ケモ脳治療に光る希望、MIT研究チームが非侵襲的新療法を発見

Last Updated on 2024-03-07 08:34 by 荒木 啓介

ケモ脳は、化学療法を受ける患者が経験する認知症状で、記憶障害や集中力の低下などが特徴である。MITの研究者は、ガンマ脳波を刺激する非侵襲的な治療法がケモ脳の治療に有望であることを示した。この治療法は、40ヘルツの光と音に毎日曝露することで、ケモ療法による脳細胞の損傷を防ぐ効果がある。元々アルツハイマー病の治療法として開発されたもので、DNAの損傷を減少させ、炎症を抑制し、ミエリンを生成する細胞の数を増やす効果がある。マウスを用いた実験では、学習能力や記憶力の改善、実行機能の向上が示された。アルツハイマー病患者においても有望な効果が見られ、臨床試験が行われている。今後は、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経疾患における効果も検証される予定である。

【ニュース解説】

化学療法を受けるがん患者に見られる「ケモ脳」とは、記憶障害や集中力の低下などの認知機能障害を指します。この状態は、化学療法の副作用として広く認識されており、患者の生活の質に大きな影響を与えることがあります。マサチューセッツ工科大学（MIT）の研究チームが、ケモ脳に対する非侵襲的な治療法を発見したというニュースは、この分野における大きな進歩を示しています。

この治療法は、40ヘルツの光と音による刺激を用いてガンマ脳波を活性化させることにより、化学療法によって引き起こされる脳細胞の損傷を防ぐものです。ガンマ脳波は、脳の様々な機能、特に注意力、知覚、記憶に関連しているとされています。この治療法は元々、アルツハイマー病の患者の認知症状を改善するために開発されましたが、その効果はケモ脳にも及ぶことが示されました。

この治療法のポジティブな側面は多岐にわたります。まず、DNAの損傷を減少させ、炎症を抑制することで、脳の健康を保護します。また、ミエリンを生成する細胞（オリゴデンドロサイト）の数を増やすことで、神経の通信を改善し、記憶力や学習能力、実行機能の向上に寄与します。さらに、この治療法は非侵襲的であり、患者にとっての負担が少ないという利点もあります。

しかし、潜在的なリスクや規制に関する影響も考慮する必要があります。例えば、この治療法がすべての患者にとって安全かつ効果的であるかどうかは、さらなる研究によって明らかにされるべきです。また、長期的な影響や副作用についても、詳細な調査が必要です。

将来的には、この治療法がアルツハイマー病だけでなく、パーキンソン病や多発性硬化症など他の神経疾患に対しても有効である可能性があります。これにより、神経疾患の治療法としての応用範囲が広がることが期待されます。また、この治療法の臨床試験が進むにつれて、より多くの患者がこの新しい治療オプションの恩恵を受けることができるようになるでしょう。

総じて、MITの研究チームによるこの発見は、ケモ脳を含む様々な神経疾患の治療において、新たな希望を提供しています。今後の研究と臨床試験の結果が待たれます。

from A noninvasive treatment for “chemo brain”.