026年から日本居住者向けサービスへのアクセス制限を開始すると発表した。

この措置は日本の金融規制に準拠するためのものである。同社はどのサービスが影響を受けるかは明記せず、影響を受けるユーザーには制限の展開に伴い今後連絡するとしている。日本で事業を行う取引所は金融庁への登録が必要であり、顧客保護、資産分別管理、マネーロンダリング対策に関する規則に従わなければならない。

これらの基準を満たせないプラットフォームは市場からの撤退を余儀なくされる。日本の規制当局は、ハッキングやその他の業務上の障害からユーザーを保護するため、国内の暗号資産取引所に対して負債準備金の維持を義務付けることも計画している。この発表は、Bybitが2025年12月19日に英国への復帰を発表したわずか数日後のことである。

From: 文献リンクCrypto exchange Bybit to restrict access for Japanese users as regulatory pressure mounts

【編集部解説】

今回のBybitの決断は、グローバル暗号資産取引所が直面する「規制コンプライアンス」と「事業拡大」のジレンマを象徴する出来事です。世界80百万ユーザーを抱える大手取引所が、なぜ日本市場からの撤退を選択せざるを得なかったのでしょうか。

日本の金融庁(FSA)は、2026年の国会で暗号資産取引所に対する負債準備金の義務化法案を提出する予定です。この制度では、取引量や過去のセキュリティインシデントに応じて、取引所が一定額の準備金を保有することが求められます。従来の金融機関では20億円から400億円の範囲で設定されており、暗号資産取引所にも同様の基準が適用される見込みです。

この規制強化の背景には、過去の大規模ハッキング事件や顧客資産の不適切な管理といった問題があります。日本は暗号資産投資への個人参加が増加しており、消費者保護の観点から追加的な安全層を設けることを目指しています。

興味深いのは、Bybitが日本市場から撤退する一方で、わずか数日前の12月19日に英国市場へ復帰した点です。英国では2023年9月に厳格なマーケティング規制により撤退を余儀なくされましたが、2年間でFCA(金融行為監視機構)準拠のフレームワークを構築し、100の暗号資産ペアでスポット取引サービスを再開しました。

この対照的な動きは、各国の規制アプローチの違いを浮き彫りにしています。英国は明確なガイドラインのもとで段階的に市場を開放する方針を採っているのに対し、日本は登録制度、資産分別管理、準備金義務など多層的な要件を課しています。

暗号資産取引所にとって、日本市場での事業継続には相当なコンプライアンスコストが伴います。金融庁への登録、顧客保護体制の整備、マネーロンダリング対策、そして今後義務化される準備金の確保など、ハードルは決して低くありません。

一方で、この厳格な規制は長期的には市場の健全性を高める可能性があります。準備金制度により、万が一の際にも顧客資産が保護される仕組みが構築されれば、投資家の信頼は向上するでしょう。既に日本で登録済みの取引所にとっては、競合が減ることで市場シェア拡大のチャンスとも言えます。

グローバル取引所が市場を選別する時代において、日本の投資家は今後、国内登録済みの取引所を利用することになります。規制準拠のコストを負担できる体力のある事業者のみが生き残る構図は、業界の成熟を示す一つの指標と捉えることもできるのではないでしょうか。

【用語解説】

資産分別管理
顧客から預かった暗号資産や法定通貨を、取引所自身の資産と明確に分けて管理する仕組みである。万が一取引所が破綻した場合でも、顧客資産が保護されるための重要な規制要件となっている。

マネーロンダリング対策(AML)
犯罪によって得られた資金の出所を隠蔽し、合法的な資金であるかのように見せかける行為を防止するための対策である。暗号資産取引所には、本人確認(KYC)や取引監視などの実施が義務付けられている。

負債準備金
取引所がハッキングやシステム障害などの緊急事態に備えて保有する資金である。日本の金融庁は2026年の国会でこれを義務化する法案を提出予定で、従来の金融機関では20億円から400億円の範囲で設定されている。

FCA(金融行為監視機構)
英国における金融サービス業界の行為規制を担う独立機関である。Financial Conduct Authorityの略称で、暗号資産事業者の登録や監督も行っている。

スポット取引
暗号資産を現在の市場価格で即座に売買する取引形態である。先物取引やオプション取引などのデリバティブとは異なり、実際の暗号資産の受け渡しが行われる。

【参考リンク】

Bybit公式サイト(外部)
取引高で世界第2位の暗号資産取引所。デリバティブ、スポット取引、ステーキングなど幅広いサービスを提供。

日本居住者向け重要なお知らせ – Bybit公式アナウンスメント(外部)
Bybitが日本居住者に発表した公式通知。2026年からのサービス制限に関する詳細と今後のスケジュール。

金融庁(Financial Services Agency)(外部)
日本の金融行政を担う官庁。暗号資産交換業者の登録制度を運用し、投資家保護と市場の健全性を確保。

FCA(Financial Conduct Authority)(外部)
英国の金融行為監視機構。暗号資産事業者の登録制度を運用し、消費者保護と市場の公正性を監督。

CoinDesk(外部)
暗号資産とブロックチェーン技術に特化した国際的なニュースメディア。業界の最新動向、規制情報を提供。

【参考記事】

Japan’s FSA to Mandate Liability Reserves for Crypto Exchanges to Enhance Security(外部)
日本の金融庁が2026年の国会で暗号資産取引所に対する負債準備金義務化法案を提出する計画を報じた記事。

Japan FSA plans to mandate liability reserves for crypto exchanges(外部)
日本の規制当局が暗号資産取引所に負債準備金の保有を義務付ける方針について詳述した記事。

Bybit Returns to UK Market Under FCA-Compliant Framework(外部)
Bybitが2025年12月19日に英国市場へ復帰し、100の暗号資産ペアでサービスを再開したことを報じた記事。

Digital Assets Exchange Bybit Resumes UK Operations After 2-Year Pause(外部)
Bybitの英国復帰に関する詳細を報じた記事。2023年10月の規制強化から復帰までの経緯を解説。

Bybit Statistics 2025: Resilience and Growth Snapshot(外部)
Bybitの事業規模と成長に関する統計情報。80百万以上のユーザーベース、グローバル展開の状況を詳述。

【編集部後記】

グローバル取引所の撤退が相次ぐ中で、みなさんはどの取引所を選んでいますか?規制の厳しさは一見不便に感じるかもしれませんが、それは同時に私たちの資産を守る盾でもあります。

一方で、規制コストが高すぎると選択肢が狭まり、イノベーションが阻害される懸念も。この「保護」と「自由」のバランスについて、ぜひみなさんの率直な意見を聞かせてください。日本の暗号資産市場は今、大きな転換点に立っています。私たちも一緒に、この変化の意味を考えていきたいと思います。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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