米司法省は2025年1月7日、暗号資産ミキシングサービス「Blender.io」と「Sinbad.io」の運営に関与した疑いで、ロシア国籍の3名を起訴しました。
起訴された容疑者
– ロマン・ヴィタリエヴィッチ・オスタペンコ(55歳)
– アレクサンダー・エフゲニエヴィッチ・オレイニク(44歳)
– アントン・ヴャチェスラヴォヴィッチ・タラソフ(32歳)
不正送金の実績
– Atomic Walletから1億ドル(2023年6月)
– Axie Infinityから約6.2億ドル(2022年3月)
– Horizon Bridgeから1億ドル(2022年6月)
from:DoJ Indicts Three Russians for Operating Crypto Mixers Used in Cybercrime Laundering
【編集部解説】
暗号資産ミキサーサービスは、ブロックチェーンの透明性という特徴を逆手に取った技術です。複数のユーザーの取引を混ぜ合わせることで、資金の出所を追跡困難にする仕組みです。
今回の事件で注目すべきは、Blender.ioとSinbad.ioが北朝鮮のLazarusグループに利用されていた点です。Lazarusグループは、Atomic Walletから1億ドル、Axie Infinityから6.2億ドル以上、Horizon Bridgeから1億ドルを盗み出し、これらのサービスを通じてロンダリングを行っていました。
特筆すべきは、Blender.ioが制裁を受けた後、わずか数か月でSinbad.ioとして事実上の復活を遂げた手法です。これは暗号資産関連の違法サービスが持つ「しぶとさ」を示しています。
暗号資産業界への影響
この事件は、プライバシー保護技術としての暗号資産ミキサーの正当性に関する議論を再燃させる可能性があります。実際、2024年11月には類似サービスのTornado Cashへの制裁が裁判所によって違法と判断されています。
しかし、今回の事件では北朝鮮による大規模な資金窃取との関連が明確であり、マネーロンダリング対策の必要性を改めて浮き彫りにしました。
今後の展望
この事件を受けて、各国の規制当局は暗号資産ミキサーサービスへの監視を一層強化すると予想されます。特に、Know Your Customer(顧客確認)やAML(マネーロンダリング対策)の観点から、新たな規制枠組みが検討される可能性が高いでしょう。
一方で、プライバシー保護を重視する暗号資産コミュニティからは、過度な規制への懸念も示されています。イノベーションと規制のバランスをどう取るかが、今後の重要な課題となりそうです。
テクノロジーの両義性
この事件は、ブロックチェーン技術の両義性を象徴的に示しています。プライバシー保護のための技術が、同時に違法行為の温床となり得るという現実は、テクノロジーの発展に付きまとう永遠の課題を私たちに突きつけています。