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2025年医療テクノロジー導入状況:進むデジタル化と医療スタッフの業務負担

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-03-17 15:15 by admin

2025年3月16日、ヘルスケアIT専門メディア「Healthcare IT Today」のコリン・ハング氏が「ボーナス特集」として、医療分野における最新の調査結果をまとめた記事を公開した。

医療テクノロジー導入に関する複数の最新調査結果をまとめると、米国の医療機関では技術活用が急速に進んでいる。グーグルの調査(2025年2月、650機関対象)では100%の機関がデジタルトランスフォーメーションを導入し、エピックの調査では96%が電子健康記録を含むデジタルヘルスを活用。SASの調査では92%がデータ分析を、NVIDIAの調査では88%が医療画像などに人工知能を導入していることが分かった。

一方、Qualtricsの調査(2025年1月、医療スタッフ1,000人対象)では69%が管理業務によって患者サポートが妨げられ、72%が燃え尽き症候群を経験していると回答。ミシガン大学の調査では、医療機器からアラートを受け取る患者の76%が医師にも送信し、92%がこれを有用と感じている。

from:Bonus Features – March 16, 2025 – 69% of healthcare staff say admin work interferes with ability to provide patient support, 76% of patients receiving alerts from medical devices had their issue successfully diagnosed, plus 25 more stories

【編集部解説】

医療現場におけるデジタル技術の活用は、2025年の今、まさに転換点を迎えています。今回の調査結果は、米国の医療機関における技術導入の実態を包括的に示していますが、その背景には重要な課題が潜んでいることがわかります。

特に注目すべきは、医療スタッフの69%が管理業務によって患者サポートが妨げられていると感じている点です。Creyosの調査によれば、医師は年間でかなりの不必要な管理業務に費やしているとされています。この膨大な時間は本来、患者ケアに向けられるべきものであり、医療の質に直接影響を与えています。

また、医療スタッフの72%が燃え尽き症候群を経験しているという数字は、医療システム全体の持続可能性に警鐘を鳴らしています。英国のキングス・ファンド研究所の報告によれば、管理プロセスの不備は患者の安全性や臨床結果にも影響を及ぼし、再入院や投薬ミス、深刻な危害につながる可能性があることが指摘されています。

一方で、医療機器からのアラート通知に関する調査結果は興味深い展開を示しており、患者の76%がアラートを医師に送信し、62%が家族にも共有しているという事実は、医療情報の透明性と共有が進んでいることを示しています。英国のNHSとMHRAが2014年に共同で発表した患者安全アラートでは、医療機器に関する事故報告の質を向上させるための取り組みが始まっていましたが、その取り組みが10年を経て実を結びつつあると言えるでしょう。

生成AIの活用については、82%の医療機関が導入しているという数字が示すように、急速に普及が進んでいます。RFIDジャーナルの報告によれば、2025年の生成AIは特に創薬分野で変革をもたらし、深層学習と高度なアルゴリズムにより、医薬品の設計と開発を加速させることが期待されています。また、CHIMEの報告書によれば、2025年はAIを活用した臨床医の時代の幕開けとなり、人材の制約が技術的な役割から知識労働者とその新技術受容能力へとシフトする転換点になると予測されています。

遠隔患者モニタリング(RPM)の74%という高い導入率は、医療提供の形態が根本的に変わりつつあることを示しています。LinkedInの記事によれば、RPMは2025年までに医療の基本的な構成要素となり、AIと機械学習の統合により、医療提供者は反応型から予防型の患者ケアへとシフトできるようになっています。

バーチャルケアの普及も注目に値します。Healthcare IT Newsの予測によれば、2025年にはテレヘルスが医師のパネルサイズ(担当患者数)を拡大し、より多くの業務委任を可能にするとされています。これにより、医師は複雑でない業務を委任し、より専門的なケアに集中できるようになるでしょう。

これらの技術導入が進む一方で、サイバーセキュリティの重要性も高まっています。医療機関の94%がサイバーセキュリティ対策を実施しているという数字は、デジタル化に伴うリスク管理の意識が高まっていることを示しています。

デジタルトランスフォーメーションが医療機関の100%で進行しているという事実は、医療業界が大きな変革の波に乗っていることを示しています。しかし、この変革が真に患者中心のケアを実現するためには、技術導入だけでなく、医療スタッフの負担軽減や業務プロセスの最適化も同時に進める必要があるでしょう。

【用語解説】

燃え尽き症候群(バーンアウト):
医療や福祉、教員など対人援助職に従事する人に多く見られる症状で、絶え間ない過度のストレスにより、それまで意欲をもって没頭していた人が急に何もできなくなる状態。医療スタッフの72%が経験しているという数字は深刻な問題を示している。

遠隔患者モニタリング(RPM):
デジタル技術を使用して患者の健康データを収集し、遠隔地から医療提供者に転送するシステム。ウェアラブルやモバイルアプリなどのデバイスを使用して、患者のバイタルサイン、症状、全体的な健康状態を継続的に監視する。

バーチャルケア:
オンライン診療のことで、予約から受診、支払いまでを一貫してインターネットで行える新しい診療スタイル。コロナウイルス感染拡大に伴い急速に普及が進んだ。

医療DX(デジタルトランスフォーメーション):
医療分野においてデジタル技術を活用することで、医療の質や効率を向上させる取り組み。政府の「医療DX令和ビジョン2030」に基づき、オンライン予約・診療、標準型電子カルテやAIなどによる院内デジタル化の推進等を指す。

【参考リンク】

Qualtrics(クアルトリクス)(外部)
従業員や顧客の体験を管理・分析するプラットフォームを提供する企業。医療スタッフの燃え尽き症候群調査を実施。

ミシガン大学医療システム(外部)
米国ミシガン州の大規模医療システム。医療機器からのアラート通知に関する調査を実施。

アクセンチュア(外部)
グローバルなコンサルティング企業で、医療分野における生成AIの活用を推進。

デロイト(外部)
グローバルな専門サービス企業。遠隔患者モニタリングのセキュリティに関する調査を実施。

AWS(Amazon Web Services)(外部)
クラウドコンピューティングサービスを提供。医療機関のデータ利活用や電子カルテなどに活用。

SAS(外部)
データ分析ソフトウェアを提供する企業。医療データの分析に活用されている。

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アリス
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