Samsung Galaxy Buds、FDAクリアランス取得|ワイヤレスイヤホンがOTC補聴器になる時代へ

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普段は音楽や通話に使うワイヤレスイヤホンが、必要なときには「聞こえ」を支える機器にもなる。そんな境界の変化が現実になりつつあります。Galaxy Budsの新機能を通じて、一般向けイヤホンと補聴器の距離がどこまで縮まったのかを見ていきます。


Samsung Electronicsは、Galaxy Buds向けHearing Aid機能が米FDAのクリアランスを取得したと発表した。18歳以上で軽度から中等度の難聴を自覚する人を対象に、対応イヤホンをOTC補聴器として利用できる。

Galaxy Buds3 ProとGalaxy Buds4 Proでは約5分のHearing Testも利用でき、測定結果に合わせて音を個別に増幅する。両機能は米国と承認済みの一部市場で2026年第4四半期から提供予定で、全機能にはOne UI 8以降の対応Galaxyデバイスが必要となる。

From: 文献リンクSamsung’s Hearing Aid Feature on Galaxy Buds Cleared by FDA

【編集部解説】

今回のポイントは、Galaxy Budsに聴覚を支援する機能が追加されたことだけではありません。Samsungが発表したHearing Aid機能は米FDAのクリアランスを取得しており、対応するGalaxy Budsを米国のOTC補聴器として使用できるようになります。対象は18歳以上で、軽度から中等度の難聴を自覚する人です。

米国でOTC補聴器というカテゴリーが設けられたのは2022年です。FDAは、18歳以上で軽度から中等度の難聴を自覚する人について、耳鼻咽喉科医や聴覚専門家を受診せず、店舗やオンラインで補聴器を購入できる制度を整備しました。処方型補聴器とは異なり、利用者自身が設定や調整を行えることも特徴です。

つまりGalaxy Budsは、一般向けのワイヤレスイヤホンに音声増幅機能が付いただけではなく、一定の条件下で医療機器である補聴器として利用される領域に入ることになります。

Samsungの仕組みでは、Hearing AidとHearing Testが組み合わされています。Galaxy Buds3 ProとGalaxy Buds4 Proでは、約5分間の純音聴力検査によって左右の耳を個別に測定し、オージオグラムを生成します。SamsungはHearing TestをSoftware as a Medical Device(SaMD)として登録していると説明しています。

Hearing Aidは、その検査結果を利用して聞き取りにくい周波数などを個別に増幅します。さらにノイズ除去やビームフォーミングを組み合わせ、前方からの音を聞き取りやすくしながら背景雑音を抑える設計です。フィッティングには、補聴器のフィッティングに用いられるNAL-NL2方式を採用しています。

一般的なワイヤレスイヤホンの利用体験から大きく離れず、検査から補聴までを同じ機器上で行えることが、この仕組みの特徴といえます。

FDAのOTC補聴器制度には明確な対象範囲があります。利用できるのは18歳以上で、本人が軽度から中等度の難聴だと認識している場合です。重度または最重度の難聴を対象とするものではなく、18歳未満向けの補聴器も処方型のカテゴリーとなります。

Samsung自身も、Galaxy BudsのHearing Aidは専門家による診断や治療を代替するものではないと明記しています。

そのため、「補聴器がイヤホンに置き換わる」と捉えるのは適切ではありません。今回広がるのは、主に軽度から中等度の聴力低下を自覚し始めた成人が、日常的に使うワイヤレスイヤホンから聴覚支援へアクセスできる範囲です。

Samsung Galaxy Buds4 Proは、日本でも2026年3月12日に発売されています。Galaxy Buds3 Proも国内販売されているため、Hearing Aidの対応機種そのものは日本市場に存在します。

一方、Samsungの今回の発表では、Hearing AidとHearing Testは米国と「承認された一部市場」で2026年第4四半期から提供するとされており、日本がその対象に含まれるとは明示されていません。

2026年8月12日時点で、Samsungが確認できる日本向け公式情報では、今回のHearing Aid機能の国内提供は発表されていません。

したがって、日本のユーザーにとっては「対応イヤホンをすでに持っていれば、そのまま補聴器として使える」と考えるのはまだ早い段階です。医療機器としての規制やSamsungによる国内提供の判断を含め、日本向けの正式発表を待つ必要があります。

今回の動きからは、一般向けオーディオ機器と補聴器の機能上の境界が近づいていることがうかがえます。普段音楽や通話に使うイヤホンが、必要になったときには聴力を測定し、個人に合わせて音を補う機器にもなる。Galaxy Budsの動きは、補聴器への入口を専用機器だけに限定しない方向へ広げる一例といえます。 

【関連記事】

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【編集部後記】

イヤホンが補聴器として認められる時代が来たのかと思うと、デバイスの進化を実感します。専用の補聴器に加えて、普段使っているイヤホンも選択肢になるのは興味深いところです。特に、補聴器を検討する際にはコスト面が気になる人も少なくないでしょう。身近なワイヤレスイヤホンから利用できるのであれば、導入の敷居も下がりそうです。
必要な人が自分に合った方法を選べるよう、こうした選択肢が増えていくのは良いことだと感じます。


【用語解説】

OTC補聴器(Over-the-Counter Hearing Aid)
米FDAが設けた補聴器カテゴリー。18歳以上で軽度から中等度の難聴を自覚する人を対象とし、医療従事者の診察や処方箋なしで店舗やオンラインから購入できる。

オージオグラム
周波数ごとにどの程度の小さな音まで聞き取れるかを左右の耳別に記録した聴力図。SamsungのHearing Testでは検査結果からオージオグラムを作成し、Hearing Aidの調整に利用する。

SaMD(Software as a Medical Device)
「Software as a Medical Device」の略。ハードウェア医療機器の一部としてではなく、ソフトウェア自体が医療上の目的を担うものを指す。SamsungはGalaxy BudsのHearing TestをSaMDとして登録していると説明している。

NAL-NL2
補聴器のフィッティングに用いられる方式。聴力検査結果などを基に、周波数ごとの増幅量を設定するために使われ、Galaxy BudsのHearing Aidでも採用されている。

ビームフォーミング
複数のマイクから得た音を処理し、特定方向から届く音を重点的に拾う技術。SamsungのHearing Aidでは、前方の話し声を聞き取りやすくするために利用される。

【参考リンク】

Samsung Galaxy Buds4 Pro|Samsung Japan(外部)
Galaxy Buds4 Proの国内向け公式製品ページ。オーディオ機能、対応Galaxyデバイス、接続条件などの製品情報を確認できる。

Hearing Aids|U.S. Food and Drug Administration(FDA)(外部)
米国における補聴器の規制や利用者向け情報を掲載するFDA公式ページ。OTC補聴器と処方型補聴器の制度や対象者を確認できる。

【参考記事】

OTC Hearing Aids: What You Should Know|U.S. Food and Drug Administration(外部)
FDAがOTC補聴器の対象者や購入方法、処方型補聴器との違い、医療機関への相談が必要な症状などを解説する公式情報。

「Samsung Galaxy Buds4 Pro」「Samsung Galaxy Buds4」2026年2月26日予約開始・3月12日発売|Samsung Newsroom 日本(外部)
Galaxy Buds4 ProとGalaxy Buds4の日本での発売日や機能を発表したSamsung公式情報。国内では2026年3月12日に販売を開始。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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