CNETは2026年2月3日、抗議活動参加時のスマートフォンセキュリティに関するガイドを公開した。2026年、米国では移民執行強化や当局による実力行使に対する大規模デモが発生しており、ミネアポリスでのRenee GoodとAlex Prettiの致命的銃撃事件への抗議も含まれる。
スマートフォンは記録や連絡に不可欠だが、警察や政府機関による監視の標的となっており、FBIは暗号化されたSignalチャットの調査をすることも示唆している。アメリカ自由人権協会とアムネスティ・インターナショナルは、強力なパスコード設定による暗号化、位置情報サービスのオフ、生体認証の無効化、BluetoothとセルラーデータとWi-Fiのオフ、スマートウォッチの機内モード化を推奨している。
プリペイド式バーナーフォン(使い捨て電話)の使用や、ロックした状態でのカメラ使用も有効だ。執行機関は顔認識技術を使用するため、抗議者の顔写真の共有には注意が必要である。
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If You’re Attending a Protest, Here’s How to Be Smart With Your Phone
【編集部解説】
2026年1月、ミネアポリスで移民執行機関による米国市民2名の射殺事件が発生し、全米で大規模な抗議活動が展開されています。1月7日にはRenee Good(37歳)がICEエージェントに、1月24日にはAlex Pretti(37歳)が国境警備隊エージェントに射殺されました。両者ともスマートフォンで連邦エージェントの活動を記録していた最中の出来事でした。
この状況を受けて、抗議活動参加者はスマートフォンを使って権力の濫用を記録・共有していますが、同時にデジタル監視のリスクにも直面しています。FBI長官Kash Patelは1月26日、ミネアポリスの活動家がSignalアプリを使ってICEエージェントの位置情報を共有していることについて、連邦法違反の可能性があるとして調査を開始したと発表しました。
興味深いことに、これはFBIの矛盾した姿勢を浮き彫りにしています。わずか1カ月前の2024年12月、FBIとCISAは中国のハッカーグループSalt Typhoonによる通信ネットワークへの侵入を受けて、一般市民にSignalのような暗号化メッセージアプリの使用を強く推奨していました。つまり、政府機関はプライバシー保護のために暗号化を推奨する一方で、市民が権力を監視するために同じ技術を使用することには調査を行うという、二重基準が存在しているのです。
この記事が提示するスマートフォンのセキュリティ対策は、デジタル時代の市民的自由を守るための重要な知識です。強力な暗号化の有効化、位置情報サービスのオフ、生体認証の無効化といった技術的対策は、単なる「便利なヒント」ではなく、憲法で保障された権利を行使する際の必須の自己防衛手段となっています。
電子フロンティア財団(EFF)が指摘するように、記憶されたパスコードは生体認証よりも強い法的保護を提供します。なぜなら、警察は物理的に顔や指紋を使ってロック解除を強制できますが、パスコードの提供を強制することは、より高い法的ハードルを必要とするからです。
セルラーデータ(モバイル通信)やWi-Fiをオフにする推奨も、単なるバッテリー節約のためではありません。スマートフォンは近くの携帯電話塔と常に通信しており、このトラフィックから位置情報が特定され、後日、特定の抗議活動に参加していたことを証明する証拠として使用される可能性があるのです。
記事が提案するプリペイド式「バーナーフォン」の使用は、個人情報と抗議活動を完全に分離する最も効果的な方法です。しかし、これは経済的余裕のある人に限られた選択肢であり、デジタルセキュリティが経済的格差によって左右される現実も浮き彫りになっています。
ロックした状態でのカメラ使用機能も、単なる利便性の問題ではありません。記録中にスマートフォンを奪われた場合、ロックされていれば他のデータへのアクセスを防げます。しかし同時に、記事は抗議者の顔写真を共有する際の注意も促しています。執行機関は顔認識技術を使用して、公開された写真から個人を特定し、後日、逮捕や嫌がらせに利用する可能性があるためです。
この記事が公開された2026年2月3日という時期は重要です。ミネアポリスでの2件の射殺事件からわずか数週間後であり、全米で抗議活動が続いている真っ只中です。デジタル監視とプライバシー保護は、もはや理論的な議論ではなく、命に関わる実践的な課題となっているのです。
【用語解説】
デジタル監視(Digital Surveillance)
スマートフォンやデジタルデバイスから収集されるデータを用いた監視活動。位置情報、通信記録、メタデータなどが対象となり、警察や政府機関が捜査や監視に利用する。
暗号化(Encryption)
データを第三者が読めない形式に変換する技術。強力なパスコードと組み合わせることで、デバイスが押収されても内部データの保護が可能となる。
生体認証(Biometrics)
顔認識や指紋認証など、身体的特徴を用いたロック解除機能。便利だが、法執行機関による物理的な強制使用のリスクがある。
位置情報サービス(Location Services)
GPSや携帯電話塔の情報を使ってデバイスの位置を特定する機能。オフにしないと、撮影した写真のメタデータに位置情報が記録される。
セルラーデータ(Cellular Data)
携帯電話ネットワークを介したデータ通信。常に近くの携帯電話塔と通信しており、この通信記録から位置情報が特定される可能性がある。
バーナーフォン(Burner Phone)
一時的な使用を目的とした使い捨てのプリペイド携帯電話。個人情報との紐付けを避けるために使用される。
顔認識技術(Facial Recognition Technology)
写真や動画から個人を自動的に識別する技術。法執行機関が公開された抗議活動の写真から参加者を特定するために使用される。
IMSI Catcher(Stingray)
携帯電話基地局を偽装し、周辺のスマートフォンと通信することで位置や通信内容を傍受する監視装置。警察が抗議活動で使用することがある。
メタデータ(Metadata)
写真や文書に埋め込まれた情報。撮影日時、GPS座標、デバイス情報などが含まれ、個人の特定や位置の追跡に利用される。
Operation Metro Surge
2026年1月にミネアポリス・セントポール地域で実施された大規模な移民執行作戦。2,000人の連邦エージェントが投入され、Renee GoodとAlex Prettiの射殺事件を引き起こした。
【参考リンク】
アメリカ自由人権協会(ACLU)(外部)
市民的自由の擁護を目的とする非営利団体。抗議活動におけるデジタルプライバシーに関するガイドを提供している
アムネスティ・インターナショナル(外部)
国際的な人権擁護団体。世界各地での抗議活動参加者の権利保護に関する情報を発信している
電子フロンティア財団(EFF)(外部)
デジタル時代の市民的自由を守る非営利団体。暗号化技術やデジタルプライバシーに関する専門的なガイドを提供
Signal(外部)
エンドツーエンド暗号化を提供する無料のメッセージングアプリ。通話とテキストメッセージの両方を暗号化し、消えるメッセージ機能も備えている
Freedom of the Press Foundation(外部)
報道の自由とジャーナリストの保護を目的とする団体。抗議活動におけるデジタルセキュリティに関する詳細なガイドを提供
Electronic Frontier Foundation – Surveillance Self-Defense(外部)
デジタル監視からの自己防衛に関する包括的なガイド。抗議活動への参加時の具体的な対策を詳しく解説している
【参考記事】
FBI is investigating Minnesota Signal groups tracking ICE, Patel says – NBC News(外部)
FBI長官Kash Patelが2026年1月26日、ミネアポリスでICEエージェントの動きを追跡するSignalグループチャットの調査を開始したと発表。言論の自由との関係で議論を呼んでいる
ICE Shooting Investigations a ‘Complete Aberration’ – The Marshall Project(外部)
トランプ政権がミネソタ州当局を捜査から排除した異例の対応について。数十年にわたる慣行に反し、連邦政府が州の犯罪捜査局を現場から締め出した問題を分析
How to Defend Against Police Surveillance at Protests – ACLU of DC(外部)
抗議活動における警察の監視から身を守るための基本的なヒント。デバイスの暗号化、生体認証の無効化、機内モードの使用などを推奨している
Attending a Protest – Surveillance Self-Defense (EFF)(外部)
電子フロンティア財団による抗議活動参加時の包括的なデジタルセキュリティガイド。位置情報の無効化、2G接続の防止、オフラインマップの使用などを詳しく解説
FBI and CISA say to use encrypted messengers – Cybernews(外部)
2024年12月、FBIとCISAが中国のSalt Typhoonハッカーグループによる通信ネットワーク侵入を受けて、SignalやWhatsAppなどの暗号化アプリの使用を推奨した経緯
【編集部後記】
2026年のミネアポリスで起きた出来事は、デジタル時代において、私たちの市民的自由がいかに脆弱かということを鮮明に示しています。私たちが日常的に使うスマートフォンは、記録と連絡という強力なツールであると同時に、監視の入口にもなり得ます。興味深いのは、政府機関が外国からのハッキングに対しては暗号化を推奨しながら、市民が権力を監視するために同じ技術を使うことには捜査を行うという矛盾です。
これは、どこか遠い外国の出来事ではありません。日本においても、SNSの本人確認や、スマホロック解除の強制、暗号化の政府による解除などを求める声が強くなってきています。そのセキュリティは本当にあなたを守るのか、常に考える必要があるのではないかと思います。
この記事で紹介されている技術的な対策は、単なる「ハウツー」ではなく、私たちの権利を守るための実践的な知識です。あなたは、デジタル監視とプライバシー保護のバランスについて、どのように考えますか。そして、技術の進歩が市民的自由に与える影響について、私たちはどのように向き合うべきでしょうか。






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