AI翻訳が「クラウドで使うサービス」から「自社で保有する機能」へと移行する2026年。シャープが議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」に搭載した自動翻訳機能は、セキュリティと利便性を両立させるエッジAIという選択肢を、グローバル化する日本企業に提示する。
シャープ株式会社は2026年2月3日、議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」に自動翻訳機能などを新たに搭載したと発表した。
独自のエッジAI技術「CE-LLM」を活用し、日本語と英語、日本語と中国語(簡体)の双方向翻訳に対応する。アップデート版は2026年2月中旬より提供開始する。本製品は外部ネットワークに接続せず議事録作成が可能で、文字起こし、話者分離、要約生成をすべて本体搭載のエッジAIで処理する。
今回のアップデートにより、Webブラウザ上から文字起こしや翻訳、要約生成の操作が可能となり、専用アプリのインストールが不要になった。また、複数人の話し声から話者を分離する精度が向上した。現在利用中の顧客は無償でアップデート版を利用できる。
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議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」に自動翻訳機能などを新たに搭載
アイキャッチはシャープマーケティングジャパン株式会社公式プレスリリースより引用
【編集部解説】
シャープがeAssistant Minutesに翻訳機能を追加したこのタイミングは、エンタープライズAIの重要な転換点を示しています。
2026年、AI翻訳の世界では大きなパラダイムシフトが起きています。GoogleがTranslateGemmaを発表し、OpenAIがChatGPT Translateを投入したのは、いずれも2026年1月のこと。偶然の一致ではなく、AI翻訳が「クラウドで使うサービス」から「自社で保有する機能」へと移行する時代の到来を象徴しています。
シャープのアプローチで注目すべきは、翻訳処理をすべて本体内のエッジAIで完結させる点です。会議の音声データが外部ネットワークに一切流出しないという設計思想は、機密情報や個人情報を扱う企業にとって極めて重要な要件となります。クラウドAI翻訳サービスの多くは、翻訳のたびに音声やテキストデータを外部サーバーに送信する必要があり、金融機関や製薬企業、政府機関などではセキュリティポリシー上の制約から導入が困難でした。
この製品が解決する課題は、単なる言語の壁だけではありません。グローバル化が進む日本企業において、海外拠点との会議は日常的な風景となっています。しかし、リアルタイム翻訳サービスの多くはクラウド経由であり、機密性の高い新製品開発会議や人事評価面談では使えないジレンマがありました。eAssistant Minutesは、セキュリティを担保しながらリアルタイム翻訳を実現する、この矛盾を解消する選択肢となります。
もう一つの重要な進化が、Webブラウザからの操作対応です。専用アプリのインストールが不要になったことで、厳格なIT統制を敷く大企業や官公庁でも導入のハードルが大幅に下がりました。セキュリティポリシーによってソフトウェアのインストールが制限される環境は珍しくなく、この変更は実務上の大きな改善といえます。
ただし、エッジAIには固有の課題も存在します。クラウドAIが膨大なデータで継続的に学習を重ねるのに対し、エッジAIは本体内のモデルに依存するため、翻訳精度の向上スピードでは不利です。シャープは定期的なソフトウェアアップデートでこの課題に対処する方針ですが、専門用語の多い業界では追加の辞書機能が求められるでしょう。実際、シャープは今後のアップデートで企業固有の専門用語を登録できる機能を計画しているとのことです。
価格設定も興味深い戦略です。本製品は買い切り型で、シャープは月額換算で4万円前後での運用を想定しています。クラウド型の議事録サービスは一見安価に見えますが、利用量が増えると従量課金で費用が膨らみます。買い切り型で5年保守付き、使い放題というモデルは、会議が多い組織にとって予算の見通しが立てやすいメリットがあります。
この製品は、AI活用における「所有と利用のバランス」という新しい選択肢を提示しています。すべてをクラウドに頼るのではなく、機密性とコスト、運用の自由度を天秤にかけながら、企業が自らのニーズに合った形でAIを導入する時代が本格的に始まっているのです。
【用語解説】
エッジAI
ネットワークの末端(エッジ)に位置する端末機器内でAI処理を完結させる技術。クラウドにデータを送信せず、デバイス単体で音声認識や翻訳などの処理を行うため、情報漏洩リスクが低く、通信遅延もない。リアルタイム性とセキュリティが求められる用途で注目されている。
CE-LLM(Communication Edge – Large Language Model)
シャープが独自開発したエッジAI技術の総称。エッジデバイスにAI技術を搭載し、外部ネットワークへの接続なしに文字起こし、話者分離、要約生成、翻訳などを実行できる。プライバシー情報に配慮しながらスムーズなコミュニケーションを実現する。
従量課金
利用量に応じて料金が変動する課金方式。クラウドサービスで一般的で、初期費用は安いが使用量が増えると費用が膨らむ。対して買い切り型は初期投資が大きいが長期的なコスト予測がしやすい。
TranslateGemma
Googleが2026年1月に発表したオープンソースの翻訳AIモデル。55言語対応で、自社サーバーで運用可能。商用利用も認められており、データをクラウドに送信せずオンプレミス環境で翻訳できる点が特徴。
ChatGPT Translate
OpenAIが2026年1月に発表した翻訳機能。ChatGPTに統合された形で提供され、トーン調整(ビジネス、カジュアルなど)が可能。TranslateGemmaと同日発表されたことで、AI翻訳市場での競争激化を象徴している。
【参考リンク】
シャープ株式会社 公式サイト(外部)
110年以上の歴史を持つ総合電機メーカー。独創的なモノやサービスを通じて新しい文化の創造を目指す。
eAssistant Minutes 製品サイト(外部)
エッジAI技術CE-LLMを活用した議事録作成支援ソリューション。セキュアな議事録作成環境を提供。
【参考記事】
エッジAIとは?クラウドAI・オンプレミスとの違い、注目のユースケースを解説 | WEEL(外部)
エッジAIの基本概念とクラウドAIとの違いを詳細に解説。セキュリティとリアルタイム性の優位性を強調。
【革命】Google「TranslateGemma」発表!オープンソースで商用利用OK | やすだ.dev(外部)
2026年1月発表のTranslateGemmaを詳述。AI翻訳市場の二極化を指摘。
【2026年1月最新】日本のエッジAIスタートアップ企業リスト | EDGEMATRIX(外部)
2026年のAI技術が「エッジファースト」時代に突入していることを解説。日本市場の動向を整理。
シャープ、セキュリティや利用制限を気にせず導入できるAI議事録作成ソリューションを発表 | マイナビニュース(外部)
eAssistant Minutesの初回発表時の詳細レポート。月額4万円前後での運用想定など価格情報を報じる。
機密情報を守るオンプレミスAI翻訳 SYSTRAN Translate Server(外部)
オンプレミスAI翻訳環境の構築ポイントを紹介。コストとリスクの心配がない翻訳インフラの重要性を解説。
【編集部後記】
グローバル化が進む中で、みなさんの職場でも海外拠点との会議が増えているのではないでしょうか。その中で、便利なクラウド翻訳サービスはたくさんありますが、機密情報を扱う会議では使えないというジレンマに直面したことはありませんか。シャープのアプローチは、この「便利さとセキュリティの両立」という難題に一つの答えを示しています。
エッジAIという技術選択がこれからのエンタープライズAIにどんな可能性をもたらすのか。あるいは、どんな課題が残されているのか。完璧な解決策は存在しませんが、選択肢が広がることで、それぞれの組織に合った道を見つけやすくなります。みなさんの業界や職場では、どのような形でAIを取り入れることが最適だと思われますか。ぜひ一度、考えてみてください。






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