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九天(Jiu Tian):中国が世界最大のドローン母艦を公開、100機群制御で軍事バランス変革へ

九天(Jiu Tian):中国が世界最大のドローン母艦を公開、100機群制御で軍事バランス変革へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-01 03:42 by admin

中国は2025年6月末に世界最大のドローン母艦「九天(Jiu Tian)」の初飛行試験を実施する予定である。九天は2024年11月の珠海航空ショーで初公開され、中国航空工業集団公司(AVIC)が開発した。

機体は全長25メートル、最大離陸重量16トン、航続距離7000キロメートル、実用上昇限度15000メートルで、最大6トンのペイロードを搭載可能である。
最大100機の小型ドローンや徘徊弾薬を機体腹部のハニカム構造から同時発射でき、36時間の連続飛行が可能である。AIを活用した群制御機能により、発射されたドローンは空中で情報共有と協調動作を行う。
軍事用途に加え、災害救援、国境警備、海上監視、捜索救助などの民間任務にも対応する。2025年4月に4号機が完成した。

From: 文献リンクChina Unveils the Largest Drone Carrier Ever Built — and This Giant Is About to Take Off

【編集部解説】

九天が真に革新的なのは、単なる大型ドローンではなく「空飛ぶ指揮統制センター」として機能する点にあります。従来の無人機が単独で任務を遂行するのに対し、九天は最大100機のドローン群を空中で協調制御し、リアルタイムで情報共有させる能力を持ちます。

機体腹部に組み込まれたハニカム構造のミッションキャビンは、ミツバチの巣のような正六角形を密に配列した設計で、効率的なドローン収納と発射を可能にしています。これはAIと機械学習技術の進歩により実現された「分散知能システム」の実装例といえるでしょう。

軍事バランスへの影響

九天のような母艦型ドローンシステムは、従来の防空システムに新たな課題を突きつけます。15000メートルの高高度で運用されるため、携帯式防空ミサイル(MANPADS)や対空戦車の射程外で活動でき、大規模な防空システムでのみ迎撃可能です。

しかし、専門家からは九天の脆弱性も指摘されています。機体サイズが大きく、ステルス性に乏しいため、高性能レーダーや戦闘機による迎撃が比較的容易だという見方もあります。また電子戦による通信妨害で指揮統制機能を無力化できる可能性も指摘されており、一部の軍事専門家は「プロパガンダ的側面が強い」と評価しています。

民生転用の可能性

軍事用途以外では、災害救援や国境監視、海洋調査などの分野での活用が期待されます。特に大規模災害時における被災者捜索や物資輸送では、人的リスクを大幅に軽減しながら効率的な作業が可能になります。

モジュラー設計により、任務に応じてペイロードを変更できる柔軟性も、民生分野での応用範囲を広げる要因となるでしょう。

規制と国際的影響

九天のような軍民両用技術の登場は、国際的な軍備管理体制に新たな課題をもたらします。従来の兵器輸出規制では対応が困難な「グレーゾーン技術」として、新たな規制枠組みの構築が必要になる可能性があります。

特に台湾海峡での運用が想定されており、地域安全保障への影響が懸念されています。各国の対応が注目される中、この技術が第三国に輸出された場合の影響も重要な検討課題となっています。

長期的な技術トレンド

九天は自律型兵器システム(LAWS)の発展における重要な節目と位置づけられます。人間の直接的な操縦を必要とせず、AI判断による自律的な戦術行動が可能になることで、将来的には完全自律型の戦闘システムへの道筋を示している可能性があります。

ただし、現段階では人間による最終的な攻撃承認が必要とされており、完全自律化までにはまだ技術的・倫理的な課題が残されています。この分野での技術競争は今後さらに激化することが予想され、国際的な技術標準や運用ルールの策定が急務となっています。

【用語解説】

九天(Jiu Tian)
中国語で「高い空」を意味する名称。中国が開発した世界初のドローン母艦の正式名称である。

ドローン母艦(Drone Mothership)
複数の小型ドローンを搭載し、空中で発射・制御する大型無人航空機。従来の単体ドローンとは異なり、群制御システムの中核として機能する。

群制御(Swarm Control)
複数のドローンがAIにより協調動作し、情報共有しながら同一目標に向かう技術。個体の損失に対する冗長性と、防空システムの飽和攻撃が可能になる。

徘徊弾薬(Loitering Munitions)
目標上空で待機し、適切なタイミングで攻撃を実行する自爆型ドローン。カミカゼドローンとも呼ばれる。

ハニカム構造
ミツバチの巣に代表される正六角形を密に配列した構造。九天では効率的なドローン収納と発射を可能にする。

分散知能システム
複数のAIエージェントが独立して判断を下しながら、全体として統一された目標を達成するシステム。軍事分野では戦術的優位性をもたらす。

SS-UAV
九天の正式な型式名称。UAVは「Unmanned Aerial Vehicle」の略称で、SSの意味は公式には明示されていない。

【参考リンク】

AVIC公式サイト(外部)
中国航空工業集団公司の公式サイト。九天の開発母体である中国最大の航空宇宙企業の概要と事業内容を掲載

中国中央電視台(CCTV)(外部)
九天の初飛行予定を最初に報じた中国国営テレビ局。軍事技術に関する公式発表を定期的に行っている

【編集部後記】

九天の登場は、私たちが想像していた「未来の戦争」が現実になりつつあることを示しています。一方で、複数の軍事専門家からは技術的な課題や実用性への疑問も提起されており、その真の能力については慎重な評価が必要です。みなさんは、このようなドローン母艦技術が軍事バランスをどう変えると考えますか?また、災害救援などの平和利用の可能性についてはいかがでしょうか?テクノロジーの進歩が人類にもたらす光と影について、ぜひSNSでご意見をお聞かせください。

【参考記事】

Military Report Japan – 九天詳細分析(外部)
九天の技術仕様と戦術的意義について日本語で詳細に分析した軍事専門メディアの記事。200機搭載説についても言及

Newsweek Japan – 専門家による批判的分析(外部)
西側軍事専門家による九天の脆弱性と限界についての批判的分析記事。プロパガンダ的側面についても詳述

DroneXL – 技術的詳細レポート(外部)
九天の技術的能力と開発経緯について英語圏ドローン専門メディアによる詳細レポート。36時間飛行能力についても言及

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TaTsu
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