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Lockheed Martin「Lamprey MMAUV」発表──艦艇に取り付き自律航行する次世代無人潜水機

2026年2月9日、Lockheed Martinはフロリダ州パームビーチにおいて、Lamprey Multi-Mission Autonomous Undersea Vehicle(MMAUV)を発表した。Lamprey MMAUVは、米国および同盟国向けに開発されたプラグ・アンド・プレイ型の自律式潜水機である。自然界の仕組みを模倣し、水上艦や潜水艦にホスト側の改修なしで取り付き、内蔵のハイドロジェネレーターでバッテリーを充電して作戦域に到達する。

対潜魚雷やUAV発射装置などを搭載可能なオープンアーキテクチャのペイロードベイを備え、情報収集・監視・偵察から精密打撃、電子妨害、デコイ展開まで多様な任務を遂行する。開発は社内資金で行われた。同社センサー・エフェクター&ミッションシステムズ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのポール・レモが発表を行った。

From: Lockheed Martin Unveils LampreyMMAUV – The Deep Doesn’t Let Go.

※アイキャッチはLockheed Martin 公式News Roomより引用

【編集部解説】

Lamprey MMAUVの発表は、水中無人機(UUV)市場が防衛分野で急速に拡大する潮流のただ中で行われました。ある調査会社の推計によれば、世界の自律型水中無人機(AUV)市場は2025年時点で約35億ドル規模に達し、2035年には約79億ドルに成長すると予測されています。この成長を牽引しているのが、海軍近代化を進める各国の防衛予算であり、海底インフラ防護への関心の高まりです。

Lamprey MMAUVが注目に値するのは、そのバイオミメティクス(生物模倣)の設計思想にあります。ヤツメウナギが他の魚に吸着して移動するように、本機は水上艦や潜水艦の船体にホスト側の改修なしで取り付き、航行中にハイドロジェネレーターで充電を行います。これにより、従来のUUVが抱えてきた「航続距離」と「バッテリー持続時間」という二大課題に対して、独自のアプローチで解を示しました。24立方フィート(約0.68立方メートル)の内部ペイロードベイは、対潜魚雷、UAV発射管、電子戦システム、音響デコイなど多様な装備を搭載でき、1つのプラットフォームで偵察から打撃まで複数の任務を切り替えられる点も特徴的です。

Lockheed Martinは35年以上にわたりAUVの開発に携わってきた実績を持ちますが、今回の開発が社内資金で行われたことも見逃せません。政府の調達プロセスを介さず迅速な開発サイクルを実現した点は、競合であるAndurilが2025年4月に発表したCopperheadファミリー(自律型水中無人機兼魚雷)を同様に自社資金で開発した動きと共通しています。伝統的な大手防衛企業とテクノロジースタートアップの双方が、従来の調達サイクルの外側で自律型水中兵器の開発を加速させているという構図が浮かび上がります。

また、Lamprey MMAUVは実海域での演習およびテストにおいて自律航行・監視能力を実証済みとされており、単なるコンセプトにとどまらない段階にあることも付け加えておきます。水中戦の無人化・自律化が本格的に動き出した。

【用語解説】

MMAUV(Multi-Mission Autonomous Undersea Vehicle)
複数任務対応型の自律式水中無人機を指す略称。偵察、監視、打撃、電子妨害など多様な任務を単一プラットフォームで遂行する設計思想を表す。

ハイドロジェネレーター(hydrogenator)
Lockheed Martinが使用する用語で、航行中にバッテリーを充電する装置を指す。正確なエネルギー変換方式はLockheed Martinから公開されていない。これにより、Lamprey MMAUVはホスト艦に取り付いた状態で移動しながらエネルギーを補給し、作戦域に満充電で到達できる。

バイオミメティクス
生物の構造や機能を工学設計に応用する手法。Lamprey MMAUVでは、ヤツメウナギが他の魚に吸着して移動する生態を模倣し、艦艇の船体に取り付いて航行する仕組みに反映されている。

オープンアーキテクチャ
システム設計において、特定のベンダーや仕様に依存せず、さまざまなモジュールやペイロードを柔軟に組み込める構造のこと。Lamprey MMAUVでは24立方フィートのペイロードベイにより、魚雷からUAV発射装置まで任務に応じた換装が可能である。

海域拒否(Sea Denial)
敵対勢力が特定の海域を自由に使用することを阻止する軍事戦略概念。Lamprey MMAUVは電子妨害、デコイ展開、運動エネルギー攻撃により海域拒否任務を遂行する。

確実なアクセス(Assured Access)
敵が支配または拒否を試みる海域に対して、味方が確実に進入・活動できる能力を指す。ステルス情報収集、持続的監視、精密打撃がこれに該当する。

Copperhead
Andurilが2025年4月に発表した自律型水中無人機ファミリー。魚雷型の形状で、弾頭搭載時はCopperhead-Mとなる。同社の大型UUVであるDive-XL(Ghost Shark)から複数機を展開する運用が想定されている。Lamprey MMAUVとは設計思想が異なるが、自律型水中兵器の競合製品として注目される。

【参考リンク】

Lockheed Martin ── Lamprey MMAUV 公式製品ページ(外部)
製品概要、ミッション能力、ペイロード構成、実海域テスト実績などを掲載したLockheed Martinの公式ページ。

Lockheed Martin ── A-Size 自律型水中無人機(AUV)製品ページ(外部)
同社が35年以上にわたり開発してきた小型AUVの技術基盤を紹介。Lampreyに至る水中無人機開発史を示す。

Lockheed Martin ── Undersea Warfare(水中戦能力)(外部)
Lockheed Martinの水中戦領域における技術・製品・ソリューションの全体像をまとめた公式ページ。

【参考記事】

Undersea Drone That Attaches Itself To Other Vessels Unveiled By Lockheed(外部)
The War Zoneの詳細分析。矩形船体、24立方フィートのベイ、4基スラスター構成、F-35連携運用を報じている。

Lockheed Martin Lamprey: Latching Autonomous Sub Drone(外部)
New Atlasの解説記事。バッテリー100%充電での作戦域到達、0.68立方メートルのベイ、ツインチューブ発射管を報道。

Lockheed unveils Lamprey underwater drone that can attach to ships(外部)
Defense Newsの報道。24立方フィートのペイロードベイ、スウォーム運用の可能性、無人システム間の通信に言及。

Lockheed Martin Unveils Lamprey Multi-Mission Autonomous Undersea Vehicle(外部)
Overt Defenseの記事。35年以上のAUV開発実績と、製品名がヤツメウナギに由来する点を明記している。

Lockheed Martin’s Lamprey MMAUV Goes Silent And Deadly(外部)
DroneXLの記事。実海域演習でのテスト実績、UAV発射による打撃領域拡張、デコイ機能について報じている。

Anduril unveils ‘Copperhead’ underwater drone(外部)
Breaking Defenseの2025年4月の報道。Copperheadファミリーの自社資金開発と海中戦の無人化加速を報じている。

Lockheed Martin’s new undersea drone can cling to ship hulls to recharge(外部)
E&T Magazineの記事。ドッキング機構や吸着カップによる船体への接合方法と他のAUV事例も紹介している。

【編集部後記】

艦艇にそっと取り付き、充電しながら作戦域へ向かう自律型潜水機。Lamprey MMAUVのコンセプトは、生物の知恵を工学に落とし込んだものでした。

翻って日本に目を向けると、海上自衛隊は2026年1月に国内開発の「水中防衛用小型UUV」の納入を発表しています。防衛装備庁は三菱重工業と共同で全長最大15.6メートル、7日間の自律航行が可能な長期運用型UUVの開発を2027年度の完成に向けて進めており、もがみ型護衛艦には機雷探知用の国産UUV「OZZ-5」がすでに搭載されています。掃海や情報収集を軸に蓄積されてきた技術が、いま本格的な水中戦力へと踏み出そうとしている段階です。

ただ、Lamprey MMAUVやAndurilのCopperheadが示す「母艦への寄生充電」「ペイロード換装による多任務化」「社内資金による迅速な開発サイクル」といった設計思想と比較すると、日本のUUV開発は手堅い積み上げ型のアプローチに見えます。それが強みにもなりうる一方で、水中戦の無人化・自律化が急速に進む世界の動きとの距離感も気になるところです。四方を海に囲まれた日本にとって、水中領域は安全保障上も産業上も極めて重要なドメインです。この分野の変化を、みなさんと一緒に丁寧に追いかけていけたらうれしいです。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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