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Metaplanet 2025年度決算:ビットコイン評価損6.6億ドルでも「バランスシートは堅固」—売上高738%増の裏側

ビットコイン・トレジャリー企業Metaplanetは2026年2月16日、2025年度(2025年12月31日時点)の決算を発表した。純損失は950億円(約6億1900万ドル)で、2024年度の純利益44億4000万円(約2890万ドル)から一転した。損失の主因は、保有ビットコインの評価額下落1022億円(6億6580万ドル)である。

同社はこれを営業外費用に分類し、キャッシュフローや営業活動への影響はないとした。自己資本比率は90.7%で、バランスシートは「堅固」と説明している。2025年度の売上高は89億1000万円(約5800万ドル)で前年度比738%増、営業利益は62.9億円で同1,695%増となった。

ビットコイン関連事業の売上高は84億7000万円(約5,500万ドル)、営業利益は71億9000万円(約4,700万ドル)で、ビットコインのオプション取引によるプレミアム収入が主な収益源である。

From: 文献リンクMetaplanet 2025 Annual Report: $665.8M Bitcoin Loss, But Balance Sheet Remains ‘Robust’

【編集部解説】

Metaplanetは、もともと東京に拠点を置くホテル運営会社でした。2020年のコロナ禍で旅行業界が打撃を受けたことを契機に、CEOサイモン・ゲロビッチ氏(元Goldman Sachs デリバティブトレーダー)の主導のもと、2024年にビットコインを中核に据えた「ビットコイン・トレジャリー企業」へと大胆に転換しています。この戦略は、米国のStrategy(旧MicroStrategy)がマイケル・セイラー氏の下で2020年から推進してきたモデルに着想を得たもので、Metaplanetは「アジア版MicroStrategy」とも呼ばれています。

今回の決算で注目すべきは、「営業利益は大幅に伸びているにもかかわらず、最終損益が巨額の赤字になった」という一見矛盾した構図です。この乖離の原因は会計処理にあります。日本の会計基準では、法人が保有する暗号資産について期末時点の時価評価が求められ、未実現の評価損益も損益計算書に反映されます。Metaplanetは2025年を通じてビットコインを積極的に購入し、保有量を年初の1,762 BTCから年末の35,102 BTCへと約20倍に拡大しましたが、第4四半期のビットコイン価格下落により、約1022億円の評価損が営業外費用として計上されました。これはキャッシュの流出を伴わない帳簿上の損失であり、同社が「バランスシートは堅固」と主張する根拠もここにあります。

収益面では、売上高の約95%がビットコイン関連事業から生み出されています。その中心は「Bitcoin Income Generation」と呼ばれる事業で、ビットコインのキャッシュ・セキュアード・プット・オプション(現金担保付きプットオプション)を売却し、プレミアム収入を得るという手法です。これは単にビットコインを保有するだけでなく、そのボラティリティを収益源として活用するモデルであり、従来のホテル・メディア事業に代わる同社の主力事業となっています。

同社はまた、独自のKPIとして「BTC Yield(BTCイールド)」を導入しています。これは希薄化後1株当たりのビットコイン保有量の成長率を測定する指標で、2025年度は568%を記録しました。2026年度の業績見通しとして、売上高160億円(前年比約80%増)、営業利益114億円(同約81%増)を掲げており、ビットコイン戦略の継続を明確にしています。さらに、2027年までに210,000 BTC(ビットコイン総供給量の約1%)の保有を目標としていることも報じられています。

一方、この戦略には明確なリスクも存在します。同社の財務業績はビットコイン価格に極めて強く連動しており、長期的な価格下落局面では評価損が累積し続ける可能性があります。また、資金調達を株式発行や優先株、ビットコイン担保ローンに依存しているため、市場環境の悪化時に資金調達コストが上昇するリスクも否定できません。

規制環境も変化の渦中にあります。金融庁では2025年に暗号資産制度の見直しに関するWGで議論が進み、暗号資産を投資商品として整理する方向性(FIEA側での規律整備を含む)が検討されています。税制面では、金融庁の令和8(2026)年度税制改正要望でも、暗号資産課税について分離課税の導入を含めた見直しが検討されています。こうした規制の明確化は、Metaplanetのようなビットコイン・トレジャリー企業にとって追い風となる可能性がある一方で、情報開示やインサイダー取引規制の強化への対応も求められることになります。

Metaplanetの事例は、企業がビットコインを単なる投資対象ではなく、事業の中核に据えるという新たな経営モデルの実験でもあります。ホテル企業からビットコイン・トレジャリー企業への転換という前例のない挑戦が、日本の企業戦略や暗号資産規制にどのような影響を与えていくのか、今後も注視が必要です。

【用語解説】

ビットコイン・トレジャリー企業(Bitcoin Treasury Company)
法人の準備資産(トレジャリー)としてビットコインを中核に据え、その蓄積と運用を主要事業とする企業形態。米国のStrategy(旧MicroStrategy)が2020年に先駆けとなった。

BTC Yield(BTCイールド)
Metaplanetが導入した独自のKPI。希薄化後の1株当たりビットコイン保有量がどれだけ成長したかを百分率で示す指標である。従来の1株当たり利益(EPS)に代わり、ビットコイン建てでの株主価値の増加を測定する。

キャッシュ・セキュアード・プット・オプション(Cash-Secured Put Option)
オプション取引の一種。プットオプション(売る権利)を売却し、その対価としてプレミアム(権利料)を受け取る戦略である。売却者は、行使価格でビットコインを買い取る義務を負うが、その資金を現金で確保しておくことでリスクを管理する。Metaplanetはこの手法を「Bitcoin Income Generation」事業の中核に据えている。

時価評価(Mark-to-Market)
保有資産を期末時点の市場価格で評価し、帳簿上の損益を計上する会計手法である。日本の会計基準では、法人が保有する暗号資産にこの処理が求められ、未実現の評価損益も損益計算書に反映される。

自己資本比率(Equity Ratio)
総資産に占める純資産(自己資本)の割合を示す財務指標である。数値が高いほど負債への依存度が低く、財務基盤が安定していることを意味する。Metaplanetは2025年12月期末時点で90.7%と報告した。

営業外費用(Non-Operating Expense)
企業の本業以外の活動から生じる費用である。Metaplanetの場合、保有ビットコインの評価損がこれに分類され、営業利益には影響しないが、最終的な純損益には反映される。

【参考リンク】

Metaplanet公式サイト(外部)
東京証券取引所上場(3350)の日本初の上場ビットコイン・トレジャリー企業。IR情報や戦略方針を公開している。

Metaplanet Investor Relations(IR情報)(外部)
決算報告書、開示資料、業績見通しなど投資家向け情報を集約。2025年度決算資料もここから参照できる。

Bitcoin Treasuries — Metaplanet(外部)
上場企業・政府のビットコイン保有量を追跡するデータサイト。Metaplanetの保有BTC数や時価総額比較を確認できる。

Strategy(旧MicroStrategy)公式サイト(外部)
2020年にビットコインを法人準備資産として採用した先駆者。世界最大の法人ビットコイン保有者である。

金融庁(FSA)(外部)
暗号資産制度見直しに関するWGで議論が進み、報告書(WG報告)が2025年12月10日に公表された。

【参考動画】

MetaplanetのCEOサイモン・ゲロビッチ氏がCoin Storiesに出演し、ホテル事業からビットコイン・トレジャリー企業への転換の経緯、日本市場における暗号資産の税制上の課題、戦略的Bitcoin準備金の構想について語ったインタビュー。

【参考記事】

Metaplanet Revenue Jumps 738% After Pivot to Bitcoin Income Model(外部)
売上高738%増の詳細と収益の95%がBTCオプション由来であることを報道。2026年度見通しも記載。

Metaplanet Scores Explosive Revenue and Profit Margins in 2025(外部)
BTC保有20倍増、評価損¥102.2B、Bitcoin Income Generation事業の詳細、210,000 BTC目標を詳報。

Metaplanet posts 95 billion yen net loss on bitcoin valuation slide(外部)
純損失950億円、自己資本比率90.7%、2026年度見通し(売上高160億円、営業利益114億円)を報告。

Metaplanet revenue jumps 738% as Bitcoin generates 95% of sales(外部)
BTC保有1,762→35,102 BTC、32億ドル超の資金調達、法定通貨希薄化ヘッジ戦略について報道。

From budget hotel operator to Japan’s MicroStrategy: What is Metaplanet?(外部)
ホテル企業からBTC戦略への転換経緯、CEOの経歴、54億ドル調達の「210 Million Plan」を詳述。

【編集部後記】

ホテル企業がビットコインを事業の中核に据えるという転換は、「企業とは何か」という問いそのものを揺さぶっているように感じます。ビットコインのボラティリティを収益源に変えるオプション戦略、株主価値をBTC建てで測るという発想——こうした試みは、従来の企業財務の常識とは大きく異なります。

みなさんは、この新しい企業モデルにどのような可能性やリスクを感じますか? ぜひご意見をお聞かせください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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