Ethereumの共同創設者であるヴィタリック・ブテリンは2026年1月12日、X上でEthereumが「walkaway test(放置テスト)」に合格する必要があると投稿した。これは、コア開発者が大規模なアップグレードを停止しても、プロトコルが安全に稼働し続けられる状態を指す。
ブテリンは量子耐性を最優先事項とし、数十年にわたる暗号学的安全性の確保を主張した。また、毎秒数千のトランザクションを処理できるスケーラビリティの実現を目標に掲げ、ZK EVM検証とPeerDASによるデータサンプリングを道筋として示した。さらに、ECDSA署名を超えた完全なアカウント抽象化、サービス拒否攻撃に耐性のある手数料スケジュール、プルーフ・オブ・ステーク経済とブロック構築における中央集権化への抵抗と検閲耐性の保護を挙げた。
ブテリンはプロトコルが毎年少なくとも1つの目標を達成すべきだと述べた。
From:
Vitalik Buterin lays out ‘walkaway test’ for a quantum safe Ethereum
【編集部解説】
今回ヴィタリック・ブテリンが提唱した「walkaway test」は、Ethereumが「ossification(硬直化)」可能な状態に到達すべきという、一見逆説的な主張です。ブロックチェーンの世界では通常、継続的なアップグレードが進化の証とされますが、ブテリンは「アップグレードなしでも数十年安全に稼働できる状態」こそが真の成熟だと位置づけています。
この背景には、量子コンピューティングという差し迫った脅威があります。Buterinは2025年11月にも2028年までの量子耐性移行を呼びかけており、今回の投稿はその延長線上にあるものです。現在の暗号化技術は、解読に膨大な時間がかかることで安全性を担保していますが、量子コンピュータはこの前提を覆す可能性を持ちます。
技術的な柱として挙げられたZK-EVM(ゼロ知識証明を使った仮想マシン)とPeerDAS(ピア・データ可用性サンプリング)は、2026年1月初旬にも大きな進展が報じられた技術です。ZK-EVMはトランザクションの正当性を効率的に検証し、PeerDASは全ノードがすべてのデータを保持する必要性を排除します。これにより、毎秒数千のトランザクション処理が現実味を帯びてきました。
特に注目すべきは「アカウント抽象化」の完全実装です。現在Ethereumは楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)に依存していますが、これを超えることで、ソーシャルリカバリーやスマートコントラクトによるアカウント管理など、より柔軟なウォレット機能が実現します。
一方で、プルーフ・オブ・ステーク経済とブロック構築における中央集権化のリスクは、長期的な課題として残ります。検閲耐性を保ちながらスケーラビリティを達成するバランスは、今後のEthereumの存続を左右する重要な要素となるでしょう。
ブテリンが「年に少なくとも1つの目標達成」を求めたことは、段階的かつ着実にプロトコルを完成形へ導くための具体的なロードマップの必要性を示唆しています。
【用語解説】
walkaway test(放置テスト)
開発者がメンテナンスを停止しても、システムが安全かつ自律的に稼働し続けられるかを判定する基準。ブテリンはこれをブロックチェーンの真の成熟度を測る指標として提唱している。
量子耐性
量子コンピュータによる攻撃に耐えられる暗号技術の性質。従来の暗号は解読に膨大な時間がかかることで安全性を担保するが、量子コンピュータはこれを短時間で突破する可能性がある。
ZK-EVM(ゼロ知識証明仮想マシン)
トランザクションの内容を明かさずに正当性を検証できる技術をEthereum仮想マシンに統合したもの。プライバシーを保ちながら処理効率を向上させる。
PeerDAS(ピア・データ可用性サンプリング)
全ノードがすべてのブロックチェーンデータを保持する必要をなくし、データの一部をサンプリングすることで可用性を確保する技術。ノードの負荷軽減とスケーラビリティ向上に寄与する。
ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)
現在のブロックチェーンで広く使われている電子署名方式。楕円曲線暗号を利用してトランザクションの認証を行うが、量子コンピュータには脆弱性がある。
アカウント抽象化
ウォレットの機能をスマートコントラクトとして実装し、固定的な署名方式に依存しない柔軟なアカウント管理を実現する概念。ソーシャルリカバリーやガス代の代理支払いなどが可能になる。
ossification(硬直化)
プロトコルの仕様が固定され、それ以上の変更が行われなくなる状態。ブロックチェーンにおいては、完成度の高さと安定性の証として肯定的に捉えられることもある。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)
暗号資産を担保として預け入れた検証者がブロック生成権を得る合意形成メカニズム。Ethereumは2022年にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)から移行した。
検閲耐性
特定の権力や組織がトランザクションを恣意的に排除できない性質。分散型ネットワークの根幹をなす価値である。
【参考リンク】
Ethereum公式サイト(外部)
Ethereumの公式ポータルサイト。プロトコルの概要、開発者向けドキュメント、コミュニティ情報などを包括的に提供している。
Vitalik Buterin’s website(外部)
Ethereum共同創設者ヴィタリック・ブテリンの個人ブログ。技術的提案、研究論文、エッセイなどを公開している。
CoinDesk(外部)
本記事の掲載元である暗号資産・ブロックチェーン専門メディア。業界の最新ニュース、分析記事、市場データを提供する。
【参考記事】
Vitalik Buterin: Ethereum Must Pass “The Walkaway Test”(外部)
Yahoo Financeに掲載された記事。ブテリンが提唱する「walkaway test」の概念を詳しく解説している。
Ethereum Quantum Deadline: Vitalik Urges 2028 Migration(外部)
2025年11月にブテリンが提起した2028年までの量子耐性移行の緊急性について報じた記事。
ZK-EVM and PeerDAS: The Revolutionary Leap Creating …(外部)
2026年1月初旬に報じられたZK-EVMとPeerDASの技術的進展に関する記事。
Vitalik Buterin argues Ethereum must achieve ‘ossifiability’ to pass …(外部)
「ossification(硬直化)」というコンセプトの重要性を論じた記事。継続的なアップグレードではなく安定した最終形態を目指す意義を考察している。
【編集部後記】
「完成」を目指すことが、かえって革新的な挑戦になる―ブテリンの提案には、そんな逆説が込められています。ブロックチェーンは常に進化し続けるべきなのか、それとも「これで十分」と言える到達点があるのか。皆さんはどう考えますか?
量子コンピュータの脅威は2028年という具体的な時間軸で語られ始めています。この技術革新がもたらす変化は、Ethereumだけでなく、私たちが日常的に使うあらゆるデジタルサービスの安全性にも関わってきます。未来を「触る」前に、まず「備える」視点も大切かもしれません。この話題、一緒に追いかけていきませんか?


































