スマートフォンは私たちを「つなぐ」ためにあったはずが、いつの間にか「消費」させるデバイスになっていないだろうか。物理キーボードを搭載したAndroidスマートフォン「Clicks Communicator」は、その問いに対する一つの答えを示している。
Clicks Technologyは2026年1月2日、物理キーボードを搭載したAndroidスマートフォン「Clicks Communicator」を発表した。コミュニケーションに特化したセカンドフォンとして設計され、Smoke、Clover、Onyxの3色で展開する。予約は1月2日から開始され、デポジット199ドルでアーリーバード価格399ドルを確保できる。
通常価格は499ドルで、2026年後半に出荷予定である。Android 16を搭載し、5年間のセキュリティアップデートを提供する。4,000mAhのシリコンカーボンバッテリー、256GBストレージ、50MPメインカメラ、24MPフロントカメラを備える。通知を表示するSignalライト、音声入力用のPrompt Key、3.5mmヘッドフォンジャック、最大2TBのmicroSDストレージ拡張に対応する。
Niagara Launcherと提携してホーム画面を最適化した。同社は2024年にClicks Keyboardケースを発売し、100カ国以上で10万台以上を出荷している。CES 2026で1月6日から9日まで展示予定である。
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Clicks Introduces Communicator, a Second Phone Built for Communication, Not Consumption










【編集部解説】
このClicks Communicatorの発表は、単なる新製品リリース以上の意味を持ちます。2026年を迎えた今、デジタルウェルビーイングへの関心が世界的に高まっており、「スマートフォンとどう付き合うか」という問いに対する一つの明確な答えを示しているからです。
Clicksが掲げる「消費ではなくコミュニケーション」というコンセプトは、現代のスマートフォンが抱える本質的なジレンマを突いています。フラッグシップ端末は大画面化し、高性能カメラを搭載し、無限のコンテンツ消費を促すように進化してきました。しかし、その結果として「ドゥームスクロール」と呼ばれる無意識の閲覧行動や、通知に振り回される日常が生まれています。
セカンドフォンという選択肢が注目される背景には、仕事とプライベートの分離だけでなく、テクノロジーとの健全な距離感を求める動きがあります。デジタルデトックス市場は2033年までに27億ドルから倍増すると予測されており、Light PhoneやPunktといったミニマリスト端末への需要が高まっています。Communicatorはこの流れの中で、「完全に切断する」のではなく「目的を持って接続する」という中道を提案しています。
物理キーボードの復権も見逃せません。BlackBerry全盛期を知る世代にとって、触覚フィードバックのある物理キーは単なるノスタルジアではなく、実用的な生産性ツールです。タッチスクリーンでは得られない正確性、タイピング速度の向上、画面を見ずに入力できる利便性は、メッセージングを主軸とする端末において大きなアドバンテージとなります。
Niagara Launcherとの提携も戦略的に興味深い選択です。1,200万以上のダウンロードを誇るこのランチャーは、ミニマリストなインターフェースと片手操作に最適化されたデザインで知られています。アプリの氾濫から解放され、必要な情報だけを表示するという哲学は、Communicatorのコンセプトと完全に合致しています。
Clicksの戦略で注目すべきは、iPhoneやPixelと「競合しない」と明言している点です。CMOのJeff Gadwayが「KindleがiPadに対してそうであるように」と表現したように、補完的な製品としてのポジショニングを明確にしています。これは市場の成熟を理解した賢明な判断でしょう。
同社は既にキーボードケースで10万台以上を100カ国以上に出荷しており、物理キーボードへの需要を実証済みです。この実績があるからこそ、単体端末への展開に踏み切れたと言えます。予約デポジット199ドル、アーリーバード価格399ドル、通常価格499ドルという価格設定は、ニッチ市場を狙った戦略的なものです。
ただし、課題もあります。高さ131.5mmというコンパクトなサイズゆえにディスプレイも小型で、現代の基準では制約があり、50MPカメラを搭載しているとはいえ「コンテンツキャプチャは主端末に任せる」というコンセプトとの矛盾も感じられます。また、Android 16という最新OSを搭載しながら、用途を限定することで潜在的な機能を制限してしまうジレンマもあります。
それでも、この製品が投げかける問いは重要です。私たちは本当に6インチ以上の画面とハイエンドスペックを常に必要としているのか。メッセージに返信し、メールを処理し、必要な情報にアクセスするだけなら、もっとシンプルな選択肢があるのではないか。Communicatorは、そうした問いに対する一つの具体的な答えとして、CES 2026で注目を集めることになるでしょう。
【用語解説】
ドゥームスクロール
SNSやニュースフィードを無意識に延々とスクロールし続ける行動を指す造語。ネガティブなニュースを見続けることで精神的疲労を招くことから「doom(破滅)」と「scroll(スクロール)」を組み合わせた表現である。
デジタルウェルビーイング
デジタル機器やテクノロジーとの健全な関係性を保ち、精神的・身体的な健康を維持する概念。スクリーンタイムの管理や通知のコントロールなど、意識的なテクノロジー利用を推奨する取り組みを指す。
Signalライト
Clicks Communicatorに搭載された通知用LEDライト。特定の人物、グループ、アプリごとに色や光のパターンをカスタマイズでき、画面を見ずに重要な通知を識別できる機能である。
Prompt Key
Clicks Communicator側面に配置された多機能ボタン。音声入力の開始、音声録音、将来的にはAIアシスタントとの連携など、様々な機能を割り当てられる専用キーである。
eSIM
embedded SIMの略称で、端末に組み込まれた電子的なSIMカード。物理的なSIMカードの交換なしに、オンラインでキャリアの切り替えや契約変更ができる技術である。
セカンドフォン
メインのスマートフォンとは別に携帯する2台目の端末。仕事とプライベートの分離、旅行用、デジタルデトックスなど、用途に応じて使い分けるライフスタイルを指す。
OIS(Optical Image Stabilization)
光学式手ブレ補正の略称。カメラレンズやセンサーを物理的に動かすことで手ブレを補正する技術で、暗所撮影や動画撮影時の画質向上に寄与する。
【参考リンク】
Clicks Technology公式サイト(外部)
物理キーボード搭載iPhone用ケースで知られる企業。2026年に独自Androidスマートフォン「Communicator」を発表。製品情報や予約受付を提供。
Niagara Launcher公式サイト(外部)
1,200万以上のダウンロードを誇るミニマリスト志向Androidランチャー。Clicks Communicatorのホーム画面体験を共同開発。
CES 2026公式サイト(外部)
毎年1月にラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市。2026年は1月6日から9日まで開催。Communicatorも展示予定。
【参考動画】
Clicks Communicator: The Keyboard Phone We Deserve!
Clicks Technology共同創設者でYouTubeテクノロジーレビュアーのMichael Fisher(MrMobile)による公式発表動画。Communicatorの実機デモンストレーションと製品コンセプトの詳細な解説を視聴できる。
【参考記事】
Clicks is bringing its first smartphone and a new keyboard to CES 2026(外部)
Engadgetによる発表記事。価格設定とスペック詳細、CES 2026での展示情報を報じている。
Clicks debuts its own take on the BlackBerry smartphone(外部)
TechCrunchの詳細レポート。キーボードケースで10万台以上出荷の実績と、物理キーボードスマートフォンへの需要を分析。
Clicks Communicator is an Android phone with a keyboard(外部)
9to5GoogleによるAndroid端末としての報道。Niagara Launcher提携によるホーム画面最適化とメッセージング特化体験を詳述。
Phone Addiction: How to Start a Digital Detox in 2026(外部)
CEO Today Magazineによるデジタルデトックス市場分析。2033年までに27億ドルから倍増との予測を報じている。
Android with Blackberry Keyboard A Nostalgic Fusion(外部)
物理キーボード搭載Android端末の需要分析記事。触覚フィードバックと生産性向上のメリットを論じている。
【編集部後記】
あなたのスマートフォンとの関係は、健全でしょうか。私自身、気づけばSNSを延々とスクロールしていることがあります。Clicks Communicatorが提案する「2台持ち」という選択肢は、テクノロジーとの付き合い方を見直すきっかけになるかもしれません。
物理キーボードで素早くメッセージに返信し、その後は画面を閉じる。そんなシンプルな使い方が、かえって新鮮に感じられる時代になったのかもしれませんね。みなさんは、どんな「スマホとの距離感」が理想ですか。
































