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Zora「Attention Markets」始動—トレンド売買時代とSocialFiの行方

[更新]2026年2月20日

2026年2月18日、分散型SocialFiプラットフォームZoraがSolanaチェーン上で「Attention Markets」を開始した。これはSolanaが自身のXアカウントで発表した情報である。

トレーダーはネットワーク上のキーワード、トピック、ハッシュタグ、トレンドを取引対象とし、話題が拡大する前に「Trends」を作成してリアルタイムで損益を追跡できる。Zora共同創業者のJacob Horneによると、Trendsの投稿には1 SOLが必要で、スパム抑止を目的としている。Trends自体にクリエイター報酬はないが、Trends配下に「Pairs」を作成することでクリエイターインセンティブを得られる。

またZoraは「Attention Economist」の求人を公開しており、TikTok、Instagram Reels、YouTube Shorts、Xなどのプラットフォームにおけるトレンド動向の追跡を担当する。

From: 文献リンクZora Launches Attention Markets on Solana and Hires ‘Attention Economists’ | KuCoin

【編集部解説】

今回のZoraによるAttention Markets立ち上げは、ブロックチェーン業界で急速に形成されつつある「アテンション経済の金融化」という潮流を象徴する動きです。

Zoraは2020年に元Coinbaseプロダクトマネージャーのジェイコブ・ホーンらが設立したプラットフォームで、当初はNFTマーケットプレイスとしてスタートしました。2025年4月にはBase(CoinbaseのEthereum L2ネットワーク)上でZORAトークンを発行し、同年7月にはCoinbaseウォレットのBase App統合を経て、投稿がそのまま取引可能なトークンになる「Creator Coins」で注目を集めた経緯があります。

今回のAttention Marketsは、そのクリエイター経済モデルをさらに抽象化したものといえます。個別のクリエイターやコンテンツではなく、「トレンドそのもの」を取引対象にしています。選挙結果やスポーツの勝敗といった二項対立的なイベントを扱う従来の予測市場とは異なり、ミーム、ハッシュタグ、バイラルな文化的瞬間など「人々の関心の流れ」にポジションを取る仕組みです。

注目すべきは、ZoraがAttention MarketsのローンチにあたりSolanaを選択した点です。Zoraは2026年1月にZORAトークンをSolana上に上場しており、Xプロフィールの所在地も「Solana」に変更していますが、Baseからの撤退を公式に表明したわけではありません。Solanaのブロック生成速度の速さとトランザクションコストの低さは、刻一刻と変化するトレンド市場において、高頻度の取引と迅速な価格更新を可能にします。一方で、この移行はBaseコミュニティから批判も受けています。Baseのミームコイン「Degen」開発者のヤツェク・トロチンスキはSolanaへの移行を批判し、別の開発者からはBaseから価値を「搾取」したとの声も上がりました。Base開発者のジェシー・ポラックは、ZoraのクリエイターツールはBase上で引き続き稼働していると述べています。

競合環境も急速に形成されています。Zoraのローンチの約1週間前、予測市場大手のPolymarketがKaito AIと提携し、独自のアテンション市場を2026年3月から展開すると発表しました。Kaito AIはX、TikTok、Instagram、YouTubeなどのソーシャルデータを集約し、「マインドシェア」と「センチメント」という2つの指標で注目度を定量化する技術を持っています。Polymarketは2026年1月に76億6000万ドルの取引量を記録しており、その規模でアテンション市場に参入する影響は大きいと考えられます。

さらに、2026年1月にはBase上で展開予定のスタートアップNoiseがParadigm主導で710万ドルのシードラウンドを完了しています。Noiseはトレンドの「持続的な関連性」に賭けるという、やや異なるアプローチを取っており、自らを「トレンドの株式市場」と位置付けています。

ただし、現時点ではZoraのAttention Marketsの初期実績は限定的です。CoinDeskの報道によれば、主力の「attentionmarkets」トークンの時価総額はローンチ直後で約7万ドル、取引量は約20万ドルにとどまり、他の多くのトレンド市場は初日に時価総額1万ドルを超えることができませんでした。

この分野には重要なリスクも存在します。まず、ソーシャルメディア指標に基づく市場は、ボットによる人為的なエンゲージメント操作や組織的な情報操作に対して脆弱です。一部のアクターが中間指標を事前に把握できる情報の非対称性も懸念されています。また、アテンション市場が実質的に「文化的事象への賭け」である以上、各国のギャンブル規制との関係も不透明です。

Zoraが「Attention Economist」という新たな職種を設けた点も興味深い動きです。TikTokやYouTube Shortsなどのプラットフォーム横断でトレンドの動向を追跡・分析する専門家を置くことは、この市場が単なる投機の場ではなく、構造的なデータ基盤を必要としていることを示しています。

長期的な視点では、アテンション市場は「人々が何に関心を持っているか」をリアルタイムで可視化・価格発見する仕組みとして、マーケティングやメディア分析、さらにはAIのトレーニングデータとしての応用可能性を秘めています。一方で、人間の関心そのものを金融商品化することの倫理的な問題は、今後さらに議論が深まるでしょう。

【用語解説】

Attention Markets(アテンション市場)
インターネット上のトレンド、ミーム、ハッシュタグなどの「注目度」をトークン化し、売買可能にする仕組みである。従来の予測市場が選挙結果やスポーツの勝敗など二項対立的なイベントを対象とするのに対し、アテンション市場は文化的関心の増減そのものに対してポジションを取る。

SocialFi
ソーシャルメディアとDeFi(分散型金融)を融合させた概念である。ユーザーのソーシャル活動(投稿、フォロー、エンゲージメントなど)に金融的インセンティブを組み込み、コンテンツやアテンションを直接的に収益化する仕組みを指す。

Trends / Pairs
ZoraのAttention Marketsにおける2つの基本構造である。Trendsはトピックやテーマに紐づく市場そのもので、作成には1 SOLが必要である。PairsはTrends配下に作成されるサブトークンで、クリエイターインセンティブの対象となる。

Creator Coins(クリエイターコイン)
個々のクリエイターのプロフィールやコンテンツに紐づく取引可能なトークンである。Zoraは2025年7月にBase上でこの仕組みを展開し、投稿がそのまま取引可能なERC-20トークンになるモデルを構築した。

マインドシェア(Mindshare)
特定のトピックがソーシャルメディア上で占める話題の割合を定量化した指標である。Kaito AIがX、TikTok、Instagram、YouTubeなどのデータを集約して算出する。

Attention Economist(アテンション・エコノミスト)
Zoraが新たに求人を出した職種である。TikTok、Instagram Reels、YouTube Shorts、Xなど複数プラットフォームを横断して、トレンドの発生・拡大を追跡・分析する役割を担う。

Base
Coinbaseが開発したEthereum Layer 2ネットワークである。OP Stack(Optimismの技術基盤)上に構築されており、低コスト・高速なトランザクションを特徴とする。Zoraは2025年にBase上で主要な活動を展開していた。

【参考リンク】

Zora公式サイト(外部)
分散型SocialFiプラットフォーム。NFTからCreator Coins、Attention Marketsへと進化を続ける。

Zora Attention Markets(取引ページ)(外部)
Solana上で稼働するAttention Marketsの取引インターフェース。トレンドの時価総額や取引量を確認できる。

Zora公式ドキュメント(Coins Protocol)(外部)
ZoraのCoinsプロトコル技術仕様。Creator Coinsの仕組みやUniswap V4連携などを解説している。

Polymarket公式サイト(外部)
ブロックチェーンベースの予測市場大手。Kaito AIとの提携で2026年3月からアテンション市場を展開予定。

Kaito AI公式サイト(外部)
AI活用のWeb3情報分析プラットフォーム。ソーシャルデータからマインドシェアとセンチメントを定量化する。

Noise公式サイト(外部)
トレンドの持続的関連性に賭けるアテンション市場。Paradigm主導で710万ドルを調達済み。

Solana公式サイト(外部)
高速・低コストのLayer 1ブロックチェーン。ZoraがAttention Marketsの展開先として選択した。

【参考記事】

Zora moves onto Solana with “attention markets” for trading internet trends — CoinDesk(外部)
ローンチ初期の取引データやBaseコミュニティの反応を含むCoinDeskの詳報。戦略的転換を多角的に分析。

Zora launches ‘attention markets’ on Solana — The Block(外部)
Trends/Pairsの具体例や競合Noiseへの言及を含むThe Blockの報道。アテンション市場の競争環境を俯瞰。

Polymarket to let users wager on brand popularity and public opinion in Kaito AI tie-up — The Block(外部)
Polymarketの月間取引量76億6000万ドルやKaito AI提携の詳細を報じたThe Blockの記事。

Paradigm leads $7.1 million seed round for attention market Noise — The Block(外部)
Noiseの710万ドルシードラウンドやベータ版での1,300人超ユーザーの実績を報じたThe Blockの記事。

Zora Unveils Attention Markets on Solana, Follows Polymarket — CryptoNewsZ(外部)
ZORAトークンの価格動向やPolymarket×Kaito AIとの時系列的な関係を整理した報道。

【編集部後記】

みなさんが日々SNSで目にしているトレンドやミーム。それが金融商品として取引される時代が始まろうとしています。「何がバズるか」という直感に経済的な価値がつくとしたら、私たちとインターネットの関係はどう変わるのでしょうか。

アテンション市場はまだ実験段階ですが、この動きの先に何があるのか、一緒に見守っていければと思います。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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