体内時計が薬の効果を左右、MIT研究が新たな治療法の道を拓く

体内時計が薬の効果を左右、MIT研究が新たな治療法の道を拓く - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2024-10-03 06:08 by admin

従来の薬の投与スケジュールは体内での薬の代謝に影響を与え、タイレノールなどの薬は特定の時間帯においてより効果的に代謝されることが分かっている。このため、既存の薬の投与スケジュールを最適化することで、効果を最大化し毒性を最小化することが可能である。

薬の代謝に関与する肝臓の遺伝子は免疫応答にも関与しており、肝臓の免疫応答は時間帯によって変動する。この変動により、感染症のリスクが特定の時間帯において高まる可能性がある。

エンジニアリングされた肝臓は、薬の代謝や免疫応答の研究に有用であり、この技術を用いた研究により感染症の研究や薬のスクリーニングが可能になる。エンジニアリングされた肝臓の研究は、医療の進歩に貢献する可能性がある。

【ニュース解説】

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちが行った新しい研究により、人間の肝臓における薬物の代謝効率が、体内時計(サーカディアンリズム)によって大きく影響を受けることが明らかになりました。この研究では、人間のドナーから得た細胞を用いて作成された小さなエンジニアリング肝臓を使用し、300以上の肝臓遺伝子がサーカディアンリズム(体内時計)の制御下にあることを発見しました。これらの遺伝子の活動は、薬物が体内でどのように分解されるか、どれだけの量が利用可能になるかに影響を及ぼします。例えば、タイレノールや他の薬物を分解する酵素が、一日の特定の時間帯に多く存在することが分かりました。

この発見は、薬物の投与スケジュールを最適化することで、その効果を最大限に引き出し、毒性を最小限に抑えることが可能であることを示唆しています。また、肝臓の遺伝子の多くが免疫応答、特に炎症反応に関与していることから、サーカディアンリズムが感染症のリスクにも影響を及ぼす可能性があることが示されました。特定の時間帯において、肝臓がマラリアなどの感染症に対してより脆弱になることが観察されました。

この研究は、薬物の代謝や免疫応答に関する理解を深めるだけでなく、感染症の研究や新しい薬物のスクリーニングにも応用可能です。エンジニアリングされた肝臓を使用することで、実際の人間の肝臓に近い条件下での実験が可能になり、より正確なデータを得ることができます。これにより、薬物の安全性と効果を評価する新しい方法が開発される可能性があります。

しかし、この技術の応用には慎重なアプローチが必要です。サーカディアンリズムに基づいた薬物投与スケジュールの最適化は、個々の生活リズムや健康状態によって異なる可能性があるため、個別化医療へのさらなる研究が必要です。また、エンジニアリングされた肝臓モデルが実際の人間の肝臓と完全に同じ挙動を示すわけではないため、研究結果を臨床応用に移行する際には、追加の検証が求められます。

長期的には、この研究は薬物治療のパーソナライズ化に貢献し、患者にとってより安全で効果的な治療法の提供につながる可能性があります。また、感染症のリスクが時間帯によって変動することの理解は、予防策の開発や感染症の治療法に新たな視点をもたらすことでしょう。このように、サーカディアンリズムを考慮した医療の進展は、将来の医療において重要な役割を果たすことが期待されます。

from Circadian rhythms can influence drugs’ effectiveness.

ホーム » ヘルスケアテクノロジー » ヘルスケアテクノロジーニュース » 体内時計が薬の効果を左右、MIT研究が新たな治療法の道を拓く