投資銀行のStandard Charteredは2026年2月13日、主要暗号通貨の価格予測を引き下げた。同行のデジタル資産調査責任者であるジェフ・ケンドリックは、ビットコインが今後数カ月で約50,000ドル、イーサリアムが1,400ドルまで下落すると予想している。
2026年末の目標価格はビットコインが100,000ドル、イーサリアムが4,000ドルに引き下げられた。従来の予測はビットコインが150,000ドル、イーサリアムが7,500ドルだった。2030年末の長期予測はビットコイン500,000ドル、イーサリアム40,000ドルで変更はない。
記事公開時点でビットコインは約67,900ドル、イーサリアムは約1,980ドルで取引されていた。ビットコインETFの保有量は2025年10月のピークから約100,000 BTC減少し、平均購入価格は約90,000ドルである。
ビットコインは年初から約25〜30%程度下落している。
From:
Standard Chartered sees bitcoin sliding to $50,000, ether to $1,400 before recovery
【編集部解説】
今回のStandard Charteredによる予測引き下げは、実は段階的に進行してきたものです。同行は2025年12月に2026年末目標を300,000ドルから150,000ドルへ半減させました。そして今回、わずか2カ月後にさらに100,000ドルへと引き下げています。この急速な修正は、暗号資産市場の予測がいかに難しいかを物語っています。
注目すべきは、ETFという新しい投資チャネルが市場に与える影響の大きさです。元記事によれば、2025年10月のピークから、ビットコインETFの保有量は約100,000 BTC減少しています。平均購入価格が90,000ドルという事実は、多くの機関投資家が含み損を抱えていることを意味します。これまで「押し目買い」の機会と捉えられていた価格下落が、今回は損切りの引き金になっている点が過去のサイクルとは異なります。
マクロ経済の視点も重要です。Kevin Warshが連邦準備制度理事会議長として初めてのFOMC会議を開催するのは2026年6月中旬と見られています。それまで利下げが期待できないという市場の見方が、リスク資産である暗号資産への資金流入を抑制しているのです。
しかし悲観一色ではありません。ケンドリックが指摘する通り、2022年のTerra/LunaやFTXのような大手プラットフォームの崩壊が今回は発生していない点は、市場の成熟を示唆しています。2月上旬の最悪時でもビットコインの下落率は約50%に留まり、供給量の半分は依然として利益圏内にあります。過去のサイクルと比較すれば、今回の調整は健全な範囲内と言えるでしょう。
同行が2030年末のビットコイン500,000ドル、イーサリアム40,000ドルという長期予測を維持している事実も見逃せません。短期的な乱高下はあっても、構造的な成長トレンドへの確信は揺らいでいないということです。ETFの登場により機関投資家の参入障壁が下がり、規制環境も整備されつつあります。この「痛みを伴う調整期」を乗り越えた先に、より強固な市場基盤が築かれる可能性があります。
今回の予測引き下げは、暗号資産が投機対象から本格的な資産クラスへと移行する過程で避けられない「正常化」のプロセスなのかもしれません。
【用語解説】
ETF(上場投資信託)
Exchange-Traded Fundの略。証券取引所に上場し、株式のように売買できる投資信託である。米国でビットコイン現物ETFが承認されて以降、機関投資家が暗号資産に投資する主要な手段となった。従来の暗号資産取引所を経由せず、既存の証券口座で暗号資産への投資が可能になる点が特徴だ。
FOMC(連邦公開市場委員会)
Federal Open Market Committeeの略。米国の金融政策を決定する機関である。連邦準備制度理事会の理事7名と地区連邦準備銀行総裁5名で構成され、政策金利や量的緩和などの金融政策を決定する。年8回開催され、その決定は世界の金融市場に大きな影響を与える。
含み損
保有している資産の現在価格が購入価格を下回っている状態を指す。実際に売却していないため損失は確定していないが、現時点で売却すれば損失が発生する状態である。記事では、ETFの平均購入価格が90,000ドルに対し、現在価格が67,900ドル前後であることから、投資家が約25%の含み損を抱えていると指摘されている。
Terra/Luna
2022年5月に崩壊した暗号資産プロジェクト。アルゴリズム型ステーブルコインTerraUSDとその担保トークンLunaで構成されていたが、ペッグが外れて価値が暴落し、約400億ドルの時価総額が消失した。暗号資産市場全体に大きな打撃を与えた事件である。
FTX
2022年11月に破綻した大手暗号資産取引所。創業者のサム・バンクマン=フリードによる顧客資産の不正流用が発覚し、急速に経営が悪化した。Terra/Lunaの崩壊と並び、暗号資産市場における信頼を大きく損なった出来事として記憶されている。
【参考リンク】
Standard Chartered Bank(スタンダードチャータード銀行)(外部)
英国に本拠を置く国際的な銀行グループ。デジタル資産調査部門で積極的な暗号資産市場の分析を行っている。
CoinDesk(外部)
暗号資産・ブロックチェーン専門メディア。業界で最も権威のあるニュースサイトの一つで市場データや分析記事を提供。
Federal Reserve(連邦準備制度)(外部)
米国の中央銀行制度。FOMCを通じて政策金利を決定し世界経済に大きな影響を及ぼす。
【参考記事】
Bitcoin Will Fall to $50K and Ethereum Will Hit $1,400 Before Recovery: Standard Chartered(外部)
Standard Charteredによる暗号資産価格予測の引き下げを報じる記事。ETFからの資金流出とマクロ経済の逆風が要因と解説。
Standard Chartered cuts bitcoin forecast in half(外部)
2025年12月時点での予測引き下げを報じる記事。2026年末目標を300,000ドルから150,000ドルへ半減させた背景を伝える。
One of bitcoin’s biggest bulls just slashed their forecast in half(外部)
ジェフ・ケンドリックが段階的に予測を引き下げてきた経緯を詳述。市場環境の変化を理解する上で重要な記事。
Kevin Warsh to Lead the Fed: Policy Implications(外部)
Kevin Warshの連邦準備制度理事会議長就任と政策的影響を分析。マクロ経済が暗号資産市場に与える影響を解説。
Kevin Warsh nominated as next Fed Chair(外部)
Kevin Warshの連邦準備制度理事会議長への指名に関する記事。彼の経歴と金融政策スタンスについて解説。
【編集部後記】
暗号資産市場のボラティリティは、私たちに「時間軸」の重要性を改めて問いかけているように感じます。50,000ドルへの下落予測と500,000ドルの長期目標——この二つの数字が同時に存在することに、この市場の本質が表れているのかもしれません。
みなさんは、このような調整期をどう捉えていますか? 短期的な価格変動に一喜一憂するのか、それとも構造的な変化に目を向けるのか。投資判断だけでなく、テクノロジーの未来を見据える上でも、この視点の違いは大きな意味を持つと思います。ぜひ、みなさんの考えを聞かせてください。





































