Polarは2026年3月25日、スマートウォッチ「Polar Street X」を249.90ドルで発売した。1.28インチAMOLEDディスプレイにGorilla Glass 3を採用し、重量は48g。MIL-STD-810H準拠、WR50(50m)防水に対応する。Polarウォッチ初となる内蔵LEDフラッシュライト(白・赤の2モード)を搭載し、170以上のスポーツモード、GPS、コンパス、気圧計、HRVモニタリング、睡眠ステージトラッキング、皮膚温度センシングを備える。バッテリーはスマートウォッチモードで最大10日間、GPS+心拍数同時使用時で43時間、最大節電モードで170時間持続する。カラーはナイトブラック、スノーホワイト、フォレストグリーン(数量限定)の3色で、フォレストグリーンの本格展開は2026年第2四半期を予定している。
From:
POLAR Street X | Urban Sports Watch | Polar Global
アイキャッチ画像:公式ストアページより引用
【編集部解説】
Polar Street Xは、スポーツウォッチ市場における「プレミアム機能の民主化」という潮流を象徴する一台です。フラッシュライト内蔵、AMOLED搭載、MIL-STD-810H準拠という組み合わせは、これまで5万円前後の製品にしか見られなかったものですが、Street Xはそれを約4万円(249.90ドル)で実現しています。
注目すべきは、そのターゲット設定の明確さです。Polarは今回、「本格アスリート」向けではなく、ジム・通勤・週末ランニングを自然に行き来する「ハイブリッドアスリート」と呼ばれる新しい層を明確に狙っています。これはPolarがこれまで得意としてきたゾーンとは異なります。複数のメディアが「アーバン・ライフスタイル」という切り口でこの製品を評価しており、T3は「Polarが長年占めていた”ハードコアアスリート向けウェアラブル”という枠を超えようとしている」と指摘しています。
デザイン面では、複数の海外メディアがGarmin InstinctシリーズやG-Shockに似た外観だと指摘しています。ケース四隅のむき出しのスクリューが特徴的で、8本のネジによって強化されたシャーシ構造は耐衝撃性を高める設計上の工夫です。「タフネス感」を視覚的にも主張するデザインは、機能だけでなくユーザーのアイデンティティにも訴えかけようとするものです。
内蔵フラッシュライトは白色と赤色モードを備えており、Polarウォッチとしては初の搭載となります。Garminがこの機能をFenix 7Xで先行導入して以来、上位モデルを中心に普及してきた機能ですが、Street Xは249.90ドルという手頃な価格帯でこれを実現した点が際立っています。早朝・深夜のランニング時の視認性確保や緊急時の照明として、日常的な利便性に直結します。
バッテリー性能もStreet Xの大きな強みのひとつです。Polar公式スペックによれば、GPSを使用するパフォーマンストレーニングモードで最大43時間、通常のスマートウォッチモードでは最大10日間の駆動が可能です。節電設定を有効にした場合は最大170時間まで延長できるため、複数日にわたるアクティビティにも十分対応します。
一方、技術面での留保事項も押さえておく必要があります。プロセッサは275MHzのシングルコアで、メモリはわずか37MBと控えめなスペックです。将来的な機能追加やアプリ対応に制限が出る可能性があります。また、血中酸素濃度(SpO2)測定やECG機能は非搭載で、心拍センサーはPolar独自の「Precision Prime」を採用しており、Vantage M3が搭載する最新のElixirプラットフォームとは異なります。
市場全体の流れで見れば、Street Xの登場はウェアラブル市場における価格競争の激化を改めて示しています。Coros、Amazfit、Samsungといったブランドが続々と高機能・低価格モデルを投入する中、Polarが得意とするリカバリー指標(Training Load Pro、Nightly Recharge、HRVなど)の充実度を武器に、いかに差別化を維持できるかが問われます。
長期的な視点では、今回のStreet Xは単なる廉価モデルの投入ではなく、Polarがブランドのターゲット層を意図的に広げようとする戦略的シフトの一手と見るべきです。かつてWhoop対抗でPolar Loopを出した流れに続き、今度はGarmin Instinct帯の市場を正面から取りにいく姿勢が鮮明です。実機レビューが出そろい、精度や使い勝手の評価が固まる第2四半期以降が、このウォッチの真価が問われる局面となるでしょう。
【用語解説】
MIL-STD-810H
米国国防総省が定める機器の耐環境性試験規格。衝撃、振動、極端な温度、湿度、粉塵などへの耐性を評価する。スマートウォッチに採用される場合、軍用品と同等の試験基準をクリアしたことを示すが、あくまでメーカー自己申告による検証であり、第三者認証とは性質が異なる。
AMOLED(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)
有機ELディスプレイの一種。各画素が自発光するため、黒を完全な黒として表現でき、コントラストが高い。液晶と比べて薄型・軽量で、省電力性にも優れる。スマートウォッチでは視認性や映像の鮮やかさに直結する重要な要素。
Gorilla Glass 3
米Corning社が製造する強化ガラス。スクラッチへの耐性と衝撃吸収性を兼ね備え、スマートフォンやウォッチのディスプレイ保護に広く採用されている。「3」は世代を示し、後継の5や7と比べると耐衝撃性能はやや劣るが、コストとのバランスで選ばれることが多い。
HRV(Heart Rate Variability/心拍変動)
心拍と心拍の間隔のゆらぎを計測する指標。自律神経の状態や回復度を反映するとされ、過度なトレーニングや睡眠不足によって低下する傾向がある。スポーツウォッチでは疲労度や回復度の目安として活用される。
Training Load Pro
Polarが独自開発したトレーニング負荷分析ツール。有酸素・無酸素の負荷を分けて蓄積・評価し、オーバートレーニングや回復不足の把握に役立てる。
Nightly Recharge
就寝中の自律神経の回復状態とスリープチャージ(睡眠の質・量)を組み合わせて評価する、Polar独自のリカバリー指標。翌日のトレーニング強度を調整するためのガイドとして機能する。
Precision Prime
Polar独自の光学式心拍センシング技術。複数の波長の光と皮膚接触センサーを組み合わせ、動作ノイズを抑えて精度を高める。Street Xでは最新のElixirプラットフォームではなくこのセンサーが採用されている。
WR50
ウォッチの防水性能の表記で、50メートル相当の水圧への耐性を示す。水泳や雨天下での使用は問題ないが、スキューバダイビングなどの水中活動には対応していない。
【参考リンク】
Polar Street X 公式製品ページ(外部)
Polar Street X公式ページ。スペック詳細・カラー展開・購入リンクを掲載。公式GPS使用時バッテリーは最大43時間と記載。
Polar 公式プレスリリース — Polar Debuts Street X(外部)
2026年3月25日付の公式発表。製品コンセプト、スペック詳細、CEOサンダー・ウェリング氏のコメントを掲載している。
Garmin 公式サイト(外部)
GPS・ウェアラブル市場のリーダー。FenixやForerunnerなど幅広いラインナップを展開する、Polarの主要競合ブランド。
Coros 公式サイト(外部)
中国発のスポーツウォッチブランド。軽量・長寿命バッテリーを特徴とするPace 4などでStreet Xと同価格帯で直接競合する。
【参考記事】
Polar Street X launches as $249 smartwatch with LED flashlight and GPS navigation|NotebookCheck(外部)
プロセッサ275MHz・メモリ37MBというハードウェアスペックを具体的に報じた主要メディア記事。Vantage M3($399)との価格比較も行っている。
new Polar Street X First Thoughts: A New Market, Not an Instinct Killer|the5krunner(外部)
Garmin Instinct 3 AMOLED(£349.99〜)との本質的な違いを分析。Polarが狙う「ライフスタイル型都市アスリート」市場を論じた独自視点の記事。
Polar takes on G-Shock with its toughest watch yet and adds a Garmin-style flashlight|T3(外部)
£219/€249.90/$249.90の価格情報とPolar CEOサンダー・ウェリング氏のコメントを掲載。G-Shock的デザインとハイブリッド戦略を解説。
【編集部後記】
フィットネスウォッチの選択肢が増えるほど、「自分にとって本当に必要な機能は何か」という問いが重要になってきます。GPS精度、バッテリー、リカバリー指標、デザイン——どこに価値を感じるかは人それぞれです。日本ではまだ発売されていませんが、今後の展開に期待して待ちたいと思います。







































