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FedEx、Hedera Councilに加盟─サプライチェーンの「紙の速度」を終わらせる一手

FedEx Corp.(NYSE: FDX)は2026年2月13日、Hederaネットワークのガバナンス機関であるHedera Councilへの加盟を発表した。Hedera Councilは、Fortune 500企業、銀行、Web3イノベーター、大学などで構成されるグローバルな統治機関である。

FedExは、グローバルサプライチェーンのデジタル進化を支える信頼性の高い分散型インフラの推進と、組織・法域を越えた安全なデータ検証によるクロスボーダー商取引の摩擦低減に取り組む。

FedEx Corp.のエグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高デジタル・情報責任者でありFedEx Dataworks社長のビシャル・タルワー氏は、サプライチェーンのデジタルトランスフォーメーションは不可避であり、Hederaが中立的でエンタープライズグレードの信頼レイヤーを提供すると述べた。Councilメンバーとして、FedExはHederaネットワーク上でノードを運用し、他のメンバーと同等の議決権を持つ。

From: 文献リンクFedEx Joins Hedera Council to Support the Future of Digital Global Supply Chains | Hedera

【編集部解説】

今回のニュースの核心は、年間売上高900億ドル規模を持つ世界最大級の物流企業FedExが、パブリック分散型台帳ネットワークHederaのガバナンス組織に正式メンバーとして参画したという点にあります。これは単なる技術提携やパートナーシップではなく、ネットワークのノード運用と議決権行使を伴う「ガバナンスへの直接関与」を意味します。

Hedera Councilは、定員最大39組織のグローバルなガバナンス機関で、2019年の発足以来メンバーは31組織にまで拡大しています。Google、IBM、Dell、LG、Deutsche Telekomなどの大手企業に加え、大学や金融機関も参加しています。メンバーは3年の任期制で、ネットワークのソフトウェア更新やトレジャリー管理など重要な意思決定に同等の投票権を持ちます。Hederaはこの仕組みにより、特定の企業や団体による支配を防ぐ「共謀耐性」のあるガバナンスモデルを実現しています。

Hederaが採用するハッシュグラフ技術は、一般的なブロックチェーンとは異なるDAG(有向非巡回グラフ)構造を持つ分散型台帳技術です。ゴシッププロトコルと仮想投票により非同期ビザンチン・フォールトトレランス(aBFT)を達成し、トランザクションの確定を数秒以内に完了させることが可能とされています。手数料も0.0001ドルからと低コストで予測可能なため、サプライチェーンにおける大量の輸送イベントの記録やトラッキングといった高頻度のユースケースに適しています。

FedExにとって今回の動きは突発的なものではありません。同社はBlockchain in Transportation Allianceの創設メンバーであり、2023年にはBlockchain Research InstituteおよびINSEADと共同でWeb3に関するコースを開発した実績もあります。また、FedEx Dataworksを中心にAIや機械学習を活用したサプライチェーンの可視化・最適化に取り組んでおり、今回のHedera Council加盟は、こうしたデータ駆動型戦略の延長線上に位置づけられます。

物流業界におけるDLT活用の可能性として注目すべき点は、異なる組織や法域をまたぐ「信頼された共有データ検証」の実現です。国際貿易では、出荷状況の証明、通関書類の検証、コンプライアンスチェックなど、複数の当事者間でデータの真正性を担保する必要があります。Hederaのアーキテクチャでは、イベントやトランザクションの公証をパブリックネットワーク上で行いつつ、運用データ自体は各企業の環境内に保持できるため、機密性と透明性の両立が期待されます。

一方で、留意すべき点もあります。現時点ではFedExがHedera上で具体的にどのようなアプリケーションを構築するのかは明らかにされていません。Council加盟はあくまでガバナンスへの参画であり、実用的なサプライチェーンソリューションの展開にはまだ距離がある可能性もあります。また、Hederaのネットワークノードは現在パーミッション型モデルで運用されており、Councilメンバーのみがノードを運用するという構造は、パブリックネットワークとしての分散性に対する議論の余地を残しています。

なお、2025年にはArrow Electronicsも同様にサプライチェーン強化を目的としてHedera Councilに加盟しており、物流・サプライチェーン領域からのCouncil参画が加速する傾向が見てとれます。FedExという世界的な物流インフラ企業の参画は、DLTが概念実証の段階を超え、実運用レベルでのサプライチェーン基盤として検討されつつあることを示す重要なシグナルといえるでしょう。

【用語解説】

Hedera Council(ヘデラ・カウンシル)
Hederaネットワークを統治するグローバルなガバナンス機関。定員最大39組織で構成され、メンバーはネットワークノードの運用、ソフトウェア更新の承認、トレジャリー管理などの意思決定に同等の議決権を持つ。任期は3年で、連続2期まで務めることができる。

DLT(Distributed Ledger Technology / 分散型台帳技術)
複数の参加者が同期されたデータのコピーを分散的に管理するデータベース技術の総称。ブロックチェーンはDLTの一形態だが、Hederaが採用するハッシュグラフのようにブロックチェーンとは異なる構造を持つDLTも存在する。

ハッシュグラフ(Hashgraph)
レモン・ベアード博士が考案した分散型合意アルゴリズム。DAG(有向非巡回グラフ)構造を用い、「ゴシップ・アバウト・ゴシップ」プロトコルと仮想投票により、非同期ビザンチン・フォールトトレランス(aBFT)を達成する。ブロックチェーンと比較して高いスループットと低レイテンシが特徴。

aBFT(Asynchronous Byzantine Fault Tolerance / 非同期ビザンチン・フォールトトレランス)
分散システムにおいて、一部のノードが悪意を持って動作した場合でも、ネットワーク全体として正しい合意に到達できることを保証するセキュリティ特性。通信の遅延やネットワーク障害が発生しても合意形成が可能。

FedEx Dataworks
FedEx Corp.のデジタルトランスフォーメーションを推進するデータ・テクノロジー部門。AIや機械学習を活用し、サプライチェーンの可視化、予測分析、顧客向けデジタルソリューションの開発を担う。

【参考リンク】

Hedera Council公式サイト(外部)
Hedera Councilのガバナンス構造、メンバー一覧、パートナーシッププログラムの詳細を確認できる公式ページ。

Hedera公式サイト(外部)
Hederaネットワークのサービス、ユースケース、開発者向けリソース、ロードマップなどの包括的な情報を提供。

FedEx Technology and Innovation Policy Perspectives(外部)
FedExのブロックチェーン戦略、FedEx Dataworksの取り組み、デジタルトランスフォーメーション方針が記載された公式ページ。

【参考記事】

FedEx Joins Hedera Council to Support the Future of Digital Global Supply Chains(外部)
FedEx公式ニュースルームによるHedera Council加盟の発表。プレスリリース全文を掲載。

FedEx Enters Hedera Network Council With Eye on Supply Chain Transformation(外部)
Decryptによる報道。Google、IBM、Dellなど既存Councilメンバーとの関係やHBARの市場動向にも言及。

FedEx Joins Hedera Council to Transform Global Supply Chain Through DLT(外部)
Blockonomiによる詳細分析。FedExのデジタル戦略とHederaの技術的特性を掘り下げた解説記事。

Arrow Electronics Joins Hedera Council: Driving Supply Chain Innovation with DLT(外部)
2025年のArrow ElectronicsによるHedera Council加盟。サプライチェーン領域でのDLT活用の先行事例。

Hedera Council Expands Global Engagement with New Partnership Program(外部)
Hedera Councilのパートナーシッププログラム拡大の発表。Councilの成長経緯と構造を解説。

FedEx Technology and Innovation Policy Perspectives(外部)
FedExのブロックチェーン・Web3戦略の全体像。Blockchain in Transportation Alliance参画の経緯も記載。

【編集部後記】

皆さんが日々利用する物流サービスの裏側で、荷物の追跡や通関手続きに今もなお紙ベースのプロセスが残っていることをご存じでしょうか。FedExのような巨大企業がDLTのガバナンスに参画するということは、この「紙の速度」がいよいよ変わり始める兆しなのかもしれません。サプライチェーンの進化は、届く荷物の向こう側にある世界の仕組みそのものを変えていく話題です。皆さんはこの変化をどう感じますか。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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