2026年2月20日、SBI Holdingsは個人投資家向けブロックチェーン型債券「SBI START Bonds」の発行を発表した。発行総額は100億円(約6,450万ドル)で、BOOSTRYの「ibet for Fin」を使用してオンチェーン上で管理される。年利は1.85%〜2.45%で半年ごとに支払われ、償還期間は3年だ。
SBI VC Tradeに口座を持つ国内居住の個人・法人投資家で10万円以上を購入した者には、購入金額に応じたXRPが報酬として付与される。報酬は発行時(2026年3月24日)および2027年3月24日、2028年3月24日、2029年3月23日の各年次利払日に分配される予定だ。3月25日から大阪デジタル取引所の「START」私設取引システムで二次流通が開始される。
SBI Holdingsは2016年にRippleとパートナーシップを締結しており、会長兼CEOの北尾吉孝氏によるとRipple Labsの株式を約9%保有している。
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Japan’s SBI to Issue 10 Billion Yen Onchain Bond With XRP Rewards for Retail Investors
【編集部解説】
今回のSBI START Bondsが持つ本質的な意義は、「債券」という最も古典的な金融商品が、ブロックチェーン上で個人投資家向けに完全電子化された点にあります。従来の社債は、日本証券保管振替機構(JASDEC)という中央集権的なシステムで管理されていましたが、今回はBOOSTRYが開発した「ibet for Fin」プラットフォームを使い、発行から管理、償還まで全てオンチェーン上で完結します。これは単なる「デジタル化」ではなく、金融インフラそのものの置き換えを意味します。
注目すべきもう一つのポイントは、XRPによる報酬設計です。SBI公式資料によれば、XRP報酬は発行時(2026年3月24日)に加え、2027年3月24日・2028年3月24日・2029年3月23日の年次利払日(3月分のみ)の計4回にわたって分配される予定です。年2回ある利払日のうち9月側への付与は一次資料に記載がなく、各回の付与額は利払日が近づいた時点でプレスリリースにて発表されるとされています。「固定利付き債」に「暗号資産のインセンティブ」を組み合わせた構造は、日本の債券市場では前例のない試みであり、従来の債券投資に関心がなかったXRP保有者や暗号資産ユーザーを規制された金融商品へ誘引する効果が期待できます。
一方で、XRP報酬の経済的な規模感には冷静な目が必要です。CoinDeskが参照したSBI証券のプロダクトページには「10万円につきXRP200円相当」との記載がありますが、これが1回あたりの付与額なのか複数回分の合計なのかは現時点では確定していません。XRPの価格変動リスクもあるため、報酬の実質価値は将来にわたって不確定であることは念頭に置いておく必要があります。
日本のセキュリティトークン市場全体の文脈で見ると、この動きの重要性がより鮮明になります。2025年8月時点で日本のセキュリティトークンの累積発行額は1,938億円(約12.7億ドル)に達しており、Mizuho Trust BankやNomura Holdingsが2023年末以降セキュリティトークンを発行してきており、MUFGも個人投資家向けプラットフォーム「ASTOMO」を展開するなど、メガ金融機関が一斉にこの領域へ参入しています。SBIは今回、そこにXRP報酬という独自の差別化軸を加えました。
規制面においても、追い風が吹いています。金融庁は2025年11月7日、FinTech実証実験ハブ内にブロックチェーン技術を活用した決済分野に特化した支援フレームワーク「決済高度化プロジェクト(PIP: Payment Innovation Project)」を設立しました。クロスボーダー送金の効率化やセキュリティトークンのDvP決済など、ブロックチェーンを活用した実証実験を支援する体制が整いつつあります。SBIの今回の取り組みは、こうした規制環境の整備と歩調を合わせたものと理解できます。
長期的な視点で見れば、今回の事例は「XRPの実用性の証明」という側面も持ちます。SBIは2016年のRippleとの提携以来、株主配当へのXRP活用やフィリピンへのXRP送金支援など、一貫してXRPを実金融サービスに組み込んできました。さらに現在、RippleとはRLUSDステーブルコインの日本展開に向けたMOUも締結済みです。今回の債券発行は、その一連の戦略的布石の最新章と捉えるべきでしょう。
潜在的なリスクとして意識しておきたいのは、参加資格の制限です。XRP報酬を受け取るにはSBI VC Tradeへの口座開設が必要で、かつ国内居住者限定です。SBIのエコシステム外の投資家には恩恵が届かない設計になっており、SBIグループへの顧客囲い込みという側面も否定できません。また、セキュリティトークン市場の二次流通はまだ黎明期であり、大阪デジタル取引所のSTARTシステムが十分な流動性を確保できるかどうかも、今後の注目点のひとつです。
【用語解説】
セキュリティトークン(ST債)
有価証券をブロックチェーン上でトークン化したものだ。株式や社債など従来の金融商品をデジタル化し、発行・管理・流通をオンチェーンで完結させる。日本では金融商品取引法の規制下に置かれ、投資家保護の枠組みが適用される。
オンチェーン(On-chain)
ブロックチェーンのネットワーク上で直接処理・記録されることを指す。中央管理者を介さず、取引履歴が改ざん不可能な形で保存されるため、透明性と信頼性が高い。
私設取引システム(PTS)
証券取引所を介さずに有価証券の売買を行う電子取引システムだ。取引所に比べて柔軟な運営が可能で、大阪デジタル取引所が運営する「START」はセキュリティトークンに特化したPTSとして機能する。
RLUSD
Rippleが発行する米ドル連動型のステーブルコインだ。1RLUSD=1米ドルに価値が固定されており、XRPレジャーおよびイーサリアムのブロックチェーン上で動作する。SBI HoldingsとRippleは2025年8月、日本国内でのRLUSD展開に向けたMOUに署名している。
Payment Innovation Project(PIP)
金融庁(FSA)が承認した、国内大手金融機関5社が参加するブロックチェーン決済のパイロットプログラムだ。国債や上場株式を含む有価証券のオンチェーン決済の実証実験として2026年2月に始動した。
【参考リンク】
SBI Holdings公式サイト(外部)
SBI START Bondsを発行する日本最大級の金融コングロマリット。証券・銀行・保険・暗号資産など幅広い金融サービスを展開する。
BOOSTRY公式サイト(外部)
「ibet for Fin」を開発・運営する野村HD設立のエンタープライズ向けブロックチェーン企業。日本のST市場の基盤整備をリードする。
SBI VC Trade公式サイト(外部)
SBI Holdingsの暗号資産交換業子会社。XRP報酬受け取りにはSBI VC Tradeへの口座開設が必要で国内居住者限定。
Ripple Labs公式サイト(外部)
XRPを開発・推進するアメリカの企業。SBI Holdingsが株式の約9%を保有し、国際送金やブロックチェーン決済インフラを提供する。
JASDEC(日本証券保管振替機構)公式サイト(外部)
社債・株式の保管と振替決済を一元管理する日本の中央機関。SBI START BondsはJASDECに替わりブロックチェーンで管理される。
【参考記事】
MUFG Enters $1.3 Billion Japan Security Token Market|BeInCrypto(外部)
日本のST累積発行額が2025年8月時点で1,938億円(約12.7億ドル)に達したと報告。MUFGのASTOMO参入も詳報する。
Ripple and SBI to launch RLUSD stablecoin in Japan by 2026|The Digital Banker(外部)
RippleとSBIによる2025年8月締結のRLUSD日本展開MOUを詳報。SBIのXRP・Ripple長期戦略の背景を解説する記事。
Notice Regarding Issuance of Security Token (ST) Bonds|SBI Holdings(外部)
SBI START Bondsの発行総額・金利・XRP報酬条件・日程など、全数値が記載されたSBI Holdings公式一次資料。
Japanese securities giant to issue $65 million worth of XRP-paying bonds|DL News(外部)
DL Newsの報道記事。発行額を約6,500万ドルと換算。CoinDeskとの差は為替レート計算時点の違いによるものと判断できる。
SBI Japan Launches ¥10B On-Chain Bond With XRP Rewards|CoinFomania(外部)
ibet for FinとBOOSTRYの技術的役割を詳述したCoinFomaniaの解説記事。技術インフラの理解に参考として活用した。
BOOSTRY Publishes Japan Security Token Market Report(FY2024)|Nomura Holdings(外部)
BOOSTRYが公表した2024年度の日本ST市場年次レポート。市場規模の推移と今後の成長見通しを把握するために参照した。
【編集部後記】
「債券」と「XRP」という、これまで別々の世界にあったものが、ひとつの金融商品として手元に届く時代になりました。私自身、この二つが組み合わさるとは、少し前まで想像できませんでした。
みなさんはいかがでしょうか。ブロックチェーンが「投資の入り口」を変えていく様子を、一緒にウォッチしていきませんか。







































