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CUDIS Sporty Series Ring:運動で暗号資産を稼ぐDePINスマートリング

BeatBit Wellness Labが設立したCUDISは、第2世代スマートリング「CUDIS Sporty Series Ring」を発売した。重量3グラムの航空宇宙グレードチタン製で、30種類以上のスポーツトラッキング、心拍変動・睡眠・ストレスの計測に対応する。

5ATM防水、バッテリーは最大10日間持続する。12色展開の交換可能なシリコンバンドを6種類用意した。生成AIを搭載したAIコーチによるパーソナライズ提案や、認定ヘルスケア専門家への接続機能を備え、アプリはサブスクリプション不要で利用できる。

Solanaブロックチェーン上のDePINモデルを採用し、ヘルスクエスト達成などにより$CUDISトークンで報酬を得られる。同社はDraper Associates主導の500万ドルのシードラウンドを受け、103カ国に2万個以上を出荷済みである。小売価格は399ドル、Pioneer Packageでは239ドルとなる。アプリユーザーは25万人以上。UCLA Athleticsとの1年間のパートナーシップも締結している。

From: 文献リンクThis Smart Ring Pays You Crypto for Working Out – The Gadgeteer

【編集部解説】

スマートリング市場は現在、Ouraを筆頭にSamsung Galaxy Ringなどの大手が競合するフェーズに入っています。そのなかでCUDISが提示しているのは、ヘルストラッキングという「機能」の競争ではなく、「あなたの身体データは誰のものか」という問いそのものです。

ウェアラブル端末が取得する生体データは、従来、デバイスメーカーやプラットフォーム企業のサーバーに蓄積され、ユーザーがその利活用に関与する余地はほとんどありませんでした。CUDISが採用するDePIN(分散型物理インフラストラクチャ)モデルは、Solanaブロックチェーンを基盤に、ユーザー自身がデータの所有権を保持し、匿名化したうえで経済的価値に転換できる仕組みを目指しています。

もちろん、課題は山積しています。$CUDISトークンの価値は暗号資産市場全体の動向に左右され、同社が示す「ヘルスデータが1ユーザーあたり年間最大5000ドルの価値を持つ」という推定は、あくまでトークン価格次第です。アプリの完成度についても、2024年のBlockworksによるハンズオンレビューでは、データ更新の遅延やAIコーチのプライバシーに関する懸念が指摘されていました。Draper Associates主導の500万ドルのシードラウンドは信頼性の裏付けになりますが、Ouraの52億ドル評価額と比較すれば、まだ初期段階のスタートアップであることは明らかです。

それでも注目に値するのは、UCLA Athleticsとのパートナーシップに見られるように、CUDISがWeb3コミュニティの外側へ接点を広げようとしている点です。103カ国への出荷、25万人のアプリユーザーという数字は、「暗号資産に関心がなくても使えるヘルストラッカー」としての実需が存在することを示唆しています。

ウェアラブル市場において、データ主権とトークンインセンティブを組み合わせたモデルが持続可能かどうかは未知数です。しかし、「健康データの所有権をユーザーに返す」という設計思想は、今後のヘルステック領域全体に影響を与える可能性があります。CUDISが2026年から2027年にかけて計画するLongevity Hubやマルチエージェントシステムの展開とともに、その行方を注視していきたいと思います。

【用語解説】

DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network)
分散型物理インフラストラクチャネットワークの略称である。ブロックチェーン技術を活用し、個人が物理的なインフラ(通信機器、センサー、ウェアラブル端末など)を提供・運用し、その対価として暗号資産の報酬を得る仕組みである。従来の中央集権型インフラに対し、参加者がネットワークを共同で構築・維持するモデルとして注目されている。

Solana
高速処理と低手数料を特徴とするレイヤー1ブロックチェーンである。毎秒6万5000件以上のトランザクション処理が可能で、DePINプロジェクトの基盤として広く採用されている。CUDISのデータ記録・トークン報酬もSolana上で稼働する。

$CUDISトークン
CUDISエコシステム内で報酬として配布される暗号資産である。2025年にBybit、Bitget、MEXC、Binanceなど主要取引所に上場した。ユーザーはヘルスクエスト達成などの行動によって同トークンを獲得できる。

5ATM防水
5気圧防水を意味する。水深50メートル相当の圧力に耐える防水性能であり、水泳やシャワーなど日常的な水場での使用が可能である。

心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)
心拍と心拍の間隔のゆらぎを示す指標である。自律神経の活動バランスやストレス状態、回復度を評価するために使用され、ウェアラブル端末のヘルスケア指標として広く採用されている。

NIL契約(Name, Image and Likeness)
米国の大学スポーツにおいて、学生アスリートが自分の名前・肖像・イメージを商業利用して報酬を得る権利に基づく契約である。2021年のNCAAルール変更により解禁された。UCLA AthleticsとCUDISの提携にもNIL契約が含まれる。

シードラウンド
スタートアップが製品開発や初期事業運営のために行う最初期段階の資金調達ラウンドである。CUDISはDraper Associates主導のシードラウンドで500万ドルを調達した。

【参考リンク】

CUDIS公式サイト(外部)
AI搭載スマートリング「CUDIS」の公式サイト。製品情報やアプリのダウンロード、購入が可能。

Draper Associates(外部)
ティム・ドレイパー設立のシードステージVC。Tesla、Coinbaseなど60社超のユニコーンに初期投資。

Solana公式サイト(外部)
高速・低コストのレイヤー1ブロックチェーン。CUDISのデータ記録やトークン報酬の基盤。

UCLA Athletics(外部)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の体育局公式サイト。CUDISと1年間のパートナーシップを締結。

Oura Ring公式サイト(外部)
フィンランド発のスマートリング。睡眠トラッキングの精度で知られるスマートリング市場のリーダー。

【参考記事】

Wearable startup CUDIS launches a new health ring line with an AI-fueled ‘coach’(外部)
TechCrunchによるCUDIS新シリーズの報道。累計3万台超販売、25万人のユーザー数などを報告。

Cudis, a Crypto Smart Ring, Teams With UCLA Athletics(外部)
Athletech NewsによるUCLA Athletics提携の詳報。NIL契約対象競技やOuraの評価額などを掲載。

Lightspeed Newsletter: Reviewing the Cudis smart ring health tracker(外部)
Blockworksによる1週間のハンズオンレビュー。初期バッチの販売数やアプリの課題を指摘。

The wearable ecosystem trusted by Olympic athletes(外部)
IOT InsiderによるCEOインタビュー。プロアスリートの採用例やエコシステム構想を詳述。

CUDIS: The AI DePIN Smart Ring Democratizing Health Data on Solana(外部)
Shoal Researchによる詳細分析。ロードマップやMcKinseyのウェルネス市場データを多数引用。

CUDIS Smart Ring Collaborates with UCLA Athletics(外部)
Fitt InsiderによるCUDIS×UCLA Athleticsの公式発表。販売数や資金調達の数値データを含む。 

【編集部後記】

「身体を動かして暗号資産を稼ぐ」と聞いて、2022年に一世を風靡したSTEPN(ステップン)を思い出した方も多いのではないでしょうか。STEPNはSolana上でNFTスニーカーを購入し、歩いたり走ったりすることでGSTトークンを獲得するMove to Earnの先駆けでした。しかし、トークン価格がピークから99%以上下落し、「稼げなくなった瞬間にユーザーが離れる」という構造的な脆弱性を露呈しました。

CUDISも同じSolanaブロックチェーン上で「身体活動 → トークン報酬」というインセンティブ構造を採用しています。この点だけを見れば、STEPNとの類似性は否めません。$CUDISトークンの価値が暗号資産市場全体の動向に左右される以上、同じリスクを内包していることも事実です。

ただし、両者には設計思想の面で本質的な違いがあるように思います。STEPNはNFTスニーカーという「ゲーム上の資産」を購入することが前提であり、トークン報酬がサービスの主たる価値でした。一方CUDISは、399ドルのスマートリングそのものが30種以上のスポーツトラッキング、AIコーチ、サブスクリプション不要という独立した製品価値を持っています。UCLA Athleticsとの提携や25万人のアプリユーザーは、暗号資産に関心がなくても使い続ける理由が存在することを示唆しています。

さらにCUDISが掲げる「DePIN」の思想は、単に「動いて稼ぐ」ゲームではなく、匿名化したヘルスデータそのものに経済的価値を見出し、データの所有権をユーザー自身に返すという構造を目指しています。「自分の身体から生まれたデータは、誰のものか」という問いを、製品設計のレベルで提起しているとも言えます。

もちろん、STEPNの轍を踏まないかどうかは、今後のトークン設計とエコシステムの持続可能性にかかっています。2024年のBlockworksレビューが指摘したアプリの完成度の課題も残っています。それでも、「トークン報酬がなくなっても使い続けたいと思える製品」を土台に据えているかどうかは、Move to Earnの第一世代と第二世代を分ける重要な分岐点ではないでしょうか。

みなさんは、「稼げるから使う」デバイスと「使いたいから使い、結果として報酬も得られる」デバイスの違いをどう感じますか。ウェアラブルとブロックチェーンの融合が、STEPNの教訓を超えて持続可能なモデルになれるのか。その行方を、一緒に見守っていければと思います。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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