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Amazon支援のX-Energy、「メルトダウンしない核燃料」TRISO製造へ—NRC承認で小型原子炉計画が加速

[更新]2026年2月15日

2026年2月14日、米国原子力規制委員会(NRC)は、Amazonが出資するX-Energyに対し、テネシー州オークリッジの施設で先進型原子炉向け核燃料を製造するライセンスを付与した。これにより、子会社TRISO-Xは、小型モジュール炉Xe-100用の高純度低濃縮ウラン(HALEU)燃料ペレットの製造が可能となる。

同社のTX-1およびTX-2燃料製造施設は、過去半世紀で初めて承認を受けた施設である。TX-1の建設完了は2026年後半を予定しており、年間約70万個のペブル(約11基分)を製造する計画である。Xe-100炉は1基あたり最大80メガワットを60年間連続で発電できる。

Amazonは2024年後半にX-Energyへ5億ドルを投資しており、契約した5ギガワットの電力は2039年までに供給される予定で、最初の炉の稼働は2030年代となる見通しである。

From: 文献リンクAmazon-backed X-Energy gets green light for mini reactor fuel production

【編集部解説】

今回のライセンス取得は、米国における先進型原子炉の商業化において極めて重要な意味を持っています。NRCがCategory IIの核燃料製造施設を承認したのは米国史上初めてのことであり、先進炉向け燃料の国産サプライチェーン構築という観点で、大きな転換点となります。

注目すべきは、このライセンスがNRCの当初想定より3カ月前倒しで発行された点です。NRC委員長のホー・ニー氏は、先進型原子炉の配備を加速するうえで重要なマイルストーンであると述べています。ライセンスの有効期間は40年間で、2066年2月13日まで有効となります。

TRISO燃料の最大の特徴は、その構造そのものが安全装置として機能する点にあります。ウランの核(カーネル)は炭素とセラミック(炭化ケイ素)の3層で覆われ、各粒子がそれぞれ独立した格納容器の役割を果たします。米国エネルギー省(DOE)はTRISO燃料を「地球上で最も堅牢な核燃料」と表現しており、鋼鉄の融点を超える摂氏1800度以上に耐えられるため、原理的にメルトダウンが極めて起こりにくい設計です。このため、従来の原子炉で必要とされた巨大なコンクリート製格納容器を省略でき、建設コストとスケジュールの大幅な圧縮が期待されています。

一方で、TRISO燃料にはコスト面での課題も存在します。従来の低濃縮ウラン(LEU)燃料と比較して製造コストが高く、少なくとも2倍以上になるという専門家の指摘もあります。この燃料に使われる高純度低濃縮ウラン(HALEU)は、通常の原子炉燃料(濃縮度5%未満)より高い5〜20%の濃縮度を持つ特殊な燃料であり、そのサプライチェーンは長年ロシアに依存してきました。

この地政学的リスクに対応するため、米国は2024年にロシアからの濃縮ウラン輸入を禁止し、国内HALEU生産能力の構築を急いでいます。2026年1月にはDOEが10年間で27億ドルの国内ウラン濃縮能力拡張を発表しており、今回のTRISO-Xライセンス取得もこの流れの中に位置づけられます。ただし、米国ではCentrus EnergyがDOE向けに累計約920キログラムのHALEUを生産していますが、2035年までに年間50メートルトン超と見込まれる需要に対して大幅に不足しているのが現状です。

元記事ではAmazonとの5ギガワット契約が強調されていますが、X-Energyの商業パイプラインはそれにとどまりません。X-Energyは11ギガワット規模の商業展開を見据えており、これはXe-100炉144基分に相当します。最初の商業炉は、テキサス州シードリフトにある化学大手Dowの製造拠点に建設される4基のXe-100(合計320メガワット)であり、2025年3月にNRCへ建設許可申請を提出したと報じられています。この計画は、データセンター向けだけでなく、産業用途(電力と高温蒸気の供給)への展開という先進炉のもう一つの可能性を示しています。

もちろん、商業稼働までにはまだいくつもの関門が残っています。TX-1施設は2026年半ばに建屋の完成を見込んでいますが、NRCによる最終的な現地検査を経て初めて燃料製造を開始でき、操業開始は2027年が目標です。さらに、TRISO-X燃料自体もIdaho National Laboratory(INL)で13カ月にわたる照射試験が進行中であり、NRC認可に必要な商用燃料としての適格性証明はまだ完了していません。

それでも、今回の承認は、AIブームに伴うデータセンターの電力需要急増という時代背景のなかで、テクノロジー企業が原子力を真剣なエネルギー戦略の選択肢として組み込み始めていることの証左といえます。炉の設計から燃料製造、サプライチェーンの国産化まで、一つの技術体系として商業化が進む先進型原子炉の動向は、今後10年のエネルギーとテクノロジーの交差点として注視に値するでしょう。

【用語解説】

小型モジュール炉(SMR)
出力が概ね300メガワット以下の原子炉の総称である。工場で部品を製造し現地で組み立てるモジュール方式により、従来の大型原子炉と比較して建設期間の短縮とコスト低減を目指す設計思想を持つ。

TRISO燃料
TRi-structural ISOtropic(三重構造等方性)粒子燃料の略称である。ウランの核(カーネル)を炭素と炭化ケイ素の3層で被覆した微小な粒子で構成される。各粒子がそれぞれ独立した格納容器として機能し、鋼鉄の融点を超える摂氏1800度以上の高温にも耐え、原理的にメルトダウンが起こり得ない。米国エネルギー省(DOE)は「地球上で最も堅牢な核燃料」と位置づけている。

HALEU(高純度低濃縮ウラン)
High-Assay Low-Enriched Uraniumの略。ウラン235の濃縮度が5%超20%未満の核燃料を指す。現行の軽水炉で使われる低濃縮ウラン(5%未満)よりエネルギー密度が高く、多くの次世代炉に不可欠な燃料である。商業規模の生産能力は長年ロシアに集中しており、西側諸国での国産サプライチェーン構築が急務となっている。

10 CFR Part 70
米国連邦規則集(Code of Federal Regulations)第10編第70章。特殊核物質の国内ライセンスに関する規定であり、核燃料製造施設の許認可はこの規定に基づいて行われる。

Category II核燃料製造施設
NRCの分類において、中程度の戦略的重要性を持つ特殊核物質(ウラン235を10%以上20%未満に濃縮したもので1万グラム以上)を取り扱う施設である。TRISO-XのTX-1は米国で初めて承認されたCategory II施設となる。

ペブル(球状燃料体)
数千個のTRISO粒子を黒鉛に埋め込んで成形した、ビリヤードの球ほどの大きさの球状燃料要素である。Xe-100炉では20万個以上のペブルが炉心内を重力で連続的に循環し、運転中も停止せずに燃料交換が可能である。

先進型原子炉実証プログラム(ARDP)
Advanced Reactor Demonstration Programの略。米国エネルギー省(DOE)が2020年に開始した官民連携プログラムで、次世代原子炉の商業化を加速することを目的とする。X-EnergyとTerraPowerが最初の採択企業に選定された。

【参考リンク】

X-Energy公式サイト(外部)
第4世代高温ガス冷却炉Xe-100とTRISO-X燃料を開発する米国の先進型原子炉・燃料企業。11GWの商業パイプラインを構築中。

TRISO-X燃料技術ページ(X-Energy)(外部)
X-Energyが開発する独自TRISO燃料の技術詳細、安全性、製造プロセスに関する公式解説ページ。

米国原子力規制委員会(NRC)(外部)
米国における原子力の安全規制を担う独立機関。原子炉・核燃料施設のライセンス発行や検査・監督を行う。

米国エネルギー省 – TRISO燃料解説ページ(外部)
DOEによるTRISO燃料の公式解説。粒子構造、安全特性、耐熱性能について図解付きで説明している。

Dow – Seadriftプロジェクト プレスリリース(外部)
テキサス州シードリフトにXe-100炉4基を導入する北米初の産業用途向け先進型原子炉配備計画の公式発表。

Amazon – X-Energy投資に関する報道(The Register)(外部)
2024年10月、AmazonがX-Energyに5億ドルを投資しデータセンター向けXe-100炉の導入を発表した際の報道。

【参考記事】

TRISO-X Secures First-Ever NRC Category II License for Commercial Advanced Nuclear Fuel Fabrication(外部)
POWER Magazine(2026年2月14日)。ライセンスの正式名称(SNM-7007)、有効期間40年(2066年2月13日満了)、TX-1の年間生産量5メートルトン(70万ペブル、11基分)、操業開始目標2027年、NRC審査が予定より3カ月前倒しで完了した経緯などを詳報。

The Drive to Establish Domestic HALEU Supply Chains is a Gambit(外部)
The National Interest(2025年12月5日)。2024年の米国内HALEU生産量は約900キログラムにとどまり、2035年までの年間需要予測50メートルトン超との間に大きなギャップがあると指摘。

High-Assay Low-Enriched Uranium (HALEU) – World Nuclear Association(外部)
米国の2024年ロシア産濃縮ウラン輸入禁止、Centrus Energyの920キログラム超HALEU生産実績、DOEの27億ドル国内濃縮能力拡張投資などを網羅的に整理。

X-energy Begins Vertical Construction for First-in-the-Nation Advanced Nuclear Fuel Fabrication Facility(外部)
Business Wire(2025年11月17日)。TX-1施設の地上建設開始を伝える公式リリース。Clark Construction Groupとの4820万ドル建設契約、施設面積214,812平方フィートなどの数値を含む。

US grants first nuclear fuel license in 50 years to Amazon-backed firm(外部)
Interesting Engineering(2026年2月14日)。ライセンスの初期有効期間40年、X-Energyの2016年からのパイロット製造実績、11ギガワット商業パイプラインの全体像を報道。

【編集部後記】

AIが膨大な電力を必要とする時代に、その供給源として「メルトダウンしない燃料」を使う小型原子炉が現実味を帯びてきました。安全性とエネルギー需要の狭間で、私たちの暮らしを支える電力のかたちはどう変わっていくのでしょうか。

みなさんは、データセンターの電源として原子力が広がる未来をどのように感じますか?ぜひご意見をお聞かせください。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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