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Black Veil・HR-Sherpa発表—Hyundai Rotemが水素燃料電池無人車両でWDS 2026に挑む

[更新]2026年2月23日

Hyundai Rotemは2026年2月、サウジアラビア・リヤドで開催されたWorld Defense Show 2026(WDS 2026)に、燃料電池を動力源とする無人プラットフォーム「Black Veil」を出展した。

同プラットフォームは騒音の低減、熱源による被探知性の低下、長時間の作戦継続を特長とする。あわせてK2 Black Pantherシリーズのモデルと、対ドローンシステムを搭載した「HR-Sherpa」も展示した。同社は水素燃料電池をプロトタイプ段階から実用的な運用段階へと位置づけ、無人ロジスティクス・偵察・戦場支援用途での活用を訴えている。

本取り組みはサウジアラビアのVision 2030が掲げるエネルギー多角化と防衛ロジスティクスの持続可能性向上とも整合する。

From: 文献リンクHyundai advances battlefield tech with hydrogen-powered Black Veil

【編集部解説】

今回の展示会は「World Defense Show 2026(WDS 2026)」として、2026年2月8日〜12日にサウジアラビア・リヤドで開催されました。また、「Black Veil」は2025年10月17日〜24日に京畿道高陽市のKINTEX(韓国国際展示場)で開催されたADEX 2025(ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会)で国内初公開されており、WDS 2026が初の海外お披露目の場となりました。

「Black Veil」が注目を集める最大の理由は、燃料電池(Fuel Cell)という動力源の選択にあります。従来の内燃機関やバッテリー駆動の無人車両と比べ、燃料電池は音と熱の両面で「存在感を消せる」という点が際立ちます。エンジン音や排熱は赤外線センサーや音響センサーによる探知を許してしまいますが、燃料電池は化学反応で電力を生み出すため、騒音と熱源シグネチャーをいずれも大幅に抑えられます。副産物は水だけです。

補給の観点でも燃料電池には優位性があります。バッテリーの充電に数時間かかるのに対し、水素の補充は数分で完了します。長時間にわたる偵察任務や前線物資輸送では、この差が作戦の成否に直結します。加えて積載スペースを広く確保した設計は、センサー、通信機器、武装モジュールなど目的に応じた装備を柔軟に搭載できる汎用性を示しています。

同時出展の「HR-Sherpa」は、多目的無人地上車両として以前から開発が続けられてきたプラットフォームです。WDS 2026では、LIG Nex1製の地対空ミサイルと搭載レーダーを統合した対ドローン(C-UAS)新構成バリアントが初披露されました。6輪すべてにインホイールモーターを搭載した設計で、各輪が独立した駆動ユニットを持つため、一部が損傷しても残りの車輪で走行を継続できます。「ドローンをドローンなき地上システムで落とす」という現代戦の新しい解法として注目に値します。

一方で、課題も正直に見ておく必要があります。水素は体積あたりのエネルギー密度が低く、高圧タンクや低温液化といった貯蔵インフラが複雑で重量も増します。現時点でのBlack Veilは技術実証機(Technology Demonstrator)としての性格が強く、量産・実戦配備のコストや耐久性については引き続き評価が必要です。燃料補給インフラが整っていない前線地域では、水素をどう安全に供給するかという兵站上の問題も残っています。

より大きな文脈で見れば、軍用水素はHyundai Rotemだけの挑戦ではありません。米海兵隊は遠征水素生成システムを使った前線での水素現地生成の実証試験を重ねており、米陸軍もGMとの共同による水素戦術車両の開発を進めていると報告されています。各国が同じ方向を向いて動き始めているという事実は、この技術の「方向性」が定まりつつあることを示しています。

長期的には、水素推進の軍事化はエネルギーサプライチェーンそのものを変える可能性があります。従来の燃料輸送は輸送中の攻撃という脆弱性を持ちますが、水素は現地製造や太陽光・風力との組み合わせによる分散型供給が可能になります。Hyundai Rotemが民間の水素・EV開発で培ったノウハウを防衛領域に転用している点は、いわゆる「デュアルユース戦略」の好例であり、開発コストを分散しながら技術習熟を加速させる合理的なアプローチです。

規制面では、水素燃料軍用車両の国際輸出には武器輸出規制などの枠組みが関連する可能性がありますが、燃料電池・水素貯蔵技術そのものについての多国間規格はまだ発展途上です。韓国は防衛輸出を戦略産業と位置づけており、今後の展開次第では技術移転の条件や知的財産保護をめぐる外交的議論が活発になる可能性があります。

【参考リンク】

Hyundai Rotem 公式サイト(外部)
韓国の鉄道車両・防衛産業・プラント設備メーカー。K2 Black Pantherや水素燃料電池無人車両など次世代防衛技術の開発に注力。

Saudi Vision 2030 公式サイト(外部)
石油依存からの脱却を目指すサウジアラビアの国家変革計画。防衛産業の国産化・エネルギー多様化・持続可能技術の育成を重点的に掲げる。

World Defense Show 公式サイト(外部)
サウジアラビア主催の国際防衛産業展示会。2026年2月リヤド開催のWDS 2026にHyundai Rotemが参加した。

【参考動画】

Hydrogen Fuel Cell Unmanned Ground Vehicle(UGV)
水素燃料電池メーカーSpectronikによる公式デモ動画(2023年)。金属水素化物タンクに貯蔵した水素ガスで最大8時間稼働する無人地上車両の実動映像。燃料電池UGVの特長を視覚的に確認できる。

【参考記事】

Hyundai Rotem Debuts ‘Black Veil’ At Riyadh Defense Show(外部)
WDS 2026でのBlack Veil海外初公開を専門メディアが詳報。水素燃料電池の軍事応用における技術的意義と背景を詳述。

Hyundai Rotem to Participate in Saudi International Defense Exhibition(外部)
WDS 2026参加の正式発表記事。HR-Sherpaの世界初公開・6輪インホイールモーター構造・ドローン対処機能など技術詳細を掲載。

Hyundai Rotem targets Middle East at Saudi defense show(外部)
WDS 2026直前の韓国メディア報道。Hyundai Rotemの中東防衛市場進出戦略と展示製品の概要を解説している。

ADEX 2025 – Hyundai Rotem hydrogen fuel cell hybrid 8×8 armoured vehicle(外部)
ADEX 2025でのBlack Veil国内初公開を報道。8輪ハイブリッド装甲車両への燃料電池技術適用計画と技術実証の位置づけを解説。

Hydrogen fuel cells power US Marines in the field(外部)
米海兵隊によるHyTECシステムの野外運用実証を報道。前線での水素現地生成という新アプローチを紹介した重要な比較参考記事。

韓国メディアがWDS 2026のBlack Veilを独自レポート(韓国語)(外部)
韓国メディアがWDS 2026を独自取材。「敵陣直前まで気付かれない」という運用コンセプトと中東防衛市場への韓国の攻勢を詳報。 

【編集部後記】

水素技術といえば「クルマやバスの話」だと思っていませんでしたか?私自身、このニュースを最初に読んだとき、戦場と水素がこれほど自然につながるとは想像していませんでした。

民間で育った技術が、気づけば全く別のフィールドで花を咲かせている。そんな技術の「旅」の面白さを、これからもみなさんと一緒に追いかけていけたら嬉しいです。次にこの技術が姿を現すのは、どんな場所だと思いますか?

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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