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Linux 7.0発表、6.19に搭載のLive Update Orchestratorでダウンタイムを数ミリ秒に短縮

Linux 7.0発表、6.19に搭載のLive Update Orchestratorでダウンタイムを数ミリ秒に短縮

リーナス・トーバルズは2026年2月8日、Linuxカーネルの次期バージョンを7.0にすると発表した。現在リリースされたバージョン6.19の後継となる。トーバルズは「指と足の指で数えられる数字」という慣例を理由に挙げた。

Linuxカーネルは3.xシリーズが19のリリース後に4.0へ移行し、4.xシリーズは多くのバージョンをリリースした。5.xシリーズは19のリリース後に終了し、6.xシリーズも同様に19で終了する。バージョン6.19には、仮想マシンを中断せずにカーネルをアップグレードできるLive Update Orchestratorや、PCIeデバイスとVM間の暗号化通信が追加された。

IntelとAMDシリコン、RISC-Vおよび中国製プロセッサーのサポートも改善されている。ネットワーキングの変更により、特定の状況下でデータ転送速度が最大4倍向上する可能性がある。

From: 文献リンクLinus Torvalds keeps his ‘fingers and toes’ rule by decreeing next Linux will be version 7.0

【編集部解説】

リーナス・トーバルズのバージョン番号に対する姿勢は、一見すると単なる個人的な好みのように見えますが、実は深い哲学を含んでいます。「指と足の指で数えられる数字」という彼のルールは、技術の本質が数字ではなく、その中身にあることを象徴的に示しています。

今回の6.19から7.0への移行は、3.xシリーズが3.19で終了して4.0へ、5.xシリーズが5.19で終了して6.0へと移行してきた流れを踏襲するものです。興味深いのは、4.xシリーズだけが4.20まで続いた例外であり、それ以降は19で区切る慣例が定着しつつあることです。この一貫性は、Linuxカーネル開発における予測可能性の向上を意味します。

Linux 6.19に搭載されたLive Update Orchestratorは、クラウド時代における技術革新の本質を体現しています。従来、カーネルのアップデートには完全な再起動が必要でしたが、LUOはkexecベースの仕組みを使い、仮想マシンの状態を保持したままカーネルを更新できます。

この技術の背景には、Googleのエンジニアたちによる数ヶ月にわたる開発があります。彼らが目指したのは、クラウド環境において数分かかっていたアップデート時間を数ミリ秒にまで短縮することでした。この変化は、単なる時間の短縮以上の意味を持ちます。大規模なクラウドインフラを運用する企業にとって、ダウンタイムの削減は直接的なコスト削減だけでなく、サービスの信頼性向上にもつながります。

PCIeリンク暗号化機能も、同様に重要な進化です。AMD SEV-SNPやIntel TDXといったConfidential Computing技術と組み合わせることで、PCIeデバイスと仮想マシン間の通信が暗号化・認証されます。これにより、ホストOSや他のデバイスがDMAトラフィックを盗み見たり、データを注入したりすることを防げます。

この技術は、クラウド環境におけるセキュリティの根本的な課題に対処するものです。従来、クラウド利用者はホスト側のインフラを信頼せざるを得ませんでしたが、PCIeレベルでの暗号化により、ハードウェアレイヤーでのセキュリティが実現します。

ネットワーキング関連の変更で注目すべきは、ビジーロックの削除によるパフォーマンス向上です。特定の状況下でデータ転送速度が最大4倍になる可能性があるという改善は、高頻度取引システムやリアルタイム通信など、低レイテンシが求められる用途において大きな価値を持ちます。

RISC-Vや中国製プロセッサーのサポート強化も見逃せません。これらは単なるハードウェアサポートの拡大ではなく、コンピューティングエコシステムの多様性を保つための重要な取り組みです。特定のアーキテクチャへの依存度を下げることは、技術の持続可能性と選択の自由を保証します。

Linux 7.0は2026年4月中旬にリリースされる予定で、Ubuntu 26.04 LTSにも搭載される見込みです。バージョン番号の変更は技術的な変更を意味しませんが、新しい時代の始まりを象徴的に示しています。トーバルズ自身が繰り返し述べているように、x.0リリースは他のリリースより重要というわけではありません。真に重要なのは、長期サポート(LTS)に指定されるバージョンです。

これらの技術革新は、人類がデジタル社会において直面する課題に対する実践的な解決策を提供しています。クラウドインフラの効率化、セキュリティの強化、ハードウェアの多様性確保という3つの軸は、今後のコンピューティングの進化を支える基盤となるでしょう。

【用語解説】

Linuxカーネル
オペレーティングシステムの中核となるプログラムで、ハードウェアとソフトウェアの間の橋渡しを行う。リーナス・トーバルズによって1991年に開発が開始され、現在も世界中の開発者によって継続的に改良されている。

Live Update Orchestrator(LUO)
仮想マシンを停止させることなく、稼働中のLinuxカーネルをアップデートできる仕組み。kexecベースの再起動を利用し、メモリやデバイスの状態を保持したままカーネルを切り替える。クラウド環境でのダウンタイム削減を目的とする。

kexec
Linuxカーネルの機能の一つで、稼働中のカーネルから新しいカーネルを起動できる仕組み。通常の再起動と異なり、BIOSやファームウェアの初期化をスキップするため、より高速な起動が可能になる。

仮想マシン(VM)
物理的なコンピューターの機能をソフトウェアで模倣したもの。一台の物理サーバー上で複数の仮想マシンを同時に稼働させることができ、クラウドサービスの基盤技術となっている。

PCIe(PCI Express)
コンピューター内部でCPUと各種デバイス(グラフィックカード、ストレージなど)を接続する高速通信規格。従来は暗号化されていなかったが、Linux 6.19でリンク暗号化がサポートされた。

DMA(Direct Memory Access)
CPUを介さずにデバイスがメモリに直接アクセスできる仕組み。高速なデータ転送が可能だが、セキュリティ上の懸念もあるため、PCIe暗号化が重要になる。

RISC-V
オープンソースの命令セットアーキテクチャ。特定企業に依存しない設計により、誰でも自由に利用・改良できる。多様なハードウェアエコシステムの実現を目指す取り組みの一つ。

Confidential Computing
クラウド環境において、使用中のデータを暗号化し、クラウド事業者からも保護する技術。AMD SEV-SNPやIntel TDXなどのハードウェアベースの機能を活用する。

長期サポート(LTS)
通常のリリースよりも長期間にわたってセキュリティアップデートやバグ修正が提供されるバージョン。企業の本番環境など、安定性が重視される用途で採用される。

【参考リンク】

The Linux Kernel Archives(外部)
Linuxカーネルの公式配布サイト。最新版や過去のバージョンをダウンロード可能

Phoronix(外部)
Linuxとオープンソースに特化した技術ニュースサイト。詳細な解説を提供

Linux Kernel Newbies(外部)
カーネル開発者向けリソース。各バージョンの変更点を詳細に解説している

Ubuntu(外部)
Canonical社のLinuxディストリビューション。LTS版は5年間サポート

Intel(外部)
世界最大手の半導体メーカー。TDXなどのConfidential Computing技術を開発

AMD(外部)
CPUおよびGPUメーカー。SEV-SNPなどのセキュリティ技術を提供している

【参考記事】

Linux 7.0 Kernel Confirmed by Linus Torvalds, Expected in Mid-April 2026(外部)
Linux 7.0のリリーススケジュールを詳細に報道。2026年2月22日に最初のリリース候補版が公開予定

Live Update Orchestrator “LUO” Merged For Linux 6.19(外部)
Live Update Orchestratorの技術的詳細を解説。memfdファイルディスクリプタの保持機能について説明

Linux_6.19 – Linux Kernel Newbies(外部)
Linux 6.19の全機能を網羅的に解説。PCIe暗号化やlistns(2)システムコールなど詳細情報を提供

Linus Torvalds Confirms The Next Kernel Is Linux 7.0(外部)
リーナス・トーバルズによるLinux 7.0発表を報道。Ubuntu 26.04 LTSにも搭載される見込み

Linux kernel 6.19 reaches stable release, kernel 7.0 work is already underway(外部)
Linux 6.19の安定版リリースを報道。バージョン7.0への移行理由について解説している

Linux 6.19: Faster AMD GPUs, Hardware HDR & ext4 Performance(外部)
LUOの動作メカニズムを詳細に説明。アップグレード時間を数分から数ミリ秒に短縮できることを解説

【編集部後記】

普段何気なく利用しているクラウドサービスの裏側で、こうした地道な技術革新が続いていることに、私たちは改めて驚かされます。数分のダウンタイムを数ミリ秒に短縮するLive Update Orchestratorのような技術は、一見地味に見えるかもしれません。

しかし、数百万台のサーバーで運用されるクラウドインフラにおいて、この積み重ねが私たちの日常を支えているのです。みなさんが使っているサービスの安定性やセキュリティの裏には、どんな技術が隠れているのでしょうか。少し想像を巡らせてみると、テクノロジーの見え方が変わってくるかもしれません。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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