スマートフォンの形が一枚板に収束して久しいなか、リーク情報によればHMDはあえて「動く筐体」を選ぼうとしているようです。かつてのNokia N95を思わせるスライダー構造は、懐かしさだけの復刻なのか、それとも現代の操作体験に新しい意味を持たせる試みなのでしょうか。
リーカーのsmashx_60によれば、HMDが2020年に開発されながら製品化されなかったNokia N95着想の試作機を基に、新たなスライダー型スマートフォンを開発しているという。
2020年の試作機は、ディスプレイを横方向へスライドさせるとデュアルフロントカメラと大型スピーカーが現れる構造だった。今回報じられた新型機について、製品名、発売時期、価格、販売地域、具体的な仕様は現時点で公表されていない。
From:
Forgotten Nokia N95 Surfaces: HMD Developing New Slider Smartphone
【編集部解説】
今回の情報で重要なのは、HMDが「Nokia N95を復刻する」と公式に確認したわけではない点です。2026年8月時点で確認できるのは、リーカーのsmashx_60を情報源とする未発表端末の開発情報です。HMDの公式製品一覧やNewsroomでは、このスライダー型スマートフォンの正式発表は確認できません。したがって、製品名や発売時期、価格、販売地域を含め、現段階ではリーク情報として扱う必要があります。
「N95復刻」より、物理構造を再び使うことがポイント
今回の端末を理解するには、オリジナルのNokia N95と、2020年にHMDが検討した試作機を分けて考える必要があります。2007年のNokia N95は上下方向へ動くデュアルスライダー構造を採用していました。一方、2020年の試作機はディスプレイを横方向へスライドさせ、デュアルフロントカメラと大型スピーカーを露出させる構造でした。
現在主流のスマートフォンでは、操作の大半をタッチスクリーン上で完結できます。それでもHMDが同様の可動構造を現代の端末に持ち込むのであれば、画面だけでは作れない操作体験そのものを製品の特徴にしようとしている、と見ることができます。これは現時点では編集部による解釈であり、HMDが開発目的を公式に説明したものではありません。
HMDには、筐体構造そのものを製品の特徴にした例があります。Nokia 5710 XpressAudioでは、本体背面のスライド式カバー内部にワイヤレスイヤホンを収納する構造を採用しました。一般的なスマートフォンや携帯電話とは異なる物理機構を、実用上の機能に結び付けた事例です。
HMDが採用してきた特徴的な筐体設計
HMDの近年の製品を見ると、ハードウェアそのものに明確な役割を持たせる設計も確認できます。2024年に発表されたHMD Skylineでは「Gen2 Repairability」を採用し、ディスプレイやバッテリー、充電ポートなどをユーザーが交換しやすい構造を特徴としています。
今回のスライダー端末も同じ思想で開発されていると断定することはできません。ただ、一般的な一枚板型スマートフォンと同じ構造でスペックだけを競うのではなく、筐体や操作方法そのものを差別化要素として使う方向性には、HMDの既存製品との接点があります。
最大の問題は「動かす意味」があるか
一方、スライダー機構を採用すれば、それだけで使いやすくなるわけではありません。可動部を追加する以上、通常の一枚板型スマートフォンにはない機械構造が増えます。元記事も、製品として成立するうえでスライダー機構の信頼性や価格設定が重要になると指摘しています。
なお、一部報道では6.39インチのIPS LCD、48MPを含むトリプルカメラ、4,500mAhバッテリー、20W充電といった数値も掲載されていますが、これらを2026年の新型機の確定仕様として扱うことはできません。新型機の具体的なスペックは現時点で公表されていないため、購入判断に使える段階ではありません。
現時点で見るべきなのはスペックよりも、「スライドすると何ができるのか」です。2020年の試作機ではカメラとスピーカーが露出する構造でしたが、今回の新型機でも同じ構成になるかは分かっていません。物理機構を日常操作にどう結び付けるかによって、この端末の価値は大きく変わります。
つまり今回の端末は、Nokia N95という名前の懐かしさよりも、全面タッチスクリーンが当たり前になった現在に、あえて「動くスマートフォン」を持ち込む理由があるのかが焦点です。正式発表される場合には、価格や性能だけでなく、この機械構造が日常の操作をどう変えるのかを確認する必要があります。
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【編集部後記】
スライダー型スマートフォンという発想には、単なる懐かしさ以上の面白さを感じます。スマートフォンが一枚板の形にほぼ収束した今、あえて物理的に動く構造を持ち込むこと自体が、強い個性になります。一方で、その仕掛けが「触って楽しい」だけで終わるのか、日常的な使いやすさにつながるのかは別の問題です。
厚みや耐久性、価格とのバランスまで含めて成立してこそ、現代にスライダーを復活させる意味が出てくるはずです。個人的には、スペック競争とは違う方向からスマートフォンの形を問い直す試みとして、かなり気になる存在です。
正式発表があるなら、まずは「スライドすると何ができるのか」を実機で確かめてみたいです。
【用語解説】
スライダー型スマートフォン
ディスプレイや筐体の一部を物理的にスライドさせ、隠された機能部や操作部を露出させる構造を持つスマートフォン。全面タッチスクリーン型とは異なり、可動部そのものを操作体験に利用する設計。
Nokia N95
2007年に登場したNokiaの携帯端末。上下方向に動くデュアルスライダー構造を採用し、T9キーパッドとマルチメディア操作キーを筐体構造に組み込んだ製品。
IPS LCD
液晶ディスプレイ方式の一種。広い視野角や安定した色表示を特徴とし、スマートフォンやPCモニターなどで広く採用される。
【参考リンク】
HMD(外部)
フィンランドのモバイルデバイスメーカーHMDの公式サイト。現在販売しているスマートフォンやフィーチャーフォン、企業情報などを確認可能。
HMD Skyline(外部)
ユーザーによる部品交換のしやすさを特徴としたHMDのスマートフォン。ディスプレイやバッテリーなどの修理性を重視した製品設計を確認可能。
Nokia 5710 XpressAudio(外部)
背面のスライド式カバー内にワイヤレスイヤホンを収納する構造を採用した携帯電話。HMDによる特徴的な物理機構の実装例。
【参考記事】
HMD Skyline|HMD(外部)
HMD Skylineの公式製品ページ。Gen2 Repairabilityや交換可能な部品など、修理しやすい筐体設計を確認するために参照。
Nokia 5710 XpressAudio|HMD(外部)
本体背面にワイヤレスイヤホンを収納するスライド構造を採用した公式製品ページ。HMDが物理構造を製品機能として活用した事例。


















