資産運用会社VanEckは2026年1月9日にブログ記事を公開し、2050年までにビットコイン1枚が約290万ドルになる可能性を示す長期フレームワークを提示した。同社のデジタル資産リサーチ責任者であるマシュー・シーゲルとシニア投資アナリストのパトリック・ブッシュが執筆した「ビットコイン長期資本市場想定」と題されたリサーチブログでは、2050年までの年率リターンを約15%と推定している。
ベースケースは、ビットコインが国際貿易決済量の5%から10%を処理し、中央銀行が準備金の一部をビットコインに配分することを前提としている。同社は長期的な年率ボラティリティを40%から70%の範囲でモデル化し、これをフロンティア市場に匹敵する範囲としている。ポートフォリオ配分については、1%から3%の範囲が分散ポートフォリオのリスク調整後リターンを改善してきたと分析している。
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Asset manager VanEck explains how one bitcoin could be worth $2.9 million by 2050
【編集部解説】
VanEckが示した290万ドルという数字は、単なる価格予測ではなく、25年間の構造変化を前提とした「評価モデル」です。重要なのは、同社が3つのシナリオを提示している点にあります。
ベアケース(弱気シナリオ)では13万ドル、ベースケースでは290万ドル、ブルケース(強気シナリオ)では5,340万ドルという幅を持たせており、これは不確実性の高さを反映しています。2025年12月31日時点のビットコイン価格は約8万8,000ドルですから、ベアケースでさえ現在価格を上回る設定になっています。
この評価モデルの前提には2つの大きな「ピボット」があります。1つは決済レイヤーとしての機能で、グローバル貿易の5〜10%をビットコインが処理するという想定です。もう1つは準備資産としての役割で、中央銀行がバランスシートの2.5%をビットコインに配分するというシナリオです。
現実には、ビットコインは現時点で貿易決済にほとんど使われておらず、主要な中央銀行も準備資産として保有していません。VanEck自身も、このベースケースが「規制の明確化、運用インフラ、政治的受容」といった、まだ実現していない条件に依存していることを認めています。
注目すべきは、VanEckがビットコインの価値ドライバーとしてグローバルM2(マネーサプライ)との相関を重視している点です。同社の分析では、ビットコイン価格がグローバルM2と強い相関関係を示しており、株式や商品よりもグローバル流動性との連動性が強いことを示唆しています。
ポートフォリオ配分の観点では、1〜3%という比較的小規模な配分を推奨しています。60/40ポートフォリオ(株式60%、債券40%)に3%のビットコインを加えることで、歴史的にシャープレシオ(リスク調整後リターン)が改善されたというデータを提示しています。
ただし、VanEckは2025年の価格予測を外した過去もあります。同社は18万ドルを予測していましたが、実際のピークは12万6,000ドルにとどまり、2025年末は10万ドルを下回りました。長期予測の難しさを示す一例と言えるでしょう。
他の著名な予測と比較すると、MicroStrategyのマイケル・セイラーは300万〜4,900万ドル、Ark Investのキャシー・ウッドは2030年時点で120万ドル(以前の150万ドルから下方修正)としており、VanEckのベースケースは比較的中庸な位置づけです。
このレポートを読み解く上で重要なのは、これが投資助言ではなく、あくまで「シミュレーションに基づく仮説」である点です。25年という長期の予測には、技術革新、規制環境、地政学リスク、競合技術の出現など、無数の不確実性が存在します。
【用語解説】
ベースケース/ベアケース/ブルケース
金融予測における3つのシナリオ。ベースケースは最も可能性が高いと考えられる標準シナリオ、ベアケースは悲観的な弱気シナリオ、ブルケースは楽観的な強気シナリオを指す。VanEckはこの3つを用いて13万ドルから5,340万ドルという幅広い予測レンジを示している。
シャープレシオ
リスク調整後リターンを測る代表的な指標。投資で取ったリスク1単位あたりにどれだけのリターンが得られたかを示す。数値が高いほど効率的な投資とされ、ポートフォリオのパフォーマンス評価に広く用いられる。
グローバルM2(マネーサプライ)
世界全体の通貨供給量を示す経済指標。現金、預金、短期金融商品などを含む広義の通貨量で、中央銀行の金融政策や経済活動の規模を反映する。VanEckはビットコイン価格がこの指標と強い相関があると分析している。
60/40ポートフォリオ
伝統的な資産配分戦略で、株式60%、債券40%で構成されるポートフォリオ。リスクとリターンのバランスが取れた投資手法として機関投資家や年金基金などで広く採用されている。
準備資産
中央銀行や政府が外貨準備や金融安定のために保有する資産。従来は金、米ドル、ユーロなどの主要通貨が中心だが、VanEckは将来的にビットコインがこの役割を担う可能性を示唆している。
フロンティア市場
新興国市場よりもさらに発展段階が初期の金融市場。流動性が低く、規制も未整備なため高いリターンが期待できる一方、ボラティリティも極めて高い。VanEckはビットコインのボラティリティをこれに例えている。
【参考リンク】
VanEck(バンエック)(外部)
1955年創業のニューヨーク拠点の資産運用会社。運用資産約1,000億ドル規模で金ETFのパイオニア。デジタル資産分野にも早期参入
MicroStrategy(外部)
ビジネスインテリジェンス企業。CEOマイケル・セイラー主導で企業として最大規模のビットコイン保有者となっている
Ark Invest(アーク・インベスト)(外部)
CEOキャシー・ウッド率いる破壊的イノベーション特化の資産運用会社。ビットコイン含む暗号資産の独自長期予測を発表
【参考記事】
Bitcoin Long-Term Capital Market Assumptions(外部)
VanEck公式ブログの元レポート。3つのシナリオ、M2相関分析、中央銀行の準備資産配分想定などの詳細データを掲載
Bitcoin to $2.9M by 2050? VanEck outlines bold base-case scenario(外部)
AMBCryptoの報道。VanEckの予測が評価モデルであることを強調。2025年予測が外れた実績にも言及
Bitcoin may take 2.5% of central bank reserves, hit $2.9m by 2050(外部)
MEXCの分析記事。中央銀行による準備資産2.5%配分という前提条件を詳述。現在価格との比較データも提示
【編集部後記】
25年後のビットコイン価格予測、皆さんはどう受け止められますか。VanEckの分析で興味深いのは、13万ドルから5,340万ドルという予測幅の広さです。これは逆に言えば、誰も確実な未来を見通せないという誠実さの表れかもしれません。
私自身も「準備資産として中央銀行が保有する」という前提には、かなりの飛躍を感じています。技術的な可能性と、実際の制度や政治がそれを受け入れるかは別問題ですよね。皆さんの業界では、ビットコインをどう捉えていますか。決済手段として実用化は進んでいるのでしょうか。ぜひ現場の声を聞かせていただきたいです。

































