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紅茶・ダークチョコレート・ベリー類の組み合わせが鍵|フラボノイド摂取で死亡率16%低下

紅茶・ダークチョコレート・ベリー類の組み合わせが鍵|フラボノイド摂取で死亡率16%低下 - innovaTopia - (イノベトピア)

クイーンズ大学ベルファスト、エディス・コーワン大学、ウィーン医科大学の国際研究チームが、フラボノイドの多様性摂取と健康効果に関する研究結果をNature Food誌に2025年6月15日に発表した。

英国バイオバンクの40歳以上の成人124,805人を数年間追跡調査した結果、フラボノイド摂取の多様性が最も高い上位5分の1の参加者は、下位5分の1と比較して全死因死亡率、心血管疾患、2型糖尿病、がん、呼吸器疾患、神経変性疾患のリスクが6〜20%低下した。1日500mgのフラボノイド摂取(紅茶2杯相当)で全死因死亡率が16%、心血管疾患・2型糖尿病・呼吸器疾患が約10%低下した。
また、同じ総摂取量でも多様性の高い摂取がより効果的であることが判明した。

研究で特定されたフラボノイド豊富な食品は、紅茶、緑茶、リンゴ、赤ワイン、ブドウ、ベリー類、ダークチョコレート、オレンジ、みかん、オレンジジュースである。最も多様な摂取をした参加者は1日19種類のフラボノイドを摂取していた。

From: 文献リンクA Mix of These Specific Foods Could Help You Avoid Chronic Disease

【編集部解説】

今回の研究は、従来の「フラボノイドは多く摂取すれば良い」という単純な理解を覆す重要な発見です。これまでの栄養学研究では、特定の栄養素の摂取量に焦点が当てられがちでしたが、本研究は「多様性」という新たな視点を提示しました。

注目すべきは、同じ500mgのフラボノイドを摂取していても、多様な食品から摂取した群の方が、単一または少数の食品から摂取した群よりも健康効果が高かったという点です。これは、異なるフラボノイドが体内で異なる作用機序を持つことを示唆しています。

研究の規模も特筆すべき点です。英国バイオバンクの12万人超を数年間追跡した大規模コホート研究であり、信頼性の高いエビデンスと言えるでしょう。研究では、Shannon指数とHill数という生態学で使用される多様性指標を用いて、フラボノイド摂取の多様性を定量化しています。

この発見が与える影響は多岐にわたります。まず、食品業界では「フラボノイド多様性」を謳った商品開発が活発化する可能性があります。また、栄養指導の現場では、単一のスーパーフードに頼るのではなく、多様な植物性食品の摂取を推奨する方向にシフトするでしょう。

一方で、潜在的なリスクも考慮が必要です。多様性を追求するあまり、過度な食品摂取や偏った食生活につながる恐れがあります。また、フラボノイドが豊富な赤ワインやダークチョコレートには、アルコールや糖分も含まれているため、適量の概念が重要になります。

長期的な視点では、この研究は「精密栄養学」の発展に寄与する可能性があります。個人の遺伝的背景や腸内細菌叢に基づいて、最適なフラボノイド組み合わせを提案する技術の開発が期待されます。

2022年に世界初のフラボノイド摂取量の目安を提言した論文を発表しており、今回の研究結果は多様性の重要性を科学的に裏付けるものとなっています。機能性表示食品の審査基準に「多様性」の概念が導入される可能性もあります。

【用語解説】

フラボノイド
ポリフェノールの一種で、植物に天然に存在する有機化合物群の総称。4,000種類以上存在し、植物の色素や苦み成分となっている。抗酸化作用、抗炎症作用、血管保護作用などの健康効果が知られている。

Shannon指数(シャノン指数)
生態学や情報理論で使用される多様性を測定する指標。今回の研究では、フラボノイド摂取の多様性を数値化するために使用された。値が高いほど多様性が高いことを示す。

Hill数
Shannon指数を指数関数で変換した値で、実効的な種類数を表す。より直感的に多様性を理解できる指標として使用される。

英国バイオバンク
英国で実施されている大規模な疫学研究プロジェクト。40-70歳の約50万人を対象とし、遺伝情報、生活習慣、健康状態を長期追跡調査している。

【参考リンク】

エディス・コーワン大学公式サイト(外部)
オーストラリア西オーストラリア州パースにある公立大学。今回の研究の共同研究者Benjamin Parmenter博士が所属

健康長寿ネット – フラボノイドの種類と効果(外部)
公益財団法人長寿科学振興財団が運営する健康情報サイト。フラボノイドの基本的な知識、種類、効果について詳しく解説

【参考記事】

High diversity of dietary flavonoid intake is associated with a lower risk of all-cause mortality and major chronic diseases(外部)
Nature Food誌に掲載された原著論文。124,805人を対象とした大規模研究で、フラボノイド多様性と健康効果の関連を統計学的に証明

Tea, berries, dark chocolate and apples could lead to a longer life span(外部)
クイーンズ大学ベルファストの公式プレスリリース。研究者の詳細なコメントと研究背景が記載されている

Flavonoid-rich food could boost longevity, major study reveals(外部)
同じ研究結果を詳細に報じた記事。フラボノイド多様性の重要性と2022年に発表された世界初のフラボノイド摂取ガイドラインとの関連について解説

【編集部後記】

普段の食生活を振り返ってみると、同じような食品ばかり摂取していませんか?今回の研究は、フラボノイドの「量」よりも「種類の豊富さ」が重要だと示しています。

お茶、ベリー類、ダークチョコレート、リンゴなど、身近な食品を意識的に組み合わせることで、健康寿命の延伸につながる可能性があります。みなさんは1日にどれくらいの種類のフラボノイドを摂取されているでしょうか?この機会に、食の多様性について一緒に考えてみませんか?

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TaTsu
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