サイバーセキュリティの世界で、攻撃的AI(Offensive AI)が最も危険なサイバー兵器として注目されている。
2023年、Foster Nethercottは、ChatGPTを悪用して従来のセキュリティ対策を回避する新型マルウェアを作成できることを示す白書をSANS Technology Instituteで発表した。
攻撃的AIに対抗するため、さらに高度な攻撃的AIの開発と研究が必要不可欠となっている。この逆説的なアプローチは、脅威を理解しなければ防御できないという単純な事実に基づいている。
2024年9月7日、ラスベガスで開催されるSANS Network Security 2024では、Foster Nethercottによる「ソーシャルエンジニアリングとディープフェイク開発のための攻撃的AI」ワークショップが予定されている。これは2025年初頭にリリース予定の新コース「SEC535:攻撃的AI – 攻撃ツールとテクニック」の導入となる。
Foster Nethercottは、米国海兵隊とアフガニスタン退役軍人で、約10年のサイバーセキュリティ経験を持つ。現在、セキュリティコンサルティング会社Fortisecを所有し、SANS Technology Instituteの講師を務めている。
from:Offensive AI: The Sine Qua Non of Cybersecurity
【編集部解説】
攻撃的AI(Offensive AI)が最新のサイバーセキュリティの世界で注目を集めていますが、この技術は諸刃の剣と言えるでしょう。一方で、サイバー防御の強化に不可欠な要素となりつつあります。
攻撃的AIの本質は、AIを用いて積極的にシステムの脆弱性を探り、攻撃を模倣することにあります。これは、従来の受動的な防御策では対応しきれない新たな脅威に対抗するための革新的なアプローチです。
Foster Nethercottの研究が示すように、ChatGPTのような汎用AIも悪用される可能性があります。しかし、攻撃的AIの真の力は、特定の目的のために設計された自律システムにあります。これらは、実際の攻撃者の行動を模倣し、組織のセキュリティの弱点を明らかにします。
この技術の登場により、企業や組織は自社のシステムを「攻撃者の目線」で見ることができるようになります。これは、潜在的な脆弱性を事前に発見し、対策を講じる上で非常に有効です。
一方で、攻撃的AIの発展は、サイバー攻撃の高度化にもつながる可能性があります。AIが生成する新種のマルウェアや、人間の行動を巧妙に模倣するフィッシング攻撃など、従来にない脅威が現実のものとなりつつあります。
このような状況下で、サイバーセキュリティの専門家には新たなスキルセットが求められます。攻撃的AIを理解し、活用できる人材の需要が高まると予想されます。
規制の面では、攻撃的AIの使用に関する明確なガイドラインの策定が急務となるでしょう。悪用を防ぎつつ、正当な目的での使用を促進するバランスの取れた規制が必要です。
長期的には、攻撃的AIの発展により、サイバーセキュリティの概念そのものが変化する可能性があります。従来の「防御」中心から、「積極的な脆弱性の発見と対策」へとパラダイムシフトが起こるかもしれません。
【用語解説】
- 攻撃的AI(Offensive AI):
サイバー攻撃を模倣し、システムの脆弱性を積極的に探るAI技術。防御力強化のために使用されます。 - ディープフェイク(Deepfake):
AIを使って作成された偽の音声や映像。本物と見分けがつきにくい高度な偽造技術です。 - SANS Technology Institute:
情報セキュリティ教育で世界的に有名な非営利組織。高度なサイバーセキュリティ訓練を提供しています。
【参考リンク】
- SANS Institute(外部)
説明:世界最大のサイバーセキュリティ訓練・認証プロバイダー。最新の脅威に対応した教育プログラムを提供しています。 - Fortisec(外部)
説明:Foster Nethercottが所有するセキュリティコンサルティング会社。攻撃的AIを含む最先端のサイバーセキュリティサービスを提供しています。