サウジアラビアのキング・ファハド石油鉱物大学のシモーネ・ピリア研究者らが、オマーンのアル・ハジャル山脈の地下で「ゴーストプルーム」と呼ばれる現象を発見した。
この現象は地球のマントル下部から上昇する高温の岩石柱だが、従来のマントルプルームとは異なり地表に火山活動を伴わない。マントルプルームは通常、イエローストーンや東アフリカ地溝帯のように地表で火山活動を示すが、オマーン地域では火山活動が見られない。
この発見は地球内部の熱移動メカニズムに関する従来の理解に挑戦するものである。研究者たちは、地球のコアから地表への熱流動が従来考えられていたよりも多い可能性があると考えている。
この熱流動はテクトニック活動から地球の磁場まで惑星のダイナミクスに影響を与える。類似のゴーストプルームが地球の他の場所に存在するなら、マントルは科学者が想定していたよりも活発で複雑である可能性を示唆している。
From:
Earth’s Core Could Be Leaking Heat Through Secret Plumes
【編集部解説】
今回の発見は、地球科学における従来の常識を覆す可能性を秘めています。これまで科学者たちは、マントルプルームが存在する場所には必ず地表での火山活動が伴うと考えてきました。しかし、オマーンで発見された「ゴーストプルーム」は、この定説に疑問を投げかけています。
この発見が持つ科学的意義は計り知れません。地球内部からの熱流動メカニズムの理解が根本的に変わる可能性があります。従来の対流モデルでは説明できない熱輸送経路が存在することを示唆しており、地球の熱収支計算の見直しが必要になるかもしれません。
マントルプルームは通常、地球のコア・マントル境界から上昇する高温の岩石柱として理解されてきました。これらは地表に到達すると火山活動を引き起こし、ハワイやアイスランドのような火山島や大陸の火山地帯を形成します。しかし、オマーンの事例は、同様の熱源が地表に明確な痕跡を残さずに存在する可能性を示しています。
この研究は地球物理学の分野に新たな研究課題を提起しています。もし世界各地に類似の「隠れた」プルームが存在するとすれば、地球内部の活動は我々が想像していたよりもはるかに複雑で動的である可能性があります。
長期的な視点では、この発見が地熱エネルギー開発に新たな可能性をもたらすかもしれません。従来は火山地帯でのみ注目されていた地熱資源が、実は世界各地の「静かな」地域にも存在する可能性が示唆されているからです。
【用語解説】
マントルプルーム
地球のマントル深部から上昇する高温の岩石柱。通常は地表で火山活動を伴うが、今回発見された「ゴーストプルーム」は地表に火山活動を示さない珍しいタイプである。
ゴーストプルーム
地表に火山活動の兆候を示さないマントルプルーム。従来のマントルプルーム理論では説明できない現象で、オマーンで初めて発見された。
アル・ハジャル山脈
オマーン東部に位置する山脈。今回のゴーストプルーム発見地点の地表にある地理的特徴である。
コア・マントル境界
地球の核とマントルの境界面。この境界からマントルプルームが上昇すると考えられている。
テクトニック活動
地球の表面を構成するプレートの動きや相互作用による地質学的活動。地震や火山活動などを含む。
【参考リンク】
キング・ファハド石油鉱物大学（KFUPM）（外部）
サウジアラビアの国立大学で、石油・鉱物資源分野の研究で世界的に知られる
New Scientist（外部）
英国の科学雑誌で、今回のゴーストプルーム発見を詳細に報じた信頼性の高い科学メディア
【参考動画】
【参考記事】
Earth’s mantle may have hidden plumes venting heat from its core（外部）
オマーンの地下で発見されたゴーストプルームについて詳細に解説した科学記事
A reservoir of gold lies hidden in Earth’s core. Scientists say it’s leaking（外部）
ハワイの火山岩分析により地球のコアから物質が漏出している可能性を示した研究
Ancient ocean floor surrounds Earth’s core, seismic imaging reveals（外部）
地震波解析により地球のコア周辺の古代海底構造を明らかにした研究
【編集部後記】
地球の内部で起きているこの発見を知って、皆さんはどのように感じられましたか？私たちが立っている大地の遥か下で、まだ解明されていない現象が静かに進行していることに、不思議な感動を覚えませんか。この「ゴーストプルーム」の研究が進むことで、将来的には地熱エネルギーの新たな可能性や、他の惑星探査への応用も期待できそうです。地球科学の最前線で、どのような新発見が待っているのか、一緒に見守っていきませんか？
